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商品説明
窓からのぞく巨人の顔、残された足跡、屋根の上の死体…。御手洗とホームズの推理が火花を散らす! 島田荘司著「石岡和巳対ジョン・H.ワトスン」も収録。00年刊「御手洗潔攻略本」等掲載に書き下ろしを加えて刊行。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
柄刀 一
- 略歴
- 〈柄刀一〉1959年北海道生まれ。「3000年の密室」で長編デビュー。著書に「ifの迷宮」「凍るタナトス」「レイニー・レイニー・ブルー」など。
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紙の本
よく出来ている話だとは思うんですね、特に御手洗もののほうは。でもホームズは、ちょっとね、ひねりすぎてピンと来ません。ま、私と相性が悪い、といっておきましょう
2005/07/23 19:48
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんていいますか、相性の悪い作家というものがいます。気になって何冊か読むのですが、物事の考え方反発を感じて読んでいて苛々する、登場人物が気に食わない、あたりはまっとうなほうです。文章が嫌い、下手で読むに耐えない、も分ります。問題は、殆ど頭に残らない、という作品、これが困ります。しかも、読み終わって時間が経つものならばともかく、今読んだ話が記憶に残らない、相性以前の問題かもしれませんが、気になります。
で、このミステリ・リーグの一冊にも、私にとって最悪の事態が起きたのです。いや、後腐れはなくていいんですね、要するに読み終わったけれど何も頭に残らない。読んでいる最中は、それなりに感心はしたんですよ。石岡だって、いかにも「らしく」愚かに描けていますし、ホームズのほうになれば???という突っかかりもあって、かなり技を使っているなと誉めたくもなるんです。ユーモアだってあります。でも、変ですね、今となればなーんにも残ってません。
収められているのは五つの話。御手洗が活躍するのが、「青の広間の御手洗」と「シリウスの雫」の二編。ホームズが活躍するのが「緋色の紛糾」と「ボヘミアンの秋分」の二編で既発表のもの。で両者が対決する、本のタイトルにぴったりの「巨人幻想」、これは書き下ろしでボリュームも一番です。
私にしてみると、御手洗ものはパスティーシュ、ホームズものはパロディ、両者が登場作品は、どちらでもある、そういう気がします。でも、個人的には御手洗潔が登場する「青の広間の御手洗」と「シリウスの雫」のほうが、島田荘司らしいのではないでしょうか。特にノーベル賞受賞を話しに絡ませた前者は、いかにも御手洗の性格が出ていて、いいものです。巨石遺跡での不可解な殺人事件という後者も、解決はまさに御手洗です。
そういう意味では、内容的には御手洗ものではないか、と思える「巨人幻想」も、設定がいいです。霧の中を悠然とあるく巨人の謎というのは、いかにも、御手洗です。タイトルだけの印象で恐縮ですが『魔神の遊戯』を思い出しました。ま、中身は違うのですが。で、今回の「巨人幻想」について言えば、ムードには感心しますけれど、ホームズと対決する必要があったかは、正直、疑問です。二人の解決に向けてのベクトルが正反対であればまだしも、途中でエールを投げ合うような具合では、面白くありません。
らしさ、という点では御手洗ものに軍配を上げましたが、楽しさというか笑えるという点では現代日本、二子玉川にホームズがいるという設定で、ダイイングメッセージものの「緋色の紛糾」と、在日スペイン大使の依頼で昔の手紙を取り返す「ボヘミアンの秋分」でしょう。タイトル自身、笑えます。ま、ホームズものは、本家の作品のタイトルもかなり有名で、私でも簡単にオリジナルがわかりますが、御手洗ものでは、そこまで詳しくないのでピンと来ないだけで、実はかなり有名な作品が下敷きかもしれません。ただし、それを探りたくなるほどのものではない、そういう位置付けです。
この作品集について他の人の評を見ますと、よく作ったなあ、という好意的なものが多いのですが、だから何だ、というのが私の感想です。たとえば、パスティーシュといえばこの人、といってもいい清水義範。同じ笑えるといっても、清水ならば哄笑したくなりますが、こちらでは微苦笑、しかも?付。才能はあるんでしょうから、勿体無いなあとおもいます。いい人なんですけど、といわれる万年恋人候補、思い出しません?やっぱり相性ですかね。