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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2004/11/10
  • 出版社: 文芸春秋
  • サイズ:20cm/288p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-16-323510-8

紙の本

対岸の彼女

著者 角田 光代 (著)

【直木賞(132(2004下半期))】30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。立場が違うということは、時に女同士を決裂させる。女の人を区別す...

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対岸の彼女

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商品説明

【直木賞(132(2004下半期))】30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。立場が違うということは、時に女同士を決裂させる。女の人を区別するのは、女の人だ。性格も生活環境も全く違う2人の女性の友情は成立するのか…?【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

角田 光代

略歴
〈角田光代〉1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、「空中庭園」で婦人公論文芸賞を受賞。ほかの著書に「太陽と毒ぐも」「庭の桜、隣の犬」など。

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みんなの評価3.9

評価内訳

紙の本

胸が痛みながらも止まらない。

2008/07/01 21:42

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず最初に感じたのは何と生々しく心が痛くなる作品なのだろうという事です。
しかしあまりにも共感できる二人の現在と過去に読む手が止まらず、痛いなぁと思いながらも一気読みさせられる1冊でした。
しかも女性ならではの陰湿さを包み隠さず、また目を背けたくなる部分を真っ直ぐに見て書いてあるので読むタイミングが悪いとヘコんでしまいそうなんですよね。
でも少々落ち込んでも読む価値はかなりある本です。

学生時代も社会に出てからも大変なのは勉強や仕事ではなく人間関係。
特に女の友情は脆い、そして上辺だけの事が多い。
同じ時間・空間を過ごさなければいけないから必死で一緒にいる仲間を探す。
教室移動や弁当を食べる時に独りになるのが怖いから、周りから浮いて見られるのが怖いからと恐怖から仲間を探してしまう。今思うと毎年毎年一から築き、翌年にはゼロになる人間関係をよく築けたものだとあの頃の自分達の努力に感心してしまいますね。
もし今もう一度あの時代をやり直せと言われたら本当にキツイと感じてしまうかもしれないです。もしくは今なら無理に頑張らずに自分と他人を割りきって楽に過ごせるのか
もしれないのですが・・・。
実際に10代でナナコのように本当に大事なものだけを見つめられる人は少なく、またナナコのように潔く生きれる人も少ない。周りから見られる自分を気にせずにいるのは大人になった今でも難しいものです。人は独りでいることではなく、独りだと思われることが辛いのではないでしょうか。
ナナコが抱えていた闇と葵とナナコが辿りついた先にあったもの、そして葵が異国の地で悟ったものは哀しいけど正しく、辛いけどどこか温かい、読んでいて葵と共に震える
膝を押さえて前に前に進んでいきたいと思わせてくれました。

葵がナナコのように変わっていく姿と、内に篭っていた小夜子が新たな人間関係の作り方を知っていく姿は一言で簡単に言うと「勇気」が沸いてきます。
あぁそうか、そうなんだよねと深く頷いてしまいます。
「対岸の彼女」というタイトルは生き方の違う『対立』する二人を表現しているのかと思っていたらそうではなかったのですね。
「対岸の彼女」は葵でありナナコであり小夜子でもあるし読んでいる自分でもある。
手を振る二人が見え、そこに行こうと思う自分に気付くラストでした。

この本を手にするまでは帯などから「負け犬の遠吠え」みたいな女同士の確執を描いているのかと思っていたのですが、全然違う内容に良い意味で大きく裏切られました。
大人が読んでも、高校生が読んでも共感できる部分の多い本だと思います。
初めてこの本で角田さんの作品を読みましたが凄い作家さんと出会えたことに大満足。

