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- カテゴリ:中学生 高校生 一般
- 発行年月:2006.11
- 出版社: ジャイブ
- サイズ:15cm/217p
- 利用対象:中学生 高校生 一般
- ISBN:4-86176-355-X
紙の本
氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)
著者 木地 雅映子 (著)
斉木杉子、十一歳。自分の言葉を持つがゆえに学校に居場所のない少女は、「学校なんてなけりゃいい」と思った。そして、自宅の庭に生えるナツメの古木に呼びかける。時々、心にねじを...
氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)
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商品説明
斉木杉子、十一歳。自分の言葉を持つがゆえに学校に居場所のない少女は、「学校なんてなけりゃいい」と思った。そして、自宅の庭に生えるナツメの古木に呼びかける。時々、心にねじをまくように。ハロウ—(「氷の海のガレオン」)。ヤングアダルト小説ファンの間で「何度も読み返したくなる一作」として語り継がれてきた名作に、書き下ろしを加えて文庫化。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
こどもたちの戦場
2007/12/14 14:51
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紺野優 - この投稿者のレビュー一覧を見る
早熟さゆえに自分のことを「変わっている」と認識し、その認識のもとに行動する斉木杉子。彼女は周囲から孤立し、迫害を受ける。そして彼女の兄弟たちもまた学校では浮いた存在なのだった。一人称を用いて女子生徒の心理を冷徹なまでにえぐり込む表題作。
この作品で印象深いのは杉子がいじめられる弱者=絶対の正義としてえがかれてはいない点だと思う。彼女は同じようにクラスのグループに入りこめず、同類をもとめて近づいてくる「まりかちゃん」を突き放し、あざけり、拒絶する。そこにあるのは「わたしはあなたとは違うのよ」という強固な差別意識だ。
スズキがクラスメートの鼻の骨を蹴り折ったことで一日にしてヒーローになったように、見下すもの/見下されるもの、弱者/強者、加害者/被害者の関係は、教室のなかにあってめまぐるしく変転し、多様化していく。それはこの小説のなかにとどまらないことなのかもしれない。
読書と空想によって獲得した、いかに巨大な「もうひとつの世界」をもつ者でも、現実の生活の重力からはのがれられない。いやむしろ、「もうひとつの世界」が大きくなればなるほど現実との齟齬もまた無限にひろがってゆく。そこでおそらく彼/彼女はふたたび非現実の場に安息をもとめ、かくして悪循環は止まらない。
「氷の海のガレオン」といういかにもヤングアダルトファンタジーめいたタイトルは、直接には内容にむすびつかない。それは杉子がみる夢についての名でもあるし、また同時に「氷の海」は辛苦にみちた学校生活、「ガレオン」は日々を生き抜こうとする杉子を象徴しているのだと読むこともできる。かつて岡崎京子は「リバーズ・エッジ」のなかでウィリアム・ギブスンの「平坦な戦場」という詩句をひいた。その文脈とまったく同じ意味で、杉子、そして彼女に似た子供たちは戦場を生きている。