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文庫

紙の本

売り渡された娘 (ハーレクイン・ヒストリカル文庫)

著者 サリー・チーニー (著),西田 ひかる (訳)

売り渡された娘 (ハーレクイン・ヒストリカル文庫)

税込 748 6pt

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評価内訳

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紙の本

売り渡された少女の運命は。19世紀中期の英国が舞台のロマンス。

2005/02/21 05:28

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:三度目の正直 - この投稿者のレビュー一覧を見る

まさかこんなに大がかりなストーリーが用意されていたなんて、誰が予想できただろう。読み始めの時点では全く予想していなかった展開の意外さに驚き、またその分得をした気分にもなった。

本書は後見人と被後見人のロマンスを描いた作品。
裏表紙のあらすじだけを読むと、タイトルも手伝ってか、少女がとても酷い目に遭わされる少し猥りがましい内容のような感じがして読むことをためらいそうになるが、なんのなんの、中身は起伏もありとても構成のいい秀作。ちなみに原題は『The Wager』。西田ひかるさんによる訳も滑らかで読みやすくとても良い。


19世紀中期のイギリスが舞台。ヒロインは16歳の孤児マリアン。
彼女は、後見人のホラスから突然、ピーター・デズモンドという紳士の家で暮らすように言われる。ホラスは賭博でお金が尽きるとマリアンを賭けてしまったあげく負けたために、マリアンの後見人の権利が彼からピーター・デズモンドへと移ったのだ。
そんなことなど何も知らないマリアンは、よく事情が飲み込めないものの、それまでひどい生活を送っていたのでホラスの家から出られることに喜びを感じた。そして彼女は、ピーター・デズモンドをきっと親切な老紳士に違いないと思い込んでいた。ところが実際に会い、ピーターが若い男だったことに驚くとともに、自分が彼の家に住むことの意味が分からず戸惑う。

一方、ピーター・デズモンドは、ホラスがやっている”商売”からマリアンを高級娼婦だと思い込んでいた。ところがマリアンに実際に会って際どいところで誤解だったことに気が付く。そして法的に本当の意味で彼女の後見人となってしまった彼は、今後の彼女の身の振り方をどうするべきか頭を悩ます。


最初の誤解が原因で二人の間には気まずい以上の雰囲気が絶えずゆらゆらしている。そして誤解が解けたと思いきや、さらに新たな誤解を招いたりして、二人の距離はちっとも縮まらないし、ハーレクインはハッピーエンドがお約束だと分かっていても、本当にこの二人はそこまでたどり着けるのかと心配になったほど。けれど、非常にじっくりと時間をかけて進むロマンスは、その間の二人の心情も丁寧にじっくりと描かれているだけに読み終えた時の充足感も大きかった。

そして注目すべき点は、学校が舞台として盛り込まれている点だろう。ここまで学校の様子が描かれた作品は他のヒストリカルシリーズ作品にはあまり見られないので珍しいのではと思う。マリアンの女子寄宿学校での生活、そして大学。女性が大学に進学するなんて普通では考えられなかった時代なのでその分余計に興味深かった。高く評価したい点だ。
それから、手に汗握るような命がけの救出劇や脱出劇までも盛り込まれてある。本当に内容が充実していて読みごたえのある秀作だ。

著者のサリー・チーニーは、この作品の前にもヒストリカル作品を4作品発表しているが、残念なことに日本語に訳されたものは現在この一冊しかない。いつか他の作品も日本語に訳されることを願うばかりだ。

また、本書と同じように後見人と被後見人のロマンスを描いた小説というのは結構あり、ヒストリカルシリーズでは他に、ミステリー要素を含んだ傑作アン・アシュリー著の『わたしだけの後見人』などがある。入手しにくいかもしれないが、興味のある人は本書と読み比べてみるのもよいかと思う。

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