紙の本
日本のソフトパワーの可能性とは?
2009/01/11 14:36
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブッシュ政権からオバマ政権に変わる時代の境目を意識して読んでみた。 また著者が駐日大使になるとも取りざたされている。
まず ソフトパワーもハードパワーも「パワー」であることには変わらない。著者のナイは「パワー」の行使と それによる米国の国益増加を目指すという点では ごく普通の米国の政治家であるということだ。従い 例えば ソフトパワー以上の新しいパワーが仮に出てきたとしたら 彼は そちらに乗り換えるであろうという点は 本書を読むに当たって どこかに覚えておくべきだとは思う。「パワー」の性格が「ソフト」なだけである。
次に 確かに ソフトパワーの力は強く感じる。多くの人にとっての「米国」とはマクドナルドであり ハリウッドであり メジャーリーグであるのだ。もうすぐ I Podも それに入るかもしれない。
そうやって 自分の身の回りにある「米国」は 非常に魅力的であることは否めない。個人的には 最近のハリウッドの映画の質の低下を憂慮しているが それでもハリウッド無しの映画業界も想像出来ない。
そう考えると 日本のソフトパワーも なかなか可能性がある点は 本書でナイが幾度か指摘している通りだ。日本人の自然観などは 既に 公害防止技術などにも大きな影響を持ってきたとも聞く。21世紀が環境の時代だとしたら 日本の技術と それを支える「考え方」とは 大きなソフトパワーになれるべきである。
ということで大変参考になった
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現代の国際政治では、ハードパワーと同時にソフトパワー(文化など相手を惹きつける力)が重要度を増してきているという話。読みやすい。
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著者はクリントン政権で国防次官補を務めた米国を代表する安全保障の専門家である。今日のアメリカはハード・パワーばかり多用しすぎているとし、ソフトパワーとハードパワーのバランスのとれたスマート・パワーを行使するべきであるとしている。そして、米国のみならず世界の国々はソフト・パワーを多用するべきであるとしている。
アジアにおける日本のソフト・パワーは大きいものある。しかし、それをより有効に多用することが必要である。例えば歴史認識に対する日本の態度は近隣諸国に対する日本のソフト・パワーを著しく損なっていると著者はしている。
仮に日本が安保理入りに象徴するように世界における確かな地位を築きたいなら、米国に対するだけでなく、広く世界に対してソフト・パワーを行使する必要があるのではなかろうか?現在の日本外交にはその力の有効なしようができていない気がする。
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ソフトパワーとは物理的、数値的な力、ハードパワーに対置される概念で、心的影響力とでも言うべきもの。
この概念は、非常に曖昧で拡大解釈が可能なものではあるが、文化価値による好意の醸成力、という点に絞ってみると、それが日本の最大の武器である事は容易に理解出来る。
ひとつ言えるのは、好むにしろ好まざるにしろ、世界で栄誉ある地位を占めるには、何らかの方法による「征服」「寡占」という、好戦的手段が必要な点であること。
それがハードにしろ、ソフトにしろ、無為は許されない。
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力(パワー)には2種類ある。軍事力や経済力の威嚇や報酬によって他国に政策を変えさせるハードパワーと、魅力によって自国が望む結果を他国も望むようにする力であるソフトパワーである。変わりゆく世界に対応するためにはこの両者をうまく組み合わせる必要がある。ところが、現在のアメリカの政治指導者の一部はこのソフトパワーこそが9.11後の世界で重要な役割を果たすということを理解していない。ところで、このソフトパワーの源泉を生み出すのは価値観である。世界的な情報時代においては、民間の源泉が重要になり、他国にも目を配った広報外交が重要になってくる。さらに国際機関や国際体制といった多国間主義によってこのパワーを強めることができるが、政策が偽善的、傲慢だなどとみなされればたちまち損なわれてしまう。今のアメリカがまさにそうであり、これを克服するためには外交政策のスタイルと内容の調整が必要とされる。そしてジェファーソン主義を強調する一方で、単独行動のジャクソン主義を抑え、そこに現実主義を組み入れる必要がある。
