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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2006.6
  • 出版社: 角川書店
  • サイズ:20cm/273p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-04-873700-7

紙の本

少女七竈と七人の可愛そうな大人

著者 桜庭 一樹 (著)

わたし、川村七竃十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。—男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをや...

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少女七竈と七人の可愛そうな大人

税込 1,540 14pt

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商品説明

わたし、川村七竃十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。—男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをやさしさが包み込む。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の気鋭、桜庭一樹が描き出す、最高の恋愛小説。【「BOOK」データベースの商品解説】

私、七竈17歳は遺憾ながら、美しく生まれてしまった。大人の男たちからじろじろと眺めまわされるたびに私は怒りを感じる。母に、世界に…。気鋭の作家が描き出す最高の恋愛小説。『野性時代』連載に加筆訂正のうえ書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧

辻斬りのように 4-23
遺憾ながら 25-53
犬です 55-74

著者紹介

桜庭 一樹

略歴
〈桜庭一樹〉富士見ミステリー文庫「GOSICK」シリーズが多くの読者を獲得。他に「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「少女には向かない職業」など。

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みんなのレビュー350件

みんなの評価4.0

評価内訳

紙の本

大人になった瞬間を覚えていますか?

2007/04/18 21:56

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:じゃい - この投稿者のレビュー一覧を見る

いたい。痛くて続きが読みたくない。でも、もしかしたらラストではこの痛みが解消されるのでは。そう思いながら読んでいた。
七竈は母親がいんらんなためとても美しく生まれてしまった。
七竈の母親である優奈はある日突然、辻斬りのように男遊びをしてみたいと思った。
それまでの穏やかなふわふわとした白っぽい丸の存在であった自分を変える手段として、男遊びを真剣に選んだ。
そして辻斬りのように七人の男と遊び、妊娠した。
七竈の生まれた田舎では、過ぎる美しさは呪いでしかない。
同じく美しすぎ異質である少年、雪風。七竈と雪風は鉄道模型が好きだ。異性などどうでもいいんだ。鉄道模型のほうがよい。
美しく生まれてしまった七竈という少女はかわいそうな大人たちと関わり、大人になっていく。
大人になるには痛みを乗り越えなければいけない。なんだその夢見がちな大人発言は・・と普段なら思うことを考えてしまった。
七竈はいろいろな痛みに出会う。
私はいつも季節の変わり目があまり実感せず、ふとあ、暖かい。春なのだ。と突然、季節が変わる気がする。
私のなかでは、大人と子供の変わり目も同じような気がする。あ、自分は子供ではないのだと思った時が境ではないだろうかと。
七竈にとっては、気づかない振りをずっとしていたのに、気づいていることを認めてしまった瞬間かもしれない。
本の帯に書いてあった『圧倒的に悲しい』という言葉がとても納得がいく。
この本を読んで、大人になるってなんだろうと考えた。痛みに鈍化していくのだろうか?
十七歳の七竈のような繊細さはなくなってしまったのだろうか。
ただ、七竈と関わっている大人たちはみな痛みを抱えている。そして自分も。
まだ答えは分らないけど、痛みに鈍化するのでなく、痛みを内包していくような気がする。
ふと以前に、テレビかなにかでみた老人介護の人の言葉を思い出した。
『老人は赤ん坊と同じ。人は最後は赤ん坊に戻っていくのだ。』
別に死後の世界等を信じているわけではないが輪廻転生、全ては巡っているのかもと思う。
痛みを感じた七竈には自由が待っているのかもしれない。

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紙の本

美しき日々に さようなら

2008/12/01 09:53

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

なんて美しいタイトルの響き!可憐な表紙絵! 興味をそそる帯(笑)
静謐なタッチの美しい少年と少女が 真っ白な雪の中に向き合い座っている。そして二人をつなげる七竃の赤と紅のマフラー。
この表紙絵がそのまま内容を表しているような素敵な装丁で、中身も期待を裏切らなかった。
口語でなくてお姉言葉的な文語調。絶世の美少女と絶世の美少年が 田舎の閉じた町にまるで異質なもののように存在している。ただそれだけでもう、物語は始まってしまう。

時代は昭和初期だろうか? なんともレトロなアンニュイな雰囲気が充満していたはずなのに、子供(七竃)の時代になると、急に現代じみてくる。 
しかも彼女七竃だけは それでもずっと昭和臭さをのこしているからその美しさと異質さがいやおう無しに際立つのかもしれない。

