バルバラの謎が明かされる最終巻を読んでいる間、とりわけ夢先案内人・渡会時夫の記憶が上書きされていく場面では、私自身の脳内過程が二重化されたかのような眩暈に襲われ、軽い頭痛と嘔吐感をさえ感じた。読み終えた刹那、一瞬のことだったけれど、目に見える部屋の情景が夢の世界の出来事のように思えた。北方キリヤへのトキオの思いが切なく迫ってくる。自我の孤独と「ひとつになること」。 記憶の「上書き」というと、ボードレールが『人工楽園』で人間の脳髄や記憶に準えた「パランプセスト」(書かれた文字を抹消して重ね書きされた羊皮紙)を想起する。夢と現実の重ね描き。ここで「夢」とは「未来」(死後の世界)のことで、エズラ・…
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