細部にかなり疑問を持ったものの、全体としてはアメリカの立場に立って考えると「なるほど」と思える著作であった。強硬手段に訴えていてばかりでは(ドラえもんの)「ジャイアン」で終わるだろう。自分たちの主張にすんなりと納得してもらえ、しかも自分たちが望む結果に向けて協力してくれるよう他国を動かすためには「魅力」が必要である。強硬手段志向の現在のアメリカにたいする警告としてはなかなか説得力があるように思われた。しかしながら、「魅力」さえあれば他国は自分たちの主張にすんなりとのってくれるのだろうか?今回のレポートではこの本にも度々登場したイラク戦争をもとに、このことについて考えてみたい。
「魅力」を文化や政治的価値観、外交政策だとするのであれば、ある程度までアメリカは成功していると思われる。著者も書いているようにアメリカの大衆文化は世界各地に受入れられているし、価値観としての「民主主義」や「人権擁護」、「対テロ戦争」も今となっては多くの国々や人びとに支持されている。唯一、著者も言っているように「アメリカの大衆文化は世界の若者に広く受入れられているかもしれないが、アメリカの外交政策が不人気」(p.197)であるとしても、その原因の多くは他国を考慮しない強行的な単独行動主義にあるといえる。
ところで、この単独行動主義をさえ克服すればアメリカの好感度もすぐに上がって、行動決定において賛成票を多く得られるのかといえば、微妙なところである。確かに多国間主義で行動すればアメリカの好感度は上がることは間違いなさそうだが、好感度が上がれば賛成票も多くなるという比例式は成り立ちそうにもないだろう。つまり、「魅力」さえあればその主張の是非を問われることが少なくなって主張も通りやすくなるということは必ずしもいえないのである。もちろん「魅力」はないよりはあったほうが、著者も言っているように主張が通りやすいのだが。
そこで、「魅力」に加えて、行動への客観的な正当性(もっとも「客観的」という言葉自体がひとつの論点であるが、ここでは「国連加盟国の大多数から賛���を得ることができること」とさせていただきたい。また「多数が必ずしも正しいとは限らない」という議論もあるが、とりあえずここでは割愛させていただくことにする。)を得ることが重要であるように思われる。つまり、イラク戦争の場合でいえば実際に大量破壊兵器を見つけ出したり、フセインとアルカイダの関係等を国際社会に納得するように、明確な証拠を示したりすることが必要であった。国連で多くの国がアメリカに賛同しなかった理由は行動への客観的な正当性である戦争の大義があいまいであり、朝令暮改であったからである。そしてこのような傾向が今後のアメリカの政策に引き継がれていくのであれば、何かの決定においてやはり多国からの賛成を得ることができず、単独行動主義だといわれざるを得ないのであろう。
したがって、今回のイラク戦争についていえば、アメリカにソフトパワーが足りなかったから国連で支持を集められなかったのではなく、むしろ戦争の大義そのものに問題があり、行動への客観的な正当性がなかったから多くの国が反対したのだといえるだろう。言い換えれば、ソフトパワーを得られれば支持も集まるという等式はそれだけでは成り立たず、行動への客観的な正当性が加わって初めて成立するものであるという点において、ソフトパワーにも限界があることがいえるのではないだろうか。
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世界で初めてソフトパワーという言葉を使った人物が書いたソフトパワーについての本。日本は世界有数のソフトパワーの発信国なのだからそれを国策として外交上に生かせられると強くなると思う。
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国家間の競争や対立は、軍事力や経済力だけでなく、イメージ、信条、共感などの感覚的領域にまで及ぶことを著した、現代リベラリストの第一人者による代表作のひとつ。
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普通「外交」と聞くと、国同士が軍事や経済力などあらゆる力を使って、自国にとって有利となるような行動を相手国にとらせる手段を指す。これはハード・パワーと呼ばれる。アメリカはイラク戦争でこのハード・パワーを駆使した。その一方この対局に位置する外交もある。想像してほしい。コラ・コーラ、リーバイスのジーンズ、Michael Jackson、iPod、ハーバード大学、シリコンバレー・・・。こうしたアメリカの文化は各国の人々を惹きつける。一度は行ってみたい、留学してみたいと思わせる。このように、こちら側から強制的に働きかけなくても、相手国がそうしたいと思わせる力、これをソフト・パワーと呼ぶ。そしてこの本では、ソフト・パワーの説明からアメリカ、アジア各国での事例が示されている。幸いにも著者ジョセフ・ナイ(ハーバード大学ケネディ・スクール元学長)は日本には潜在的なソフト・パワーが多く存在することを指摘していふ。これを如何に世界に表明していくか。スイスやイタリアのように軍事ではなく文化で世界を魅了する国になるチャンスが、日本にはある。
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ソフトパワーとハードパワーについてのみ主に言及。