そもそも七竃の母が突然憑かれたように男を襲い・・・もとい、関係を持ち始める。片っ端から、7人の男と。しかも決して満たされない関係を。「淫乱」と銘打たれる彼女はそれでも自分の中の何かを満たそうと、男に狂う。
彼女の隣の席で同じ教員を務めていた 平凡そのものの男を横目に
彼女は辻斬りをする。何を切るかって、男を、だ。

彼女に似つかず絶世の美少女に生まれたのが七竃で、この辺鄙な田舎ににもう一人同じく生まれついた鉄(鉄動マニ)仲間が絶世の美青年・雪風だ。
あまりに美しく、近寄りがたく、似すぎたその容貌は、田舎という閉じた小さな世界では共に生きられぬ残酷な運命しか待っていない。
成長は二人に呪われた出生を突きつける。

「おとなの男たちからじろじろと眺めまわされるたびにわたしは怒りをかんじる。母に。世界に。男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの嵐。」

ただ自分の容姿について怒りすら覚えるほど男嫌いな七竃の孤高な告白かと思われたこの文も、読み終えた今、わかる。
七竃はどこかで感じていたのだ。自分に流れる血が、淫乱な母の血であり
自分はこのちっぽけな田舎世界で、ひっそりとは生きていけないのだと。
これは、因果応報、母の淫乱の、報いなのだと、思っているのかもしれない。ただ雪風さえいればそれだけでと願うのにその容貌(かんばせ)はそれすらも許さない。

最後の言葉は「さようなら 雪風」なんて切ないなんて痛い! 
するりと突然終えるこの物語は少女時代のそれと似ている。
いつだって、切なく哀しくに非情に、少女時代は女を置いて過ぎ去ってしまうのだ。

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紙の本

あの日との決別

2007/12/11 20:19

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はぴえだ - この投稿者のレビュー一覧を見る

せつない、むくわれない恋物語だ。

自然に息をするように、水を飲むように。
知らず知らずの内に、すきになっていた。
けれど、それは許されぬ恋。
閉塞感の中に、ほろ苦く、甘い時間。
目醒めた時、一人は狂ったように誰かを求め、もう一人は……。

せつないのに、くるしいのに、淡々とせかいは描かれている。
青春の終焉が見事に表現されている。
時には色鮮やかで、時にはユーモラスで、時には詩的で、幻想的で。
絶妙なバランスの上に成り立つうつくしさがそこにはある。

この作品は決して幸せな物語ではない。不幸な話といってしまっても過言ではない。
それでも、私たちに伝えてくれる。さよならを告げる勇気を、強さを。
未来は私たちの手の中にある、と。

簡単に壊れてしまいそうな中に、力強さを感じさせる不思議な作品なのである。

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紙の本

昭和の母、平成の娘

2007/05/05 15:35

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る

 CLAMPの作品中の台詞回しを思わせる、しかし、端整な文体でつづられた物語。
 母の若き日の必死の試みの結果が、娘にとっての試練となり、そして同時に未来への力にもなっていく。
 母と娘との葛藤という普遍的なテーマは、筆力によっては限りなく、つまらなく、あるあるネタにさえもならない。
 筆者は雪、花、犬、鉄道、カメラなどの落ち着いたオブジェを配した風景画のなかに小さな、しかし、しっかりと人物を描き込むように、七竈という少女と人々を配置して、このテーマを表現した。
 重要で普遍的なテーマは同時に平凡な形をとる。
 その平凡さの中の輝きと闇を汲み出すこと。
 若々しい、切ない、そしてプロフェッショナルの作品だ。

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紙の本

ようやく落ち着いた気分になれた

2006/10/09 22:34

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「七竃がそんな顔に生まれてしまったのは君の母がいんらんだからだ。」美しき少年雪風は、同じく美しき少女七竃にそうつぶやく。これは切ないほどの祈りを込めた言葉。
 雪が降ればすべてが真っ白に染まってしまう小さな町。その町の中にある小さな家の薄暗い居間にある世界。自分たちを乗せて走る鉄道模型。年を経るごとにだんだん拡張されていく線路だけれど、それは閉じていてどこにも飛び出せない。ただぐるぐると回るだけ。しかし、時は無常にも流れ、春が来れば覆い隠されていたものは再び姿を現す。そしてそれは小さな世界を絶望的なまでに破壊しつくしてしまう。
 うつくしきかんばせを覆い尽くす黒く長い髪は、自分を襲う呪いへの抵抗。それを切り落とし、鏡にうつし出された血の呪いから、少女は解き放たれる日はくるのだろうか。新しい土地で小さな白い花が咲く日が。

