十九世紀の聖夜 ＨＩＳＴＯＲＩＣＡＬ （クリスマス・ストーリー 四つの愛の物語）

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投稿者：佐伯洋一　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　本書はロマンス小説の権威として世界的に名声を博しているハーレクイン社の本。　
　本書で特筆すべきは、その心理描写の巧みさである。刻々と変化する主人公の心理描写を的確に表現するその技巧は、近年日本でもあまりお目にかからなくなってきた。

　本書は４つの個別の作品が収録されている。「クリスマス・ローズを探して」「金の星に願いを」ほか二作品。内容は、展開にドキドキしながら読むもの、究極の選択を迫られる主人公に共感してしまうものなど、多様である。が、基本は恋愛である。ただ、韓国ドラマのように単純明快なストーリーではなく、酸いも甘いもといった感じがする。

　ハーレクイン社は、世界中の、とくに大人の女性に絶大な支持をされている。確かにストーリーを見ると、若者というより、人生経験がある程度豊富な方のほうが楽しめるような感じがする。無論、気軽に若い方が読むにもまったく不都合はない。
　
　２００４年も年末に近づいてきた。ヨーロッパやアメリカでは、この季節になると、クリスマスを念頭に置いた恋愛物が多く出版される。彼らにとってクリスマスはやはり特別なのだろう。日本人の場合、大晦日の鐘でも思い出す方が多いかもしれないが、いずれにせよ年末は他の季節とは違う荘厳な雰囲気がなんとなくする方が多いのではないか。本書も、クリスマスの季節を髣髴とさせるような風景描写が巧みになされており、それだけで東洋人の我々も感じるところがあるのではないだろうか。

　風景描写は読後もうっすらと頭に残っており、読書後は非常に充実した感慨が余韻として残っている。こういう本は、やはり全世界共通に訪れるこの年末の季節に読んでこそ真価を発揮する。年始に読むより何ともいえない感慨がある。年末に向けて、本書はまさにタイムリーな本といえる。来年末まで待つのはあまりにもったいない。