それに加え統制力、リーダー力についての叙述もあれば直良かった。
統制力とかいうのも、ソフトパワーになるのかな。
ソフトパワーは人間しか持ちえないパワー。やはり人を動かすには
人間力が必要不可欠なのだろう。
ハードが先かソフトが先かということにおいては、やはりハードが整って
からソフトをさらにどんどん磨くべきだと思うのだが、この本を読んだ人はどう考えているのだろう。
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日本の事例にも言及があって、読み進めやすかったですが、良く分かったかと言うと、そうでもありませんでした。
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シンガポールの外務省が推進するSoftpower戦略部、”Japan Creative Centre”訪問前の勉強として読んだ本。
でも、あんまりピンとこずに1/3程度で辞めてしまった。ソフトパワーの背景の話を知るには良いけれど、実例を知りたい用途には合わない。
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21世紀の国際政治において重視されるであろう力「ソフト・パワー」に関して書かれた本。軍事力や経済力といったハード・パワーでは伝統的な安全保障には対応できたが、グローバル化が進む世界においてのテロや伝染病といった人間の安全保障には対応できない。しかし、超大国アメリカは広報外交よりも軍事力を重視する姿勢は改めない。そこに警鐘を鳴らし、ハード・パワーとソフト・パワーをバランス良く組み合わせることがこれからの外交政策において重要であると主張されている。
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ソフト・パワーとは自国が望む結果を他国も望むようにする力であり、他国を無理矢理従わせるのではなく、見方につける力である。ソフト・パワーの源泉には主に三つあり、文化、政治的価値観、外交政策である。ソフト・パワーの源泉はハード・パワーの源泉と比べて、時間がかかり、効果が拡散し、活用するのが難しい。
広報外交には三つの側面があり、日々の情報提供、戦略的情報提供、奨学金や交換留学によって外国の主要な人物と永続的な関係を長年に渡って築いていくことである。
平和の時期に勝利を収めるにはソフト・パワーが不可欠であり、ハード・パワーとソフト・パワーをうまく組み合わせる方法を学びスマート・パワーになることが重要。
日本はソフト・パワーの源泉を多く持っているが、政策面での望む結果を得るという意味でのソフト・パワーを十分に獲得できていない。情報時代の今日では、非政府組織のソフト・パワーも強まっていく。
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2004年に出版された本なので2013年現在状況は大きく変化していることを念頭に置いて読まなければならない。軍事力、経済力のような強制力をもつ力をハード・パワーと呼ぶのに対し、魅力やイメージで目的を達成しやすくする力をソフト・パワーと呼ぶ。ソフト・パワーには主に三つの源泉があって第一が文化、第二が政治的な価値観、第三が外交政策である。文化は政府がコントロールできない。政治的な価値観は民主主義や国際協調に対する考え方。第三の外交政策は政府が関与できる源泉だ。ソフト・パワーがなぜ重要かというと21世紀に入り世界は三次元構造になっているからだ。最上層は軍事力、経済力の層だが、最下層は多国籍関係で軍事力、経済力では解決が困難な問題がある。中東の反米感情などはソフト・パワーが解決の重要なカギになる。
アメリカ中心で話が進むため身近な問題としては捉えづらい。ソフト・パワーは無視できないとは思うが具体的な解決策に乏しい。筆者はアメリカ政府はもっと世界の国々と相互理解を深めるなければならないとして文化交流、教育交流にもっと力を入れるように提言しているがどれほどの効果があるのか分からない。ソフト・パワーは目に見えず、測ることもできないため抽象的な話になりがち。アメリカ至上主義的な面にある。
9.11でアメリカの世界認識は激変したのだと改めて認識した。自分は9.11以前の情勢はよく覚えてないしそもそもあまり知らないので一度調べてなければ。最後に、第五章で日米安保条約が保たれている要因は日本人がアメリカに好感をもっていてソフト・パワーが働いているから、という主張がなされているが大いに疑問。
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名著と言われているが、文化とか人の交流が大切だという当たり前のことが書かれているだけ。高級な本だと考え、気張らず楽に読めばいい。
ソフト・パワーは、市民の生活にも応用できる。人間的に魅力のある人がやはり強いだろう。
著者は、たびたび日本について言及しているが、その洞察が甘いのではないかと思う。