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紙の本

久しぶりに巧い小説を読んだ。しかも、舌を巻くような。

2005/04/21 22:35

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに巧い小説を読んだ。まず、その構成が面白い。
主人公の小夜子は引っ込み思案の主婦。結婚を期に仕事をやめたのだが、やがて幼い娘を保育園に預けて再就職することを決意し、就職先の女社長・葵と知り合う。小夜子とは同い年でしかも大学まで同じだった。葵は小夜子と違って人懐っこく楽天的でバリバリ仕事をこなしている。──そこまでが最初の章で、次の章は高校時代の回想になる。読者は当然小夜子の高校時代だと思って読み始めるのだが、実は小夜子ではなく葵の高校時代である。しかも、最初の章で暗い小夜子と対照的に明るく描かれていた葵が実はいじめにあっていたことが判る。なんとも皮肉な設定である。
そこからは現在の小夜子・葵と高校時代の葵(と親友のナナコ)が交互に描かれる。長らくこの2つの物語がどう繋がるのか判らないまま、それぞれのストーリーは少しずつ進行してゆく。
小夜子の仕事内容は葵の会社が新たに始めた掃除代行業。小夜子の戸惑い。小夜子の仕事に理解を示さず非協力的な夫と姑、ぐずる娘。でも葵との間に結ばれた奇妙な連帯感。一方、転校することによっていじめから逃れた葵はナナコという親友を得る。そして、読者はこのあと淡々と高校生活が綴られるものかと思ってしまうのだが、突如として新たな、そして過酷な展開がある。
このあたりまでは作者が丹念に丹念に1つひとつの構成を考えながら筆を進めているのが読み取れる。逆に言えばそれは、物語の背後に作家の存在を感じさせてしまっているということであり、小説の常道から言えば失敗作である。しかし、ここではその丹念さのためか些かの不自然さも感じさせないどころか寧ろ好感を持たせてくれる。
そして、そんなことを思いながら読んでいるうちに、前述の過酷な展開以降は物語の背後からいつの間にか作家の姿が消え失せてしまい、のめりこむように読み耽ってしまう。──ここらあたりがこの作家の力量なのだろう。終盤は圧巻である。
描き切らず余韻を残した終わり方も良い。タイトルの素になっている最後のシーンも秀逸である。
テーマ自体も読者を勇気づけ元気にしてくれる内容だ。まるで薄い雲の向こうからうっすらと光が射してきたような。
久しぶりに巧い小説を読んだ。しかも、舌を巻くような。
by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

彼女たちの行く末

2005/01/14 11:15

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る

小夜子は三十代の主婦。子供を遊ばせようと公園に行くが、ほかの主婦たちの派閥に入れずにうんざりしている。母親友達もできず、娘のあかりも同じ年の子と仲良くできない。苛立ちから逃れたい彼女は仕事をしようと思い、偶然にも同じ大学の同級生だった葵が経営する会社で働くことになる。

葵は独身で自由に見えたが、そんな葵も高校時代はクラスの派閥からはじきだされまいと必死だった。人の目を気にして、仲間ばすれのターゲットにならないように慎重に気を配っていた。唯一、信用できる友達のナナコはどこの派閥にも属さず、自由に動き回っていた。葵はナナコについていったら、どんなところでも行けそうな気がした。

一方、小夜子は葵といると理解のない夫や姑から解放されるような気になる。主婦である自分も何かできるんだという展望が見えてくる。
あかりに友達ができないのを気にしていたことも、「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」という葵の言葉によって救われる。

世の中に存在する多くの「彼女」たちは、仲間からはじき出されることを恐れ、誰かをけなして自分の位置を確立する。自分で行き先を決めることもなく、その中で漂っている。でも、ひとりがこわくないと思える何かを見つければ、そこから抜け出すことができるのだ。
角田光代はこの物語を通して「彼女」たちに伝えてくれている。いつかあなたたちも自分が選んだ場所に歩いていけるんだよ。こっちの岸に早くおいでよと。

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紙の本

大人になるって...年齢を重ねるってなんだろうか

2012/02/29 20:35

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:のちもち - この投稿者のレビュー一覧を見る

二人の主役、三十路の女性が登場し、それぞれの「過去」を背負いながら「今」を生きていくストーリー。学校生活そして大人になってからの苦悶、あきらめ、追い求めるもの。片や子供がいる主婦、もう一方は独身の女社長。「今」は正反対とも思える同い年の女性二人に共通する「過去」がある。

