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失われた時を求めて 完訳版 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
シャルリュス男爵と仕立屋ジュピヤンの出会いをきっかけに、同性愛(ソドムの世界)の主題がくっきりと姿をあらわす(第四篇1)。ゲルマント大公夫妻のサロンでの、ソドムの男たちの...
失われた時を求めて 完訳版 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ)
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商品説明
シャルリュス男爵と仕立屋ジュピヤンの出会いをきっかけに、同性愛(ソドムの世界)の主題がくっきりと姿をあらわす(第四篇1)。ゲルマント大公夫妻のサロンでの、ソドムの男たちの描写とドレーフュス事件の影。章末の一節「心の間歇」では、祖母を巡る過去が突然に蘇る(第四篇2第一章)。アンベルチーヌとの交際の深まり、そして彼女と女友だちの関係への疑惑。ここから、ゴモラすなわちレズビアンの世界が、徐々に始まってゆく(第四篇2第二章)。【「BOOK」データベースの商品解説】
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同性愛の主題
2011/01/24 21:05
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
第七巻は第四篇「ソドムとゴモラ」その一。巻数としては丁度折り返し地点となる本作で、ようやくというかついに、此篇の題が暗示する同性愛の主題が全面的に展開されることになる。冒頭でシャルリュス男爵と元仕立て職人のジュピヤンとの同性愛者同士がお互いを一目で同類だと見てとる鮮やかな邂逅の場面をはじめ、あの傲岸で他人を汚らわしい女になったようだと他人を非難するシャルリュス男爵に「女」を見いだすところなど、興味深い場面が続く。ここで、読者はこれまでの不可解な場面などに同性愛の光を当てることで納得のいく説明を見いだすことができる(もちろん私などは忘れていて註釈等で教えられるわけだ)。
前巻ではドレフュス事件が本作での人間関係を眺め直す新たな視点を提供していたけれど、本作では同性愛が登場人物たちをまたさらに異なった関係の元に置き直す。語り手にそのことを促すのは冒頭に語られるシャルリュス男爵とジュピヤンの出会いを目撃したことだけれど、もうひとつ大きな事件は、アルベルチーヌに同性愛の疑いがかかるところだ。疑いどころか、語り手はアルベルチーヌとその友人が胸を触れさせながら踊っているのを目撃してしまう。さらにはブロックの妹とその友人の女優がスキャンダルを起こすなど、さまざまな同性愛の事件が起こっている。
ドレフュス事件とユダヤ人に続いて人間関係が大きく違って見えてくる同性愛の要素が現れたことで、いよいよ佳境に入った感があり、これらがどう展開していくのかと気になり出す巻となっている。
そして重要なのは、序盤からの本作の重要なテーマとなっている無意志的な記憶の主題が、祖母の死を介してふたたび現れるところだ。前巻での祖母の死についてはやけにあっさりとした叙述で終わった感があったのだけれど、本書の中盤、二度目のバルベック滞在で語り手ははじめて本当にその死を受け止めることになる。
「シャンゼリゼで彼女が発作を起こして以来、はじめて私は無意志的で完全な記憶のなかに、彼女の生き生きとした現実を見出したのだ。こうした現実は、私たちの思考によって再創造されないかぎり、私たちにとって存在しない(さもなければ、壮大な戦闘にまきこまれた人間は、みな偉大な叙事詩人になってしまうだろうから)。こうして、祖母の両腕のなかに飛びこんでいきたいという狂ったような欲望にかられながら、私は今しがた――事実のカレンダーと感情のカレンダーの一致をしばしば妨害するあのアナクロニズムのために、祖母の埋葬から一年以上もたって――はじめて祖母が死んだのを知ったところだった」339P
この真の哀しみに襲われる場面は、第一篇のマドレーヌの挿話と対比的であるばかりでなく、一度目のバルベック滞在での語り手のマザコンぶりを辿り返しながら語られ、語り手にとっての祖母の存在の大きさが実感される場面であるだけに、きわめて印象的な挿話となっている。
全巻まとめ