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紙の本
NHK問題 (ちくま新書)
著者 武田 徹 (著)
「みなさまのNHK」の信用は地に堕ちた。この巨大メディアに巣くう「問題」の本質とはなにか。戦前から現代のウェブ社会にいたるメディア史を複眼的にとらえなおすことで、公共放送...
NHK問題 (ちくま新書)
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商品説明
「みなさまのNHK」の信用は地に堕ちた。この巨大メディアに巣くう「問題」の本質とはなにか。戦前から現代のウェブ社会にいたるメディア史を複眼的にとらえなおすことで、公共放送の新たな可能性をつむぎ出す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
武田 徹
- 略歴
- 〈武田徹〉1958年生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科博士課程修了。ジャーナリスト・評論家。BRC委員。「流行人類学クロニクル」でサントリー学芸賞受賞。その他の著書に「戦争報道」等。
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紙の本
アイロニカルに語る果てに公共性があるのではないか?
2006/12/17 21:20
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
公共放送のNHKだから、うっかり商品名を言っちゃあいけないんだよ、だから即、公共性を体現しているというわけではない、資本主義自由経済体制の競争原理に忠実だからと言って民放が公共性を実現出来ないというわけでもない。何が公共性かと言うことはもの凄く悩ましい問題で常に検証が要請される。
共同体と公共性とはズレがあるのです。国家=官=共同体ではあるけれど、重なる部分が多くとも、即公共性ではないのは当然です。下り(ダウンロード)、上り(アップロード)の双方性の時代がもう目の前で地上波のデジタル化がくまなく行き渡れば民主主義政体は御安泰とはいかない。放送は文字通り、送りっ放しですが、放送と通信の融合はインタラクティブ(双方性)の技術進化で、ばっしりとした環境が整ったわけでしょう。だからと言って僕たちは民主義政体になくてはならないツールを手に入れて未来は明るいと手放しの見立ては出来ない。
NHK問題を通して、果たして共同体=公共性であるのか、そのズレについてアイロニカルに本書は語る。武田徹が首尾一貫して啓蒙活動している「メディア・リテラシー」の文脈に位置するのです。恐らく、僕たち一人一人が他者と関わって生きて、暮らしてゆく上で「公共性」は最後の拠り所でしょう。だからメディア論は「生きる」の問いにつながる。
イギリスのBBCがフォークランド紛争で「我が軍」と呼ばずに「英国軍」と呼び続け、サッチャーに批判攻撃されても方針を変更しなかった有名なエピソードは共同体=公共性かという根源的な問いを投げかけてくれる。
武田はローティの『偶然性・アイロニー・連帯』における「ずれてゆくリベラル・アイロニスト」は自分自身のローモデルだと明言する。《ジャーナリズムは苛まれた人たちを発見し、その声を報じようとする。しかし、そこには状況認識の間違いがあるかもしれない。その報道に応じて政策が決定されれば、n人の犠牲の下にm人を助ける結果になるかもしれない。そこでn人の犠牲を出さずに済む方法はないか検討するためにあらためて報道を続ける。それが反照的均衡を探る報道だ。そしてそれは最初のものの見方をずらしてゆくリベラル・アイロニーのあり方でもある。》
本書ではそのようなアイロニストとして冗談音楽、CMソングで一世を風靡した三木鶏郎が登場しますが、若い人たちには馴染みが薄いでしょうね、そう、爆笑漫画の太田光の元祖と言ってもいい。CIEの検閲で問題にされたコントを紹介しよう。この番組の担当者は丸山真男の兄である鐵雄です。
《A「標語を書くのに紙がないんでね、古いポスターの裏を使ったのはわかるがね、ちょっと驚いたよ」/B「ホホウ」/A「民主主義! と書いてある裏にだね」/B「何て書いてあった?」/A「八紘一宇って書いてあったよ」》
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