女子高生、主婦、女社長。まったく自分とは無縁なので、感情移入こそできないけれども、引き込まれました。学生時代にとらわれる人間関係の煩わしさ。卒業したら無縁になると思われた過去。でもそれにとらわれそうになる自分。なんとなくタイプが似ている気がして、深く入り込んでしまいました。

気がついたら大人になっていた。自分の意思、感情とは別のところで行動しなければいけない縛り。自分一人のことを考えていればいい、という環境ではなくなって、でもその「縛り」に身をゆだねている部分もあったり。大人になるってなんだろう。いつから「大人」と言えるんだろう。子供と大人は何が違うんだろう、同じ「自分」であるのに、どこかで線が引かれているんだろうか。

人間関係の煩わしさ、って何歳になってもどんな環境にいても生じること。それは自分とは違う他人と接することだから。もしかしたら、いつの間にか本心からの言葉を口にしなくなっていることが原因ではないかとも思える。相手のことを考えるから?いや、結局は自分のことを考えているんだ。

違う環境で育って、違う道を歩んできた他人とは、やっぱり「言葉」を介さないと分からない。その言葉が原因で袂を分かつことがあったとしても、だ。それが足らずに誤解を生むよりは、本音を物片方がいい場面はあるんだろう。言わないでおく、という行為は、結局自分のことを守っていることになるのかもしれない。

どんな年代でも、知らぬ間にやってくる「孤独感」をひしひし感じます。そしてそれを打ち破るために必要なこと。生きるってなんだろう。時間って何だろう。人生観をも感じさせる内容でした。
二人の語り手とそれぞれの過去の話、4つのストーリーが同時進行しますが、読みづらさは全く感じることなく、「続きがきになる」気持ちで一気に最後まで。クロージングも心地よい。

【ことば】なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

「人間関係」という点で悩み、挫折を重ねた二人が行きつくところ。それはこういう考え方をする自分、だったのかもしれない。学生時代だけでなく、大人だって惑う。「不惑」なんて境地は、ないのかもしれない。

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紙の本

現代に生きる女性必読の作品。

2005/01/31 23:27

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

直木賞受賞作品。現代に生きる女性必読の書である。

昨年ヒットした『負け犬の遠吠え』は、30代以上・独身・子なし女性を“負け犬”という名で呼び、女性の複雑な心理面を見事に観察したエッセイであったが、一方、本作はフィクションである。
角田さんの凄い所はフィクションで描き切れる極限のところまで到達している点である。
前述した『負け犬〜』は滑稽さも混ぜ合わせて語り、いわば“負け犬”に属する読者にエールを贈ってるのであるが、本作の主題はもっと深くて前向きである。
本作はどちらかと言えば、既婚者は独身者に対して、独身者は既婚者に対してそれぞれお互いの認識を深めるのに一役を買っているような気がする。
少し残念なのは本作を販売するにあたり、勝ち犬・負け犬という言葉が氾濫して使われている点である。
出版社の意図なのであろうか…
もちろん対照的な2人を描写することにより、本作がより読者にとって入り込みやすくされている点は否めない。
しかしながら、角田さんの意図とはかなりずれているような気がする。
実際、読んでみて葵が負け犬で、小夜子が勝ち犬だとは思わない。

本作には読まれた方なら誰でも認識できるであろう主題がある。
価値観の多様化しつつある現代において忘れがちな“真の友情”の大切さである。

物語は独身者である“葵”の過去(主に高校時代)と既婚者である“小夜子”の現在が交互に描かれる。
2人の共通点は人づき合いが苦手な点である。
現代においては葵と小夜子は同じ大学出身で30代半ばの設定。
専業主婦に疲れた小夜子は3歳の娘を預け、葵の経営する旅行会社(の中のハウスクリーニング部門)にて働くようになる。

物語の一番のキーパーソンは葵の高校時代の親友である“ナナコ”。
誰もが感じるのは過去のナナコと葵との関係が現在の葵と小夜子との関係に非常に似通っている点。

本作は読者(ここでは女性読者と限定しよう)の過去…それも人生において最も多感な時期の心の葛藤をあぶり出している。
登場人物と同年代の女性が読まれたら、過ぎ去った過去ではあるが、リアルにこの小説で語られているシーンが甦ってくるのであろう。