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紙の本

しょっちゅう旅をしながら心残りを故郷に残す母 鉄道模型で遊びながら外へ出ていかざるを得ない娘

2011/12/15 23:37

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「辻斬りをするように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。そして五月雨に打たれるように濡れそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。 (P4) 」
 辻斬り、とはこれはまた意外な比喩だ。普通女性が描くセックスといえば、男性に抱かれて暖かく優しい気持ちになるもので、“辻斬り”という言葉が持つイメージとは程遠い。しかし、この言葉をつぶやいた女性・優奈は、まさに辻斬りのように、七人の男達と関係を持つ。そしてあげくに妊娠して子供を産むと、語り手たる位置をあっさり美しく生まれた娘に譲り渡して自分は旅に出てしまう。「いったいどんな家庭に生まれ、何をしている女性なのか?」といぶかりそうだが、優奈は母親に厳しくしつけられて育ち、学校の教師として25歳まで働いてきた女性だ。
 さて、その母はしょっちゅう旅に出ていて娘を省みないが、実は彼女の心はいつもひとところに留まっている。そもそも、そのひとところを忘れようと「辻斬りに。辻斬りになるのだ。男などどれも同じだと思いこむまで、けして立ち止まるな。からっぽだ。からっぽになるのだ。立ち止まるな。けして。特定の誰かのことなど、けして考えるな。 (P223) 」こう自分に言い聞かせている。
 それとは対照的に、彼女の娘・七竈は、その身は旭川に留まっているが、様々な国を旅する鉄道模型に夢中だ。だが、彼女は、昔から愛してやまない雪風と、いつまでも共にはいられない事情がある。物語を追うごとに二人の複雑な関係が明らかになってゆき、愛しあいながらも離れなければ生きられない男女の悲劇性が一層際立ってくる。 
「雪風と出逢わせ、引き離し、わたしをこの町に引きとめていたあのいんらんの母を。もしも、もしもゆるせたらですね、ビショップ。そしたらわたしは、自分をすこしだけ、上等な人間のように思えるでしょう。 (P213) 」全ての原因である母への複雑な感情に悩んでいた七竈に、ある女性が告げる言葉「女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間は、ゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。(P267) 」は、よしながふみの『愛すべき娘たち』の最終話に出てくる「母というものは要するに一人の不完全な女の事なんだ」という台詞と似通っていると感じた。
ミステリーとして、また、七竈と雪風の成長物語として、或いは、七竈とアウトサイダーである母親との相克の歴史を綴った物語という幾通りもの貌を持った興味深い作品であった。

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紙の本

母と娘

2006/07/28 23:42

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

 旭川に暮らす美少女、川村七竈。
彼女の母親が25歳のとき、自分を変えるためには男遊びをしなくては、と突然思い立ち、短期間に七人の男と関係を持った結果出来てしまったのが七竈だ。
年中家を空けている母親を「淫乱」と呼ぶ17歳の七竈は、祖父と元警察犬のビショップと一緒に暮らしている。
楽しみといえば幼馴染の雪風と鉄道模型で遊ぶことだ。
そう、七竈と雪風は「鉄」(鉄道マニアのこと)なのだ。
 美少女と美少年の間に横たわる出生の秘密や、母娘の確執といった、ありがちと言えばありがちなテーマをこのように捌いてみせるのは、見事の一言だ。
「男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風」
「男など。男など。列車たちの足元にもおよばぬ。滅びてしまうがよのだ」
といった独特の文体、章ごとに変わる視点人物、ささやかな叙述トリックなどが読者を退屈させない。
 七竈の母、優奈の語りに始まり、七竈の語りに終わる本書の一番のテーマは「母と娘」だ。
本書はけっして、リアリティを追求している小説ではない。
だが、母を許せたら自分を少しだけ上等な人間に思えるだろう、と言う七竈のセリフには説得力がある。

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紙の本

七竃とその周辺の大人たち

2007/11/14 16:48

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 母親が突然男性に対し開けっ広げになり
七回違う男性と寝たことで、生まれた少女七竃(ななかまど)。
そして彼女は超美形です。
 七竃本人と、七竃周辺の人々のお話しです。

 「少女には向かない職業」で桜庭さんは青春期もしくは思春期の少女たちの
正に、"痛い"ほど苛烈な思いを描いていました。
 それが、今度は、勿論七竃についても書かれているのですが、
 その周辺の大人たち、そして引退した警察犬まで含めて、
その"痛い"ほどの苛烈で激しく又、長く生きている分だけ少しねじ曲がっていたりする、思いが描かれています。
 そして、その正に色んな思いを持って生きる大人たちを
正に美神の如き存在で達観し又、近くで見守っているのが七竃です。

