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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.12
- 出版社: 集英社インターナショナル
- サイズ:20cm/238p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7976-7108-4
紙の本
オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える
著者 木村 元彦 (著)
【ミズノスポーツライター賞(第16回)】Jリーグ屈指の美しい攻撃サッカーはいかにして生まれたのか。ジェフ千葉を初タイトルに導いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に...
オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える
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商品説明
【ミズノスポーツライター賞(第16回)】Jリーグ屈指の美しい攻撃サッカーはいかにして生まれたのか。ジェフ千葉を初タイトルに導いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセ−ジ。人の心を動かす、その言葉の背景にあるものとは?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
木村 元彦
- 略歴
- 〈木村元彦〉1962年愛知県生まれ。中央大学文学部卒業。ノンフィクション・ライター、ビデオ・ジャーナリスト。アジア・東欧の先住民族問題を中心に取材・執筆。著書に「悪者見参」など。
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紙の本
ボスニア大統領であってもおかしくないバルカンの賢人。「サッカー人生」を選び取ったことで経験した波乱の日々、体験を「言の端」ににじませる。
2006/08/14 17:25
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本代表の新たなチャレンジが始まったこのタイミングで本書を読んでみようかという人の動機は、だいたい自分と似たり寄ったりのところではないか。仲間うちや家族と一緒に観戦する際に「サッカー通」風を吹かせて「知ったか」したい、そこにいる人より少しばかり情報面で優位に立ち、分かったようなことしか口にしない解説者をしのぐコメントを時にはして、ゲームを「神の視座」に近いところから眺めるような気分で楽しみたいといったところである。「オシムの戦術はさ……」「オシムはこういう選手交代をする癖があって……」等々。
私の場合、「読まなきゃヤバい」と直接の引き金になったのは、日本代表監督就任あとの何かのインタビューであった。「これがオシムか、『ロークの九賢人』の1人にいそうな風貌だ。背ぇ高いし猫背だし、ジャージはいつも黒いし」とテレビを眺めていたのだが、彼の回答の一部の意味がまるで読み取れなかった。やさしい言葉で表現された言葉であったのに、意図するところがまるで理解できなかった。こちとら、実験的な手法の海外文学が好きで読んだり、抽象概念いっぱいの哲学書をかじったりもしているから、「言葉」「思想」の読解にはそう難儀したことはない。難儀する場合はたいてい、書かれている表現自体に問題があったり、翻訳に不備があったりするのだ(ということにしている)。
しかし、このインタビューに関しては、即座に自分の理解力不足なのだということを悟った。それは言語外コミュニケーションの様子から、つまり確信に満ちた表情、何かを真剣に伝えようとする気迫といったものから分かり得ることで、どう考えても、必死で聞いていなかったこちらが悪いと納得せざるを得ない状況であった。おそらく、この発信側と受け手のギャップは、ピッチの上で、オシムと選手との間に日常的に起こっていることなのだろう。
さて、オシムの謎めいた言葉とその解読を期待しながら手に取った本書であったが、「こんなすごいものまで読むつもりはなかった」と思わされるふところの深さ。驚かされた。こちらが勝手に期待していた語録、それについての解説という内容ではなかった。これは特異な人物の「半生記」であり、さる事件のドキュメンタリーなのであった。
ユーゴスラビアという独自の社会主義路線を歩んだ国家がいかに瓦解したか。それをオシム一家という市民の目から、サラエボ包囲戦のなかで何が起こっていたかで描いている。包囲戦のなか、妻と娘だけがサラエボに取り残され、父と息子たちは外で仕事をしたり学んだりしながら離ればなれの暮らしを余儀なくされた。ゴイティソーロやスーザン・ソンタグなどの知識人たちにより悲劇的に報告された包囲戦であるが、水道や電気などのライフラインが途切れたなか、市民たちがそれをどう乗り切ったかに意外な明るさも覗かせている。
そして、立て続く紛争にさらされた国家の代表監督として、他の誰も経験できなかった困難に見舞われたサッカー人生が記録されている。代表に選ばれた選手たちが、「国境が変わったから、自分はもはやユーゴの代表ではない」と欠けていくという事実のすさまじさ。
激動の現代史をかいくぐってきた才あふれるサッカーの指導者が、欧州のビッグクラブのオファーをよそに、なぜJリーグの成功しているとは言えないチームを引き受けたのか。オシムによって自らの能力に目覚めた若い選手たちとの交流に、指導者とはどうあるべきか、何をなすべきかを熟知した賢人の恩寵が豊かに認められる。
システムを語ることで、システムを人間の上に君臨させてはいけない、相手をイメージしなければ……という、幾多の困難を生き抜いてきた人の現場主義。この人の元で、これからどれだけ多くの才能が花開いていくことだろうか。
紙の本
さらばジェフよ
2006/07/12 16:24
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nanako17girls - この投稿者のレビュー一覧を見る