読者は否応なしに心を痛めつつも“自分の現実を直視せずにはいられない”
男性読者の私が客観的に見て、全体を通してやはり女性世界特有の優越感と劣等感をとっても適切に描写してくれている点は見事だと思う。

読者は本作にて学ぶべき点がある。
たとえば、わたしたちが生きていて、“ああ、あの時もう少し勇気を持って行動すれば良かった”と思うことがあろう。
作中の2人(葵&小夜子)が、読者に代わって演じてくれていると言えよう。

年齢を重ねると人間って変化していくものである。
傷つくのを恐れてはいけない。
“対岸”を渡る勇気さえあれば明日が開ける!
性別問わずとっても普遍的なことであると捉えたく思う。
“人生に勝ち犬も、負け犬もない”…出版社の意図とは逆行してるかもしれないが、角田さんの最も伝えたかったのはこの点であると私は思っている。
 
読後はたしてあなたは対岸で誰の姿を見るであろうか?
小夜子?葵?それともナナコ?
いや、きっと3人とも待ち構えてくれているのであろうか…

心を震わせながらも、読書を終えた満足感が満喫できるこの瞬間。
この切ない気持ちをいつまでも忘れたくないと強く思う。
そのためには本作のページをめくる事から始めなければならない。

トラキチのブックレビュー

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紙の本

直木賞をとってからでは、遅い。そんな感じで慌てて書評を書くことにした。本当はもっと暖めておきたかった本だけど、今を逃したら負け犬になってしまう

2005/01/06 21:19

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

装画 根本有華、装丁 池田進吾(67)。ついでに私が読んだ本で、池田の手になるものは野中柊『ガール ミーツ ボーイ』、山本幸久『笑う招き猫』、瀬尾まいこ『図書館の神様』、森絵都『カラフル』『永遠の出口』など若い作家のものが多い。

早々と脱線してしまうのだけれど、池田進吾(67)の(67)について、私だけではなく実に多くの人が、アレハナニカ?と宇宙人化していて、面白い。私のように池田の年齢と考える人、69のもじりではないかと疑うスケベなおじさん、いや1967年生まれだから、はてはその本のブックデザインにかかった時間だとか諸説紛々で、それに対してあれは「ロクナナ」という事務所名だと応える人がいる。

あんたね、分からんではないけれど、私たちが疑問に思うのは、なぜ( )がついているのか、とか、では77だって88だって、もっと言えば777だって69(我ながらしつこい)だってあるのに、なぜ67なのかであって、それは「ロクナナ」なんて、読み方教わってんじゃあない!っていうの、わかる?

とまあ、ここまで書いたところで内容というか人物紹介。

冒頭、私である小夜子の視点で話が始まるから、この人が主人公、と思ってしまうけれど、読み進むうちにもしかすると、この話はダブル・キャストではないか、そうでないまでも脇役が主役を喰ってしまうってやつ?などと思い始める。その二人に共通するのは、人付き合いが苦手ということ、いや苛めにあっている、だから美人とか可愛いとか、強いとかいうタイプでは全くない。

最初に登場する一人は、私。田村小夜子、30半ば。大学の英文科卒業後、映画の配給会社に勤務。社内での女性たちの愚にもつかない話や派閥に嫌気がさし、夫である修二からのプロポーズを機に早々に退社。娘あかりを産んだのが3年前。人付き合いが苦手な性格もあって未だに公園デビューが出来ず、今は公園ジプシーをしている。義母の一方的なものいいに対して、ストレスもたまり、一ヶ月前、夫に働きに行きたいと告げる。この修二という男、はっきり言って屑である。

もう一人は、小夜子を雇うようになるプラチナ・プラネットの女社長・楢橋葵。会社といっても旅行関係の便利屋と思ってもらえればいい。そして小夜子には新規の掃除関係の仕事をやって欲しいと思っている。小夜子と同い年で、同じ大学の哲学科出身ということもあり二人はすぐに打ち溶ける。そんな彼女も大学まで学校に馴染まず、中学卒業とともに神奈川県横浜市磯子区から、母の実家の群馬に引っ越している。父は真面目なタクシー運転手、一方、母は故郷を馬鹿にしパート探しに余念がない。

