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紙の本
スロウハイツの神様 上 (講談社ノベルス)
著者 辻村 深月 (著)
ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事...
スロウハイツの神様 上 (講談社ノベルス)
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商品説明
ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった。事件から十年—。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める…。【「BOOK」データベースの商品解説】
猟奇的なファンによる小説を模倣した大量殺人事件から10年。筆を折っていたチヨダ・コーキは見事復活し、売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせた。しかし謎の少女の出現により…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
辻村 深月
- 略歴
- 〈辻村深月〉1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞しデビュー。
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紙の本
彼らにご加護を!
2009/12/09 13:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村作品は『痛い』ものが多い。それはキャラの過去だったり、現実だったり、人の死だったり事件だったり・・・根本にあるのは人間が『人の間』で生きている限り、避けられない人間関係と、その中で起こる事件。そこから展開するドラマだ。
人間として人と人とが関係していく中で、心が崩れ、何かが崩壊し、切りつけられる痛みの中で大切なものを失くしてしまう。
その時、もう一度再生するために、それでも生きていくために、自分のために、自分の大切な人のために、自分の大好きな人が幸せであって欲しいために、笑っていて欲しいために、
友人として、同士として、恋人として、どれもこれも中途半端なスロウハイツの卵たちと「神様」が傷ついたりボロボロになりながらも一生懸命生きている。決して流されず、寄りかからず、一見強がっていてもすごく弱い、それでも涙を見せずに一人で立つ、歩いていく環・・・彼女は切ないほどに意地らしい。たまらなく、いじらしいのだ。
人気作家(コウちゃん)の小説に影響を受けて起こったネット集団自殺。彼の作品とブランドは見事復活を果たしたが、その影には一人の女の子からの励ましの手紙があり、その「コウちゃんの天使」は現れることはなかった。
彼女が何者か、というのは薄々わかることだけど、彼女自身の人生描写と、たまらないほどの不幸とそれでも生きる懸命さ、読んでいるコッチが苦しくなる。
そして、偶然コウが『天使』に再会した時、「お久しぶり」といった真の意味、一見鈍そうな彼がこんなにも「天使」に恋していたのかと思うと そちらもやはり切なくていじらしくて、抱きしめたくなる。
結局、全てを救うのは愛だよね。
そんな安っぽい言葉が恥じらいもなく優しく彼らを包み込む。
ひたすら彼に追いつこうと、何の見返りも無くてもただひた走る環は痛々しくもカッコイイ。
ただそれを黙って、自分を隠して見守り続けたコウも、座布団一枚!
スロウハイツの神様、彼らにご加護を!
願わくばかつて彼女が手にしたような、優しい時とクリスマスケーキを我らにも!
紙の本
辻村作品にはまったきっかけの本です
2012/02/15 20:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村さんはデビュー作品からリアルタイムに読んできていた作家さんだったのですが、何と言うか、ミステリーのトリックが掟やぶりのような気がして、当初はあまりなじめなかったのですが、「スロウハイツの神様」を読んで、一気に辻村ワールドにはまってしまいました。
上巻は、今まで読んでいたような辻村作品の印象で、現代のトキワ荘という設定は、本好きの私にはうらやましすぎて、一部の特権階級のお話だな、と思ってどこか冷めた気持で読んでいたのです。
下巻、いやあ、今までのエピソードの伏線を回収するかのような筆運びに、ノックアウトされました。
以来、何度も読み返す、お気に入りの作品となりました。
そしてまあ、コウちゃんのキャラクターが私のどツボでした。ヘタレで小説を書く意外は生活能力ないっぽくて、でも優しくて一途。環じゃなくても好きになりますよ。
環の強烈な強さと、繊細さにも惹かれました。姉妹のエピソードがせつなくて暖かいです。マスカラのシーンも環らしくて、思わず、本書のカバーの見返しの辻村さんの(著者近影)写真を何度も見てしまい、(環ってこんな顔で、こんな化粧なのかな・・・実際はもっと濃いメイクかもしれないけど)とか勝手にイメージをダブらせてしまいました。(こんなこと思うの私だけかな・・・すみません)
ただひとつだけ、違和感があったところ。
私は、アニメ、マンガ、ラノベ、小説、どっぷりはまるぐらいの好きな作品がそれぞれたくさんありますが、環の脚本とコウちゃんの小説のタイトルには何だかなじめず、もちろん中身には触れられるはずもないのであくまでタイトルや設定の印象だけなんですが、そしておそらく、脚本的なものとラノベ的なものの象徴としてのタイトルだとは思うのですが、もうちょっと、この話、すごく読みたい!と思わせるタイトルであってほしかったかな。
変なとこ気にしてしまってすみません。
辻村作品に通じる、他作品のキャラクター達がちょこっと顔を出すおなじみのシーンもあるので、ファンにとっては毎回そこも楽しみですね。今回のゲスト(?)の人物も、大好きなキャラクターなので嬉しいおまけでした。
紙の本
個性を認めると言うこと
2007/02/11 08:58
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:楊耽 - この投稿者のレビュー一覧を見る
売り出し中で人気急上昇中の脚本家赤羽環と彼女のアパート「スロウ・ハイツ」に住む人気作家チヨダ・コーキの他、漫画家、イラストレーターの卵たち7人の物語です。
サラリーマンである僕にとっては「創作を職業とする人」は、別世界の、想像を越えた宇宙人のようなイメージがありました。でも、この物語でクリエーター達は、少々癖があり、強烈な個性を放ちながらも、食事をして、おしゃべりをして、笑ったり、泣いたりする、当たり前の人間として、身近に感じられます。
僕が気に入ったのは赤羽環の個性です。彼女は、友人に対する不必要にも思えるほどの厳しさから生じる軋轢を、自分にも向けた厳しさと、その結果成功している自分の才能の発現で補おうとしています。僕だったら「口うるさいヤツだなぁ。」「放っておいてくれよ。」と逃げ腰で接してしまいそうな彼女なのですが、このアパートの住人は、彼女のその態度を「個性」として認め、また彼女に認められるような存在になろうと、創作活動のモチベーションにしているように感じられました。
彼らの欠点や、弱点を指摘することは簡単だと思います。だけれどそれを補ってあまりある才能を認めるのは、難しいのかも。「人の個性を認める」と言うのはこういう事か。と思って、上巻を読み終えました。