オシムは言葉を大切にする。それはかれの経歴とは無関係ではあるまい。旧ユーゴスラビアで行われた「戦争」を経験してきたオシムにとっては正確に「言葉」でコミュニケーションできなければならなかった。その言葉で明確に意思の疎通が図れなければ、最悪の場合「死」ということになってしまうからだ。よく、英語の文法で重要なのは「冒頭のことば」であるという。「とにかく、相手に自分の意思をはっきり伝える」ということが重要らしい。その感覚は戦後生まれの日本人には分かりづらいものである。しかし、オシムはそれを「体験」してきたのだ。だから、一見わかりにくいようでも、その中身は深遠なる配慮と明確な意思があると思う。そんな本書がつまらないはずはない。
かれのサッカー観はきわめてシンプルだ。とにかく「走れ」ということだ。そうなのだ、サッカーは「走る」スポーツなのだ。足がパンパンになり、筋肉が悲鳴を上げるのだ。「45分×2」の時間、走るのはしんどいことだ。よく欧州のトップ・プレーヤーは「走らない」ことが重要だという。手を抜くわけではない、むしろ「走る」ということの重要さを逆説的に説明しているのだろう。
日本ではまだ、サッカーの歴史は浅い。はっきりいって今回のWカップの結果は当然である。出られるだけでも凄いことだ。そして、これからはその先を目指すのだ。オシムという人物に託された期待はおおきい。そして、4年という時間は長い。結果だけではなく、日本という国に何かを残して欲しい。そうなると、自然と「文化」が生まれてくる。
紙の本
気持ちを貫き通す
2008/10/22 22:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
オシムの言葉 木村元彦 集英社インターナショナル
出版は2005年12月なので、まだ日本代表監督就任前です。わたしはサッカーファンではありませんので、新監督のことは知りませんでした。読み始めはプロ野球の星野仙一監督を思い浮かべました。厳しいという一点です。
オシム監督は頑固な人。もう少し考えを広げると、頭をからっぽにして勝利という結果に向かっていく人と受け取りました。サッカーに没頭することによって自国ボスニア・ヘルツェゴビナの内戦を忘れる。つらいことです。争いは地球上のどこでも、時代のどの位置においてもなくならない。
結果的に無駄になっても走るという運動動作が好きです。オシム語録もすばらしいですが、通訳さんの言葉もそれに劣らず説得力があります。貫いた自負という言葉はなかなか出てきません。お金があるとか貧しいとかは関係なく、自分はサッカーが好きだという気持ちを貫いてきたし、これからも同様である。
他人に厳しく接するということはとても難しい。勝利という共通目標があるからこそ厳しい言葉を受けても選手は逃げない。そんなことを考えた一冊でした。
紙の本
ある個人から見たユーゴ紛争
2006/08/15 14:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:河童 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年6月3日、モンテネグロ共和国が独立を宣言し、同15日、セルビア共和国はそれを承認した。かつてはユーゴスラビアという一つの国でありながら、現在では6つの国に別れたことになる。
ひとりのサッカー監督を追いながら、旧ユーゴ崩壊の過程も描いているこの本は、「政治とスポーツ」「ナショナリズム」について考えさせられる内容だ。
紙の本
オシムはなぜあんなにもサッカーと人を愛しているのか
2006/06/19 21:07
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の紹介がしたいと、ずいぶん長いこと文章を考えてきましたが結局まとまりません どんな言葉を連ねたところで”オシムの言葉”には絶対にかなわないのですから。
イビツァ・オシム。
日本サッカー史におそらくは長く名前を残すであろう人物。
この本は、オシムの、政治と戦争に翻弄された半生と、JEF UNITED市原・千葉の監督として日本に来てから成し遂げたことを綴った伝記であると同時に、著者の『誇り』『悪者見参』に続く、ユーゴスラビアサッカー三部作の最後を飾る作品です。
オシムがJEF UNITED市原・千葉の監督になってまもなくして、インタビューや記者会見でのオシムの発言が注目されるようになりました。
皮肉やわかりにくい比喩が混ぜられた発言は、それでも多くの人をひきつけました。
それらは豊富な経験と知識から来る冷静な分析、洞察によって成り立っていますが、それだけではあんなにも多くの人の心には届かない。
オシムのすべての発言の根底にあるのは、サッカーとなにより人に対する深い愛情です。
だから彼の言葉は輝く。
あれほどまでに深くサッカーと人を愛するようになったのはどうしてなのか。
それはおそらく彼の生きてきた人生と深いかかわりがあるのでしょう。
その一端をこの本でうかがうことができます。
紙の本
だからオシムは面白い。
2006/02/09 20:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジェフ・ユナイテッド市原千葉の監督を務めるイビツァ・オシムの半生を綴るノンフィクション。
予算のないチームが名将を得ていかに躍進したか、戦術的なことや選手の証言も加えつつ振り返る。オシム監督のことをろくに知らなかったミーハーJリーグファンの私は、[オシム?ああ面白い禅問答みたいなこと言う人ね]程度の認識しか無かった。この本を読んで認識が変わった。これほどの、素晴らしいサッカー戦歴を持った監督だとはしらなんだ。そしてあの煙にまくごとき発言も、ワケがあったとは…驚きの連続だった。
ただ、2004年に村井選手・茶野選手というジェフの有力選手を引き抜いたジュビロ磐田(私のひいきチームである)は、本書では完全に敵役扱い(オシム監督自身は、平和な移籍なのだから問題ないとおっしゃっているのだが)。その辺が、ジュビロサポにはややストレスフルかもしれない。
最もすごかったのは、戦争によって家族が引き裂かれた激動と悲しみの時代…そして生き抜いた末の、再会であった。戦争の恐怖を身をもって知ったオシム監督。これから、千葉戦での彼の采配に注目していきたい。