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商品説明
80年代初頭、鳩間島の住民は親戚の子を借りてきてまで小学校を存続させようとした。今では全国各地から居場所を失った子どもたちがこの島へやってくる。日本テレビ系連続ドラマ「瑠璃の島」原作。2000年刊の新装普及版。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
森口 豁
- 略歴
- 〈森口豁〉1937年東京生まれ。琉球新報社会部記者、日本テレビ沖縄特派員を経て、フリージャーナリストに。著書に「沖縄こころの軌跡」「沖縄近い昔の旅」など。
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紙の本
里子問題を通して孤島の歳月を伝える、力作ドキュメンタリー
2008/12/10 01:13
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikan - この投稿者のレビュー一覧を見る
きれいな海の写真の表紙と、口絵写真の無邪気な子どもに惹かれて手に取りました。
が、中身はタイトルどおり重め。冒頭は、6歳児を親から離してひとり、島に里子に来させる話です。舞台は西表島にほど近い鳩間島。人口は41人。島で唯一の公的機関・小学校を廃校にさせないための最後の手段として、子どもを外から連れてきたというのです。
その後も、移住者の子弟が入学したかと思えば別れも告げずに去ってしまったりと、児童数は片手の指の数の中を行ったり来たり。この増減ひとつひとつに、島の大人たちは狼狽し、案じ、時には涙を流して喜びます。南の島暮らしといえば、のんびり気ままなものかと思っていたこちらに対し、島の学校=中央に向ける視線の強さにはただ驚くばかりです。
この小学校存続をめぐる重苦しい模索を縦糸に、様々なことが語られていきます。
水も電気も自由にならなかった島の暮らし、川ひとつない島に米貢を強いた琉球王府、命がけで海を渡って米作を続けた島民、二百人を超える帰省者で島が賑わう豊年祭、太陽でなく月のリズムで流れる島の時間、漁、祈り、台風、移住者たちの生活と現金収入、老いて病む島民たち、死んだ夫があの世で幸福かを判じてもらうためユタに通う老婆、離島者を明るく見送った後の港に残る絶望的な落胆、などなど。
一冊読むと、美しいだけではない、島の生活の丸ごとが理解できたような気になります。島の人たちの顔が見えてくるような気さえします。「沖縄と中央」という、できれば見ずに済ませたい問題が、まるで自分のことのように、難しいことではなくシンプルな問題として理解できたように思えてきます。長い年月をかけて島を見続けた、取材の力だと思います。
初版が出たのは20年以上前。版を重ね、ドラマ「瑠璃の海」の原作にもなったとのこと(見ていませんが)。細く長く、読者の心を掴んでいるのでしょう。40人の島民しか知り得なかった世界を、我がことのように実感させてしまう、これがドキュメンタリーの力か、と膝を打つ一冊でした。