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商品説明
暴力団員の黒羽組の藤堂惣一郎は少年を車で轢いてしまう。明らかに死に至る事故。しかし少年は無傷で、記憶を失っていた。そのまま男の家で暮らすようになったその妖しいほどに美しい少年に、男は「穂」という名を与える。やがて少年の背に彫られた両目がない美しい無明龍の入れ墨に導かれるように、藤堂は彼の出自を辿り始めるが。不思議な力を持ち、世界に贖われた存在—少年と男の再生の物語。『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁、珠玉のデビュー作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【スニーカー大賞金賞(第1回)】暴力団員の藤堂は、少年を車で轢いてしまう。少年は無傷だったが、記憶を失っていた。そのまま藤堂の家で暮らすようになったその少年の背に彫られた入れ墨に導かれるように、藤堂は彼の出自を辿り始めるが…。〔1996年刊の新装版〕【「TRC MARC」の商品解説】
男は父の遺した絵を探していた。必ず惨劇を呼ぶ魔性の「土の絵」。その旅の途中に男は、不思議な力を持つ女・戊と出合う。謀らずとも探し求める絵と同じ名を持つ美しい女と男は、彼女の弟を捜す旅を共に始めるが――【商品解説】
著者紹介
冲方 丁
- 略歴
- 〈冲方丁〉1977年生まれ。早稲田大学中退。96年「黒い季節」でスニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。「マルドゥック・スクランブル」で日本SF大賞を受賞、ベストSF2003国内篇第1位に輝く。
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紙の本
これを18歳で書くか?って思って、高一次女に読ませたら、感心して居りました。因みに、大学受験中の長女にも読ませようと思ったんですが、とてもそんな雰囲気じゃなくて・・・
2007/02/24 22:35
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
このカバーはいいですね。まず白黒の画面がいい。ま、長谷川等伯の国宝を連想するのは安直でしょうが、この細密に描かれた樹木、いやどちらかといえば羽毛を思わせる木が、清楚でいながらおどろおどろしくて・・・。しかもです、配された英文、背では黒いそれが、カバー表では白抜きになる、その様子とフォントサイズ、もうセンスが抜群です。装幀は岩郷重力+WONDER WORKZ。
で、私は知らなかったので書いておけば、この本は96年、彼が18歳の時書いた作品でスニーカー大賞金賞を受賞し、デビューとして出版されたものです。言わせて貰えば、これを18歳で書くか?というレベルのものです。その経緯、彼が早稲田を中退した事情等はあとがきに出ています。
ついでに書いておけば、1994年には夢枕獏の傑作シリーズのうち13巻にあたる『キマイラ梵天変』が出ています。時代からいっても冲方が読んでいないはずがない。1951年生まれの獏は当時40代、作家として脂の乗り切った頃です。その影響を見せはするものの、先輩に対し二まわり以上年下の若者は見事な文章で読者を掌中に引き込みます。
著者の意気込みは目次の各章のタイトルを見れば嫌でも伝わって来ます。
序章
震章 魎(こだま)
破章 魍(みたま)
萃章 魅(へんげ)
急章 魑(すだま)
離章 鬼(おにがみ)
結章
あとがき
どうです、獏なくしてありえないものではありますが、それを超えようとする熱気を感じませんか。カバー折り返しの言葉は
「何を急ぐ? どこへ行く? 何を求めて?」
です。若者らしくないというか・・・
現代を舞台にした暴力団の内部抗争ものですが、それに伝奇的要素を盛り込んだ作品で、暴力の世界をどこまで美しく書くか、というあたりにも獏との共通点を感じる、といったら冲方は怒るでしょうか。
登場人物を紹介しましょう。基本的に年齢が書かれることはありませんので、そこはイメージで書いておきます。
主人公は暴力団・黒羽組のカラスこと藤堂惣一郎です。40代でしょうか。母親が日本人、顔も知らない父親が在日米軍の黒人で、そのために肌の色が黒く、それがあだ名の由来になっています。で、彼が乗る車に轢かれた年齢不詳で、10代らしい少年が、「穂」(すい)こと甲(かぶと)です。
で、その少年ことを捜す不思議な力を持つ20代であろう女・戊(ほこ)がいて、彼女といっしょに行動することになる同世代であろう志斐誠がいます。彼女、というのが正しくはないのですが、戊は甲の姉です。で、藤堂をオーナーと呼ぶ、なかなか渋い初老のバーテン・鹿島がいて、そのバーに顔をよく顔を見せるのが黒塚組総代の桜三の娘で多分20代のさやです。以上が、正義側です(ま、暴力団ではありますが)。
それに対するのが、序章で、〈ち〉の童子である甲を襲う20代〜30代の女・蛭雪で、彼女とともに黒塚組を支配しようとするのが、敵役である黒文字組の30代であろう若頭・沖義一です。そして不思議な「土の絵」という名の絵画の作者で、一部に鬼才とうたわれつつも、ある年の秋にこの世を去った画家志斐松吾がいます。あとは読んでもらい、これが18歳の年齢で書かれたことに驚嘆してもらうだけです。
最後に、あとがきから印象的なことを書いておきます。既に書評を書いている『ばいばい、アース』のこと。2000年に出たこの弁当箱二冊本ですが、私の評価は★五つ。今でもそれを変える気はありませんが、この作品、出版もとの評価は低くて、それがもとで冲方は角川書店と不仲になり、出入禁止の憂き目にあったとかあわないとか。実際どうだったのかはともかく、これほどの作品はメッタに読めるものじゃあありません。ただし、濃密。あえていえばトールキン『指輪物語』に匹敵するといいたい。そんな傑作は、今でも書店では手に入らない。復刊しませんか、出版社さん・・・