もうこれだけでいいだろう。おっと忘れていた魚子がいる。魚子と書いてナナコとよむ葵の同級生は、二人の主人公すら飲み込んでしまうほど魅力的だ。

話は現在と過去、小夜子と葵の間を行き来しながら、現代における、あるいは人間社会がある限り存在する問題を浮き彫りにしていく。上手いなあと思う。こういう作品に出会うと、重松清『いとしのヒナゴン』なんて、所詮は作為が一杯で、作者の志の低さはコミックス以下だよな、などと悪口が言いたくなる。さほどに、角田描く女性たちの関係はリアルなのだ。

ふと私は喜国雅彦『本棚探偵の回想』を思い出す。著者名別の書棚の「か」のところに伝奇小説作家の角田喜久雄の本があるのを見つけ、ひそかに「つ」の棚に移し替えていく。そして、同じようなことを何軒か繰り返した本棚探偵は、角田光代の本を見つけ思わず角田喜久雄の横に並べようとする。うーん、この顛末は『本棚探偵の回想』をどうぞ。

さあ二人の似通った同窓生が、いかなる結末を迎えるかを楽しんでもらおう。私は躊躇いなく、この本を人付き合いが苦手な長女に廻すことにした。できれば、水泳少女であった次女にも読んでもらいたい。ここには生きた人間が、確かにいる。

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紙の本

女の友情

2004/11/20 22:38

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

—「女の人を区別するのは女の人だ。既婚と未婚、働く女と家事をする女、子のいる女といない女。立場が違うということは、ときに女同士を決裂させる」
「負け犬の遠吠え」の亜流を思わせる帯の文句につられて本書を手にした方は、気持ちよく裏切られるだろう。
本書は立場の違う女同士の確執を書いた本ではない。
真の友情とは何かに深く迫った1冊だ。
今、最も脂の乗っている作家と言ってもいい角田光代は、本書で大きな賞をとるのも夢ではないだろう。

まず、構成が秀でている。
専業主婦である田村小夜子が働き始める〈現在〉の章と、小夜子の上司である楢橋葵の高校時代を描いた〈過去〉の章とが交互に現れる。
この章立てが読者をぐいぐいと作品世界に引き込んでゆく。

3歳の一人娘を持つ専業主婦として鬱屈した日々を送っている小夜子は、一念発起して、便利屋とも言える小さな旅行代理店の面接を受ける。
その会社の女社長・楢橋葵と意気投合し、掃除婦として採用になる。
豪快で、小さなことにこだわらない葵は、人と関わりあうことを避けている小夜子にとって眩しい存在だ。
が、その葵は、中学時代いじめを受け、引っ越した先である群馬の女子校でも、ただただ人の顔色ばかり伺って過ごしていた。
唯一の友人は、決してネガティブにものごとを捉えず、どこのグループにも属さない野口魚子(ナナ子)。
それまで友達のいなかった葵にとって、ナナ子は「きれいなものばかりを見てきた」ように思わせる女の子だ。が、実はナナ子も暗いものを抱えていることが徐々に明らかになっていく。

初めは、おやっと思った。
高校時代の葵は、まるで〈現在〉の小夜子のようであり、〈現在〉の葵は高校時代のナナ子のようである。
うじうじした〈過去〉の葵が、どうやってナナ子のようなキャラクターになってゆくのか、それが知りたくて、ページを繰る手が止まらなくなる。

高校時代の葵とナナ子は、学校の残酷さと家庭の窮屈さから、逃避行を企てる。
生活力のない少女2人が寄り添って過ごす痛々しさに、手を差しのべることのできないもどかしさを感じると同時に、お互いを思う無鉄砲なひたむきさには憧憬の念すら覚えた。
「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事」と、〈現在〉の葵は語るが、そのことを教えてくれたのは、他ならぬナナ子だろう。
ある事件をきっかけに2人は会えなくなるのだが、葵にとってナナ子は、会わなくてもいつまでも心に住み続ける存在だ。
なぜなら大事なことを彼女が教えてくれたから。