 大人たちのほうが、少し長く生きているだけ
しがらみなんか、より多く持っているのは、当たり前で心情は本当に複雑です。
 七竃のその後を知りたいようで、
知りたくないような、ちょっと複雑な読後感を持ちました。
 
 少し丁寧な言葉使いと古風で変わった文体と表現形式で
独特の桜庭ワールドをかもし出し、桜庭さんエンタメから少し、文学路線に踏み込んだかもしれませんね。

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紙の本

あくまで普遍的な思春期物語

2007/01/15 21:56

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サトウジョン - この投稿者のレビュー一覧を見る

母・優奈は25歳のある日、急に「男遊びをしたいな」と思った。
それも「辻斬りのように」。
厳しい母に育てられた彼女は自分を「母によって理想の娘につくりあげられた、ただの『白っぽい丸』」なのだと認識していたのだ。 25歳になるまでそれを変えられなかった。
それを変えるには?
男遊び、
男遊び、
男遊び・・・・。
その果てに生まれた少女・七竈。
勿論父は誰だかわからないが、母の平凡な容姿に比べて、際立った美貌の少女に育った。
年々磨きがかかる自身の美貌と世間に知られた母の所業とにより、世間の目を気にしながら生きる日々を送る少女・七竈。
そんな七竈の唯一の理解者は幼馴染の少年・雪風。
雪風もまた美しすぎる容貌をもつ少年であり、それを疎ましく思う性質もまた七竈と似通っていた。
しかし二人の間に口には出せない疑問が生まれる。
二人はいつまでこのまま一緒にいられるのか?
旭川という狭い田舎町に生まれ育ち、息苦しい思いを抱えていた少女が故郷や母から解放されていく・・・。
生まれ育った狭い世界(それは故郷だったり、親により作られた自身のキャラクターだったり)からの脱出。
「不幸にも美しく生まれてしまった少年少女」というキャッチーな設定だけれども、ここに描かれていることはとても王道の青春の悩みだと思う。
物語の中心はあくまで七竈だが、その母・優奈や幼馴染の雪風もまた作品のテーマを語る人物であり、ともに「新たな世界(自分)」へと踏み出す人物として登場する。
母・優奈の「母の影響下に育てられた無難な娘である自分を変えたい」という願望や、七竈の「狭くて息苦しい地元を出て、自分を知っている人が誰もいない所にいるということの解放感」というのは、多かれ少なかれ誰しもが共感できる心境だと思う。
自分をやり直したい、
リセットさせたい、
新しい道に進みたい、
広い世界で違う自分になりたい、ということ。
これは時代も場所にも左右されない、極めて普遍的な思春期の悩みではないだろうか。
耽美的な演出を除けば、これは王道といって差し支えない思春期モノ。
若い人にとってはリアルタイムに、すでにその時代を通り過ぎた人にとってはどこか懐かしく感じられるはず。
先入観を捨てて読んでいただければ、きっといい意味で裏切られる作品だと思う。

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紙の本

桜庭が化けたのは『赤朽葉家の伝説』の時だった、っていうのが良く分かります。これはその序章に過ぎません。桜庭に関しては、発表順に読んで言ったほうが失望しないかも

2007/12/06 20:21

4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

遅ればせながら集中読書している桜庭一樹。2006年に出た『赤朽葉家の伝説』、或は2007年に出た『桜庭一樹読書日記』、或は2005年の『少女には向かない職業』、2004年の『推定少女』、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に対してこの作品はどのような位置付けになるかが興味の焦点です。

で、結論ですがこれは『赤朽葉家』、『読書日記』に繋がっていく作品ですが、一人の少女の20年に満たない人生が語られるため、その後に続く二作ほどスケールの大きさを感じません。ただし、登場人物たちの意表をつく言動、それがもたらす不条理すれすれのユーモアは『少女には』、『推定少女』、『砂糖菓子』にはないものでしょう。

それは主人公が中学生から高校生に変わったことに対応しているのでしょう。いま気付いたんですが、子供には天然の笑いはあっても、本当の意味でのユーモアはないんでしょね。それは人間が大人になることで身につける、ある意味文化的な嗜みとでもいうべきものでしょう。ユーモアを解さない、或は下ネタしか語れない大人は躾の出来ていない獣と同じかも。

それはともかく、この本のカバーは正直、ピンときません。鈴木成一デザイン室がブックデザインの基調に選んだ黒は分ります。でも、さやかのカバーイラストはわからない。あまりに子供の側に重心が寄っている。無論、今までの桜庭ファンであれば納得して買うでしょうが、桜庭未体験者にはハードルが高い。ハードカバーで大人を相手にするつもりならば、『赤朽葉家』、『読書日記』レベルの装幀は必要でしょう。

