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商品説明
署長の右腕として活躍したエリート刑事・雨森の転任先は、開署以来、一度も捜査本部が置かれたことのない小さな動坂署。そこは不祥事を起こした者や無能な警官を飼い殺すための“刑事の墓場”と恐れられていた。不貞腐れて過ごす雨森の、動坂署での初仕事は、痴話喧嘩が原因の些細な傷害事件。だが、やがて県警全体を巻き込む大事件へと発展し、いよいよ拗ね者たちが立ち上がる。江戸川乱歩賞受賞の異能が描く、待望の書下ろし長編小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
エリート刑事・雨森の転任先は「刑事の墓場」と恐れられる動坂署。不貞腐れて過ごす雨森の、動坂署での初仕事は、痴話喧嘩が原因の些細な傷害事件。だが、やがて県警全体を巻き込む大事件へ。いよいよ拗ね者たちが立ち上がる!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
首藤 瓜於
- 略歴
- 〈首藤瓜於〉1956年生まれ。上智大学法学部卒業。会社勤務等を経て、2000年「脳男」で第46回江戸川乱歩賞受賞。CASA(現代美術振興協会)を主宰。他の著書に「事故係生稲昇太の多感」がある。
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紙の本
能ある鷹は爪隠す
2006/06/15 22:10
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公・雨森が動坂署に異動になるところから物語は始まる。「刑事の墓場」と呼ばれる動坂署に転任させられることは干されることだと県内の警察官たちは思っている。まず動坂署には捜査本部が一度も置かれたことがない。また、不祥事を起こしたものの表立って処分できない刑事を収容しておくための施設とも言われている。出世への野心満々だった雨森は、このような警察署があること自体信じられないし、同僚のやる気のなさにもうんざりしている。
ある日、管内で女性の殺人事件が起きた。動坂署に捜査本部が置かれることになったのだが、その目的が県警幹部による動坂署つぶしだと分かると、動坂署員たちは俄然本領を発揮しだす。
殺人事件の謎解きも面白いが、本書の一番の魅力は、負け犬集団と思われていた刑事たちが隠していた実力を見せるところである。故あって動坂署で冷飯を食らっているものの、何せ元エリート揃いである。主人公の雨森ではないが、あまりの変容ぶりに呆然としてしまうほどだ。
もう一つ付け加えると、それほど動坂署に愛着があるとは思えなかった彼らが、なぜ必死になって動坂署を存続させようとするのか?その理由が分かったとき、「お、お…」と声が出てしまうこと請け合いだ。
紙の本
一番気になるのは首藤の主宰するというCASA(現代美術振興協会)の活動ですね、作家生活よりそちらが上という位置づけなんでしょうが、どうなっているんでしょ?
2006/06/24 11:08
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当にお待たせしました、っていう感じの首藤瓜於の新作です。最近の乱歩賞の駄作群の中で出色の出来だったのが2000年に第46回江戸川乱歩賞受賞をした『脳男』でした。私は、それを読みながら、これってトーマス・ハリス『羊たちの沈黙』じゃん、でもいいよなあ、って感心をした記憶があります。
で、個人的にはあの話って終っていないよなあ、いつか続編が出るんだろうなあ、なんて夢見ているわけですが、首藤は書きません。続編どころか、次作そのものが出ません。これは乱歩賞をあげた講談社も困ったとは思うんですが、ともかく立派としかいいようがないほどに書かない。
で、やうやく『事故係生稲昇太の多感』が出たわけですが、それから再び沈黙。で、今回の『刑事の墓場』となりました。ま、カバーの印象は古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』というか久間十義っていうか立花隆っていうかノンフィクションぽくて、要するに基調がモノトーンで写真を使っている、っていうことだけからくる勝手な印象です。装幀 多田和博、写真 リーブラ株式会社。
主人公の37歳、雨森警部補は、生え抜きの警察官ではありません。偏差値の高いことで有名な大学を出てから5年間は民間の会社に勤めています。でも、公務員の生活が安定している、高卒程度の学歴の人間が多い警察なら一般の企業よりも早く出世ができるに違いないとの判断から、勤めていた会社を辞めて警察官になります。
そして前任の八文字署では知能犯係の主任であった彼は、見事に昇進試験に受かりそのままエリートコースの乗るはずだったのですが、一ヶ月前に異動したのが「刑事の墓場」と呼ばれる動坂署で、そこで自分一人しかいない部署・強行盗犯第二係の係長になっています。勿論、独身。独身寮がないため、かれは動坂署内に寝泊りをしています。
動坂署は、署員は20名、婦人警官はゼロ、全員が男という珍しい存在。管轄地区は、向ヶ丘弥生署と枇杷橋署という中規模署にはさまれたごく狭い地域です。一年に一度か二度、殺人事件などの重大事件が起こると、弥生署か枇杷橋署のどちらかが捜査を担当し、捜査本部もそちらに置かれることが慣例となっていて、動坂署への転任は死刑宣告に等しいため「刑事の墓場」だそうです。
で、ここで起きた男女間の小さな諍いが殺人事件となって動坂署を震撼させるのですが、そこはある意味シンプルな展開なので読んでもらいましょう。勿論、そんな単純なことで終るわけはないんですが。で、とりあえず順不同ですが興味深い登場人物紹介といきましょう。
まず、ちょっと不可解な署長 桐山がいます。動坂署で一番若い鶴丸はパソコンオタク。50代前半のダンディな刑事課課長 鹿内は、大財閥の御曹司で、その実力を恐れた人間に嵌められてここに来ています。梅柿は刑事課の最年長で、強行盗犯第一係の係長。その部下の猪俣は、鶴丸の上司で、元本部の人事。巨漢の蝶堂は、知能暴力犯係の係長。一柳は、前は検察事務官。それに動坂署で最も得体の知れない鑑識係の桜葉がいます。
町の住民ですが、愛宕にある女子大の学生 小須田里香22歳がいます(これってコスタリカの洒落でしょうか?)、駅前のスナック『浮き袋』のアルバイトをしていてマンション住まい。彼女を囲うのが「相磯サイクル」経営者 相磯均37歳、独身。で彼の小学校時代からの遊び仲間というのが、愛宕国際人文短期大学助教授 松山正太郎、酒屋の篠原、蕎麦屋『増の谷』の増谷です。ほかに防犯協会の会長で銭湯・萩の湯の主人 萩尾がいます。
一種、スポ根ものの警察版かな、意外よね、っていう感じがあります。話の展開はある程度予測がつきますが、私は犯人は当てられませんでした。ラストもこんなものかな、ということで凄さは感じませんが、悪くはない。ただ、『脳男』と比較すると軽量級かな、って・・・