葵の過去を知った〈現在〉の小夜子は、一つの事実に気づく。
それは、世の中には二通りの人間がいる、ということ。
そしてその二つは、大きな川で隔てられているということ。
川の向こう岸には、人は皆違うと分かっている人々、一人でいても平気な強い人々、意味のない過去などないということに自覚的な人々、が住んでいる。
そこでは真の友情を育むことができる。
川を渡るには、ときに大きな犠牲を払わなければならない。現在の生活を変えてしまうくらいの。
でも、小夜子は渡ろうとする。
川の向こうでは彼女たちが待っていてくれるから。
彼女たちに少しでも近づきたいから。
—本書の最後の場面をこのように解釈した。
美しく、懐かしい気持ちにさせる名場面として、忘れられないものになるだろう。

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紙の本

セピア色だけど鮮明な記憶。

2007/06/14 03:13

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 角田光代が直木賞を受賞したのはいつの事だっただろうか。
 私は読書生活の上でこだわっている事が一つある。直木賞受賞作を読破していくということだ。あれほど有名で、大きな賞を受賞するのだ、そこには読者の心を突くような、動かすようなことがあるはずである。なんて勝手に思っているのだ。
 兄がまだ、ニューヨークに居た頃に一緒に見た「情熱大陸」という番組で、角田光代が取材を受けていたのを見てから、本書を手にした。彼女のポリシーに感心したからだ。もうあの番組を見たのはだいぶ前の事なので内容はうろ覚えだが、格好良いという印象を持ったことを覚えている。そんな彼女が紡ぎ上げた作品だ。とても楽しみに読み始めた。
 主なキャラクターは二人で、一人は変わった会社の社長で、一人は一般的な家庭の娘を持つ主婦。二人のストーリーが交互に進行していく。女社長と言っても飾らない、こざっぱりとした人で、家事の毎日で刺激のない日々に少々嫌気が差してきた主婦の興味をそそる。だけど、一緒に仕事をしていく上で、その女社長の過去には苦い事情があると知る。
 中高生の時代というのは、概してそういうものではないだろうか。ちょっと普通(この場合の普通は周囲の人間を示す)よりも仲の良い男子同士や女子同士を「同性愛」と称してからかう。普通よりも兄弟姉妹や父親母親を慕っていれば、ブラザーコンプレックスやシスターコンプレックス、マザー・ファザーコンプレックスとレッテルを貼る。元々、こうして人をとあるグループに分けて見るというのは、大人社会の事だ。個性を長所としてとらえるのではなく、摘み取ってしまうケースも多々ある。
 だけどこの女社長のケースは、根も葉もない事が周囲に知れて、両親を落胆させ、ニュースにもなった。事情を知らない人々が大げさに騒ぐ。
 そして女社長はパートとして面接を受けに来た主婦を、以前の自分の姿と重ねて見えてしまう。人と巧くコミュニケーションが取れない、人と関わる事を得手としない、そういう性格。それらを克服しての、女社長の性格である。
 明るく人当たりの良い人程、過去に辛い思いをしていたりすることがある。辛い経験は人を柔軟にしたり、優しくしたりする。経験の分だけ理解できる範囲が広がっていくからだ。
 そんなふうに、本書を手にした事で人の在り方であったり、大人の心情であったり、過去の経験だったり、思い起こすきっかけとなった。とても有意義な、一冊だ。

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大人になるのは何のため?

