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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.10
- 出版社: ハーパーコリンズ・ジャパン
- レーベル: ハーレクイン・ヒストリカル
- サイズ:17cm/284p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-596-32232-5
闇に眠る騎士 (ハーレクイン・ヒストリカル)
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紙の本
傷だらけの騎士と自由を奪われたウェールズの娘。1423年、中世イングランドを舞台とした切なさ全開のロマンス。
2005/12/13 11:52
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三度目の正直 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハッピーエンドが前提であるハーレクインの本を好んで読む私は、「最初からハッピーエンドだと分かってるのになんで読むの? 読んで面白い?」と友人に言われたことがある。なぜと言われると困ってしまうが、ハッピーエンドだと分かっているからこそ読むとも言える。ハッピーエンドにたどり着くまでの山あり谷ありの困難を、二人がどう乗り越えていくかという過程を楽しみたいのだ。
鮮烈のデビュー作『薔薇と狼』から2年。首を長くして待っていたスピンオフ(続編)の発売に歓喜した。ただ、スピンオフが出るとするなら今度のヒーローは金髪の騎士ニコラス・ベッカーだと思っていた人は多いはず。それだけに、ヒーローはヒュー・ドライデンだということにとても意外性があった。
ヒューは、前作では主人公の友人として登場し、ある男によって酷い拷問を受け心身ともに傷を負った騎士。前作の中では、酷い拷問を受けたらしいということは書かれてあったものの、どんな拷問を受け、どんな酷い傷を負ったのかなど具体的には書かれていなかったと記憶している。今回はそれが具体的にあかされており、そのあまりの内容に絶句した。まさかそこまで酷い目にあわされていたなんて思ってもいなかっただけに、”拷問”というものを甘く見ていた自分が呪わしくさえ思えた。
心身ともに一生消えないような酷い傷を負い、明るさも生きる希望も失ったヒュー。そんな彼と出会うヒロインがウェールズ人の娘シャーン。
シャーンの明るさと無邪気さによって次第に癒されていくヒュー。シャーンもまたヒューに惹かれていくのだけれど、二人の間には大きな壁が立ちはだかっているのだ。シャーンは兄の意向で近いうちに修道院に入れられる身であるし、ヒューは他の女性に(仕方なく)求婚している身。
この壁がどう崩されるかが本書の最大のお楽しみでしょう。
でも、本書の面白さはそこだけではない。
前作でもヒロインの隠された秘密やその設定に大変驚かされたが、今回もびっくり仰天である。巻頭に、ざっと簡単な登場人物紹介が載っているのだが、実際の歴史に名を残すあの人やこの人の名がずらり。ヒストリカルシリーズの他の作品でも実在の人物が登場することは珍しくはないが、大体はちょろっと登場するという程度。だが本書は主要人物としてかなり出ずっぱりなのだ。
ヒロインのシャーンにいたっては、なんとオーウェン・チューダーの妹という設定になっている。中世ヨーロッパの歴史をかじったことのある人ならご存知の通り、オーウェン・チューダーは国王ヘンリー五世亡き後もその妻キャサリン王妃の側に仕え、後に二人は結婚して子供ももうけたという男である。また、後にチューダー王朝を開くことになるヘンリー七世は彼の孫にあたる。本書ではまだキャサリン王妃と結婚はしていないが、二人の関係を匂わせるような雰囲気はある。本書では妹シャーンに冷たい酷い兄として描かれているところもまた面白い。
史実をうまく取り入れながら見事なフィクション仕立てになっていてその巧さには舌を巻くばかり。歴史好きさんなら大いに楽しめることは間違いなしだけど、たとえ歴史の予備知識が無くても大丈夫な作りになっているのでご安心を。
看護師として勤めた後、大学に戻って歴史を学び「史実は小説より奇なり」と実感したことが小説を書こうと思ったきっかけだという著者。今後もどんなヒストリカル作を生み出してくれるか楽しみである。