無駄話はこのくらいにして、本の内容に入ります。目次を再現するとこうなります。

   目 次
   辻斬りのように
一話 遺憾ながら
二話 犬です
三話 朝は戦場
四話 冬は白く
五話 機関銃のように黒々と
六話 死んでもゆるせない
   五月雨のような
七話 やたら魑魅魍魎

ちなみに舞台は北海度旭川、25歳の優奈が「男たちと寝たいよ」といい、男遊びを始める「辻斬りのように」から話が始ります。小学校教諭の彼女は同僚の、結婚したばかりの田中先生から「七竈の匂いがする」といわれたことから、七人の男と寝てみたいと思い、結局それを実行した末に妊娠、学校の先生を辞めて出産した娘につけた名前が、七竈です。一話以降は17歳の七竈が語るという構成となっています。

で、目次紹介ではあっさりタイトルを書きましたが、実際に本文で各話のトップ頁を見れば

           一話
           遺憾
           ながら

とか
           二話
           犬です
とか
           三話
           朝は
           戦場

とか、ちょっと面白い按配に字がレイアウトされていて、思わずむふふん、なんて呟いてしまうわけです、わたし・・・

で、七竈は17歳の高校生美少女です。それもおっそろしいくらいの。母・優奈は彼女を26歳で産んだということですから現在43歳。その頃、優奈は男をとっかえひっかえしていたので、七竈の父親が誰かということは彼女以外にはわかりません。そして今も家に腰を落ち着けるということはありません。

母に代わって七竈を育てたのが優奈の父、七竈にとっては祖父ですが、名前はなぜか書かれることがありません。ちなみに、川村家には黒い子犬、というか、なんじゃ、こりゃ、という存在のむくむくという犬がいましたが、今は警察犬を引退後、川村家の護衛犬となったシェパード・ビショップがいます。

主人公の川村七竈は旭川第二高校の二年生で、本人は美しく生まれてしまったことがイヤでしょうがありません。それが自分を産んだ母親、或は賞賛の眼差しで自分のことを舐めるように見る男たちへの憎しみになっているのです。周囲の雑音を嫌う彼女が趣味にしているのは一人でも遊べる鉄道模型でした。

桂雪風は、そのような彼女が唯一心を許せる友だちです。彼もまた美形。旭川の駅前書店で働く母親・多岐以外は、今は怠け者となってしまった父親、そして末っ子で七歳の夢実まで六人の子供すべてが美形という家族の長男です。彼は自分の美貌を恨むことはありませんが、鉄道模型が大好きで、七竈の幼いときからの同好の士といえます。

旭川きっての、いやある意味、日本きっての美形二人は、本人たちの気持ちは友だちであっても、周囲から見れば明らかに恋人。そんな二人の前に、邪魔者が現れます。七竈、雪風の一年後輩で雪風に恋焦がれるブスの緒方みすずです。彼女は七竈の行く先々に立ち回っては、雪風から手を引けと騒ぐのですが・・・。

何が起きるか、どう、なるかで一気に読んで、???となります。そこが『赤朽葉家』、『読書日記』に及ばない点です。でも、嫌いではありません。もし、桜庭体験が未だでしたら、文庫から出発するのも手ですが、この本から入って『赤朽葉家』、『読書日記』と出版順に読むのがベスト。作者の成長ぶりがよく分ります。逆に読むのは、ちと物足りない・・・

主な登場人物は

川村優奈:Yこと優奈
川村七竈:優奈26歳で生まれた娘で、父親は不明。旭川第二高校二年生。大変遺憾ながら、美しく生まれてしまった少女。鉄道模型が大好きで、同好の美少年・雪風が唯一の友だち。
川村祖父:っていうか優奈父って言うか・・・
ビショップ:警察犬を引退後、川村家の護衛犬となったシェパード
むくむく:川村家にいた黒い子犬、というか、なんじゃ、こりゃ、という存在
桂多岐:旧姓は田中多岐。42歳。自分以外はそろって美形という六人の子供の母。旭川の駅前書店勤務、休みは火曜日。
桂夫:昔は旭川で有名な美男子。今は頭の悪い怠け者。多岐の夫で名前は、ない、かな?
桂夢実:多岐の長女で末っ子、七歳。
桂雪風:多岐の長男。鉄道マニアの美少年。
緒方みすず:ブス。七竈、雪風の一年後輩で雪風に恋焦がれる。
梅木美子:人並みはずれた美貌や異端は都会にしか住めないと主張する東京の有名芸能プロダクションのスカウト・ウーマン。その実体は・・・

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