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商品説明
従者の生首を持ち去り、受領たちを袋叩きにし、平安京を破壊。殴られる天皇、犬に喰われた皇女…。藤原実資の日記「小右記」に記された暴力と凌辱の平安朝。源氏物語には描かれない、雅びな都の知られざる暴力事件を読み解く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
繁田 信一
- 略歴
- 〈繁田信一〉神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。現在、同大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。著書に「陰陽師と貴族社会」など。
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書店員レビュー
タイトルに偽りなし?!
ジュンク堂書店三宮駅前店さん
平安貴族と聞いて私たちが思い浮かべるのは「源氏物語」に出てくるような雅な世界で優雅に暮らす人々ですが、実際の貴族たちは天皇の御前で取っ組み合いの喧嘩をしていたり、従者を撲殺してしまったり、喧嘩相手の家を壊しに行ったり、平安京も壊しちゃったり、かなりやりたい放題。
あまりのやんちゃっぷりに貴族のイメージ壊れまくりですが、酔っ払って騒いだりしてるのは今と同じだったりして面白いです。藤原道長など有名な貴族も出てきたりしますのでこれまでとちょっと見方が変わるかもしれません。
続編の「王朝貴族の悪だくみ」も是非一緒に読んでいただきたい一冊。
紙の本
平安時代盛期の驚くべき貴族たちの実態
2005/10/02 12:47
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
暴力・レイプ・殺人・死体遺棄・拉致・公共物損壊・・・これらの禍々しい犯罪の当事者として、平安時代盛期の貴族を連想することは難しいであろう。
平安時代の貴族と言えば、伊勢物語・源氏物語・枕草子・古今和歌集などの優れた文学や詩歌などを生み出したことから、雅な人々というイメージがある。
本書は、このような見方に疑問を呈し、藤原道長と同時代の貴族、藤原実資が著した『小右記』という日記を詳細に辿ることで、平安時代盛期(十一世紀初頭)の貴族たちの思いも寄らない荒々しい姿を次々と明らかにしている。
その実態を本書に沿って紹介すると・・・。
序章では、時の権力者の藤原道長が登場する。道長は源氏物語のヒーロー光源氏のモデルの一人と目されているほどの人物だが、その道長でさえ従者に命じて、意に沿わない下級貴族を路上で拉致し自宅に軟禁するというような荒っぽいことを再三行っている。
また、別の貴族はあろうことか天皇の御前の前で、しかも当時の政治の中枢である御所南殿で取っ組み合いのけんかをしている。
さらに、驚くべきは、藤原伊周という道長のライバルであった貴族などは、激情に駆られて従者をして花山法皇に矢を放つようなこともやっている。放たれた矢は、法皇の袖を射抜き、寸前のところで法皇は命を落とすところであったという。この事件は、好色と言われた花山法皇と藤原伊周の間で色恋めぐる誤解から生じたというから驚かされる。
暴力は、貴族同士ばかりではなく、宮中や庶民の女性にも容赦なく振るわれている。高位の貴族が女性をレイプしてスキャンダラスな事件に発展したこともあり、中には仲間の貴族がレイプするのを手助けしたり、時にはレイプがもとで関係者の間で従者を巻き込んで大規模な乱闘にまでなったケースもあるというのだから何ともすざましい。
最も悲惨な事件は、花山法皇の皇女が何者かに言葉巧みに宮中から連れ出された後、路上で襲撃され落命したところを野犬に食い荒らされ無残な姿で発見された出来事であろう。まるでホラー小説を地で行くような展開であるが、この背後にはこの皇女に袖にされて恋の恨みに取り憑かれた荒三位と呼ばれた貴族の影があるという。
この他にも、往来の妨害をする貴族たち、自分の氏寺を造るのに平安京の建物から石材や木材を平気で持ち去る高位の貴族たちが登場する。何とも呆れた貴族たちの姿である。
このような個々の事例は歴史学の分野では夙に知られていた事件であるかもしれないが、著者は平安時代の最盛期と言われる十一世紀初頭という限られた時期の貴族による暴力沙汰を多数紹介することで、これらの事件が決して一部の不良貴族による所業ではなく、広く貴族に蔓延した気風であったということを解明することに成功している。
最新の研究は、貴族は様々な家職を担っており、その中で軍事貴族という暴力を家職とする存在も明らかにしている。貴族といえども、暴力とは無縁ではなかったことが解明されており、本書はこのような研究動向とも合致している。史料の原文が全く引用されておらず、やや三面記事的な視点も見られなくもない点など疑問点も散見するが、雅とばかり思われていた貴族の荒々しい一面を明らかにしている点で、本書はユニークな歴史書たり得ている。
紙の本
雅はどこへ。
2017/04/07 17:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の古文で、清涼殿で控えていたら同僚に烏帽子を叩き落とされたけど理性的にやりこめたという貴族の話をやったのを思い出した。
その様子を櫛形の窓(という天皇専用のぞき見用の窓)から帝が見ており、烏帽子を叩き落とした人間は左遷、挑発にのらなかった貴族は昇進、という結果に終わったというのは、なるほど、そういう意味があったのね。
紙の本
光源氏が存在しなかった現実の平安朝
2012/10/08 01:08
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
平安期の貴族というと、『源氏物語』に出てくるような、
良く言えば優雅、悪く言えば文弱なイメージがある。
本書は、そんな彼等の醜い実像を赤裸々に暴いたゴシップ記事の集成と言える。
小野宮右大臣藤原実資の日記『小右記』が伝える真実の貴族たちの姿は、武士顔負けの粗野・凶暴・残虐なものであった。彼らは宮中で取っ組み合いの喧嘩をしたり、身分の低い者を寄ってたかってボコボコにしたり、粗暴な従者たちを使って他人の家に殴り込みをかけたり、果ては自分の従者をぶち殺したり、他人の従者の生首を持ち去ったりと、ヤクザも真っ青の無軌道ぶりであった。暴力を忌み嫌う藤原実資は圧倒的少数派であり、道長ら権力者の横暴を苦々しく見ているしかなかった。
彼ら特権階級にとって、下層の人間はリンチの対象、暴力のはけ口でしかなかった。貴族同士でも気に喰わないことがあると、すぐさま互いに暴力に訴える。ゴロツキ同然の従者たちを囲って非道の限りを尽くした彼らに、『源氏物語』の貴公子たちの面影はない。殴り合う凶悪な貴族たちは確実に「武士の時代」を準備していたと言えよう。
なお本書には書かれていないが、数少ない良識派である藤原頼通は同じく良識派の藤原実資とは仲が良かったようであり、政治運営においてもしばしば実資に相談している。しかし傲慢で我の強い父・道長と異なり、頼通は良識派ゆえの押しの弱さがあった。優柔不断な頼通は指導力を発揮できず、結果的に、治天による恣意的・専制的政治である「院政」への道を開くことになる。これもまた歴史の皮肉か。
取り上げられた数々のスキャンダルは面白いが、当該期の社会構造に肉薄するような掘り下げた考察がなく、事件の紹介に終始している観があるので☆3つ。