2006/01/26 09:40

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つな - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私たちは何のために年を重ねたのか。何のために大人になったのか。
 大人になったら、子供の頃の悩みは全て払拭され、新しい自分、新しい周囲に恵まれるのだろうか。決してそうではない事を、大人は知っている。子供の頃悩まされたような人は、ある程度の集団になればどこにでもいるものだし、集団であればそこには派閥も勿論存在する。この本の小夜子のように、内気な自分に悩んだ子供時代を、自分の子供に重ねてしまったりもする。
 どこの集団にも馴染むことが出来ず、娘のあかりにもなかなか「お友だち」が出来ない小夜子は、公園ジプシーとなって日々を過ごしていた。この閉塞した状況を抜け出すため、彼女は外の世界に職を求める。自分が外で働き、あかりを保育園に預ける事が出来れば、あかりにも友だちが出来るのではないか?尖った声であかりを叱り付ける事もなくなるのではないか?
 私たちは何のために大人になったのか。
 物語は二つの時間軸で進む。その一つは、小夜子と、彼女が勤めることになった、「プラチナ・プラネット」の女社長・葵の上を流れる時間。もう一つは、葵の高校時代、葵とナナコの上を流れる時間。
 理解のない夫、姑に囲まれた小夜子、横浜の中学校でいじめに遭い、群馬の田舎町の女子高生となった葵。両者に共通するのは、どこにも行くことが出来ないという閉塞感。それでも、小夜子は大人であり、高校時代の葵は当然子供である。
 私たちは何のために大人になったのか。
 専業主婦となり家に入る前は、映画配給会社で所謂「クリエイティブ系」の仕事をしていた、小夜子の今度の仕事は肉体労働の清掃業。いじめに遭ったせいで、どことなく警戒心が抜けない葵の心にするりと入り込んできたのは、天真爛漫に見えるナナコ。さあ、二人は外へと脱出することが出来るのか。
 何を言われても、こんな所に自分の大事なものはないのだから。嫌なら関わらなければいいのだから、という高校時代のナナコの言葉も真実だろう。子供時代の防御壁としては特に。けれども、騙されても信じる事を選び取ることもまた真実であり、迷惑を掛けてはいけない、文句を言われないようにと、一人で背負い込む事をせずに、人と関わっていく生き方もある。年を重ねるのは、人と関わり合う事が煩わしくなった時、都合よく生活に逃げこむためではないはずなのだ。
 大人になるという事は、年を重ね、それぞれ違う場所に立つという事でもある。しかし、違う環境、立場にいる人であっても、全く別のルートから同じように苦労しながら、同じ一つの丘を登ってきたのかもしれない。違う場所にいても、違うものを見ていても、それは「変わって」しまう事と同義ではない。そして、大人になった私達には、足がある。選んだ場所に行くことの出来る足がある。

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女同士の友情

2005/10/13 08:42

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くえすと - この投稿者のレビュー一覧を見る

女同士の友情というのは、立場が違うだけですぐに壊れてしまうものだ。読んだ人はまずそう思うだろう。学生時代では、すぐに少しでも考えが違ったり、性格が違ったら仲間はずれになるし、大人になっても、富の差や子どもの教育方針などが違うだけで、すぐにお別れ。現に、女の友情なんてこんなに薄っぺらいものなのだ。
主人公は二人というべきか。小夜子と葵。それぞれの視点で交互に物語が進行するちょっと変わった構成だ。二人の子供時代と今の二人。ふたりは対照的な性格だけれども共通の悩みがある。それを埋めるかのように二人は出会い、そして・・・。立場も性格も違う女同士が仲良くなるのは難しくないだろうか?だけれども、二人は違った・・・。それがどう違うのかが、この物語の最大の面白さだ!

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紙の本

構成が素晴らしいですね

2005/05/19 21:39

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけくん - この投稿者のレビュー一覧を見る

とても読むのがつかれました。って退屈だったっていう訳ではないですよ。章が過去と現在を交互に行き交う構成となっています。しかも過去は葵をメインにナナコとの絡みを中心とし、現在は小夜子をメインに葵との絡みを軸としてます。つまり現在と過去との中心人物が置き換えている事で、変にズレたり、重なったりで頭の整理も大変でした。
段落の中心に置かれた過去の葵と現在の小夜子が実は非常に近かったのでは、と感じました。読んで行くなかで、もしかすると小夜子も・・・してしまうんでは!何て想像もしてました。
小夜子が最後に歳を重ねる意味の答えを見付けてくれて良かったです。
「対岸の彼女」というタイトルにある対岸の間には、時代という川が流れていたのですね!

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2005/05/27 22:16

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2005/01/14 18:12

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2005/02/10 19:46

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