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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.11
- 出版社: 青土社
- サイズ:20cm/187p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7917-6304-1
紙の本
アメリカ 非道の大陸
著者 多和田 葉子 (著)
未知の記憶を背負った人々の移り住む土地アメリカであなたを見舞う、数奇な出来事。旅する作家が切りひらく物語の新世界。【「BOOK」データベースの商品解説】未知の記憶を背負っ...
アメリカ 非道の大陸
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商品説明
未知の記憶を背負った人々の移り住む土地アメリカであなたを見舞う、数奇な出来事。旅する作家が切りひらく物語の新世界。【「BOOK」データベースの商品解説】
未知の記憶を背負った人々の移り住む土地アメリカであなたを見舞う、数奇な出来事。旅する作家が切りひらく物語の新世界。恐怖と愉楽のトラベル・ノベル。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
多和田 葉子
- 略歴
- 〈多和田葉子〉1960年東京生まれ。ベルリン在住。「犬婿入り」で芥川賞、「ヒナギクのお茶の場合」で泉鏡花賞、「容疑者の夜行列車」で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞。ドイツ語の著作も多数。
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紙の本
乾いたアメリカ、実は悲しい国
2020/07/02 22:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作家のクールに突き放した感じが好きだ。カラカラに乾燥した砂漠のような雰囲気をまとった旅の物語。
主人公は「あなた」という二人称で呼ばれ続け、話が進むものだから、いつの間にか、わたしまで「あなた」と呼ばれているかのような錯覚にも陥る。そうして読者も「あなた」になって旅に同行するうちふと気づく。
アメリカは、ネイティブアメリカンと、ヨーロッパからの移住者と、奴隷として強制的につれてきたアフリカのひとたち、そして多くの国から移民を迎える過程で、人種の違いを坩堝でドロドロととかし、無謀にも、「純なアメリカ人」を創造しようとした。実は悲しい国なのかも...と。
紙の本
嫌いなものを嫌いでなくすこと
2007/08/07 16:08
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある女性がアメリカに入国し
そこで出会う人々や物事を異邦人の目で追っていきます。
女性が同一人物であるかどうかも
どの国の人であるかもわかりません。
著者の分身のような、そうではないような。
小説は二人称で綴られるため
テクストと読者の間に距離感が生まれます。
文体は時として三人称にほぼ近い形をとりながら
小説内に漂っています。
女性にはアメリカに知り合いも友達もいるのですが
どこかよそよそしく、この国を好きになれないでいます。
しかし多和田葉子の独特のペーソスが効いていて
淡々と進む物語の細部に引き込まれます。
例えば、水族館の鯨のショーでは
珍しく好奇心が薄く、人に喜ばれることに全く関心を示さず
無駄なジャンプもしない。
しかしそういうショーを見せることで
水族館側は水中の生きものにショーを
強要していないことを示しています。
シャチがショーを見せるのは
シャチ自らがお客さんの喝采を浴びることを望んでいるから。
そのやる気のない鯨の描写がまたおかしい。
細やかなエピソードに驚き、楽しめます。
紙の本
多和田葉子流の米国大陸横断小説
2007/03/22 06:52
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの街を経巡る「あなた」が出遭った人々の姿を描いた物語群です。ネイティブアメリカンの営むカジノ、移住当初の生活様式を守るアーミッシュ、砂漠の中西部に生まれた幼い子供…。万華鏡社会アメリカの息遣いを不可思議な二人称で切り取っていきます。
多和田葉子が二人称で綴る作品はこれが初めてではないということですが、物語の中心点にいるはずの「あなた」が、「あなた」と呼称されつづけることで、読者である私はその中心に何度入り込もうとしても弾かれてしまう思いを抱き続けました。まるで磁石の同極同士が反発しあうような感覚です。私の視点が「あなた」の外側に位置づけられることを強いられるため、頁を繰り続ける間、常にこの「あなた」の斜め上空あたりから物語を眺め続けることになるのです。
最終章である「無灯運転」を例外として、この物語に出てくる人々の暮らしぶりは多種多様ではあっても決して浮世離れしたようなところはありません。多和田葉子自身がアメリカで実際に出遭った人々のことを、二人称形式で綴ってみることで半分ノンフィクション、半分フィクションといった彩りの小説に仕上げたといった印象を与えます。事実こうした経緯によって仕立てられた小説かどうかは分かりませんが。
主人公の「あなた」が、アメリカにおいては主張の欠如ととられかねないほどの、日本人独特の遠慮や自重を常に見せるあたりは、奇妙に現実味があります。読んでいて決まりの悪さを感じ、思わず苦笑することしきりでした。
多和田葉子独特の物語展開自体もいつもどおり健在で、つかみどころのない、どこへともあてなくさまよい続け、果てることのない旅につきあうことになります。現実と非現実との狭間で心が揺れる思いを味わう、そんな小説でした。