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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2004.5
  • 出版社: 東京創元社
  • レーベル: 創元推理文庫
  • サイズ:15cm/382p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-488-56001-6
文庫

紙の本

トマシーナ (創元推理文庫)

著者 ポール・ギャリコ (著),山田 蘭 (訳)

●伊藤遊氏――「死んだトマシーナと入れ替わるようにして、猫の女神バスト・ラーが現れるあたりから、ストーリーは謎めいてくる。動物好きにはたまらないファンタジーだ。」(朝日新...

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トマシーナ (創元推理文庫)

税込 946 8pt

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商品説明

●伊藤遊氏――「死んだトマシーナと入れ替わるようにして、猫の女神バスト・ラーが現れるあたりから、ストーリーは謎めいてくる。動物好きにはたまらないファンタジーだ。」(朝日新聞2005年5月8日)
●河合隼雄氏――「ポール・ギャリコは「ものがたる」ことの名人であり、本書は彼の傑作のなかの傑作ではないかと思う。」(解説より)

スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。獣医でありながら動物に愛情も関心も抱かない彼は、幼い一人娘メアリ・ルーが可愛がっていた猫トマシーナを病気から救おうとせず、安楽死させる。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、トマシーナに新たな魂を与え、二人を変えていく。『ジェニィ』と並び称される猫ファンタジイの名作を瑞々しい新訳で。解説=河合隼雄

*朝日新聞2005年5月8日の読書欄「ファンタジー行きて帰りし」で作家・伊藤遊氏が紹介。「ペットの記憶と少女の心と」【本の内容】

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みんなのレビュー42件

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評価内訳

紙の本

大切なことがいっぱい詰まった名作。1000年読み継いでもらいたい。

2011/10/10 07:20

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ずいぶん前に書かれた本だけれども、100年、いや1000年読み継いでもらいたい名作。

かの「ジェニィ」を大叔母に持つ由緒正しきトマシーナは、気高くも慎み深く礼儀正しく、猫の良いところをギュッと濃縮したかのような愛すべき雌猫。
「ですます」調で丁寧に話し、飼い主宅への宿賃として献上するネズミを捕獲する手段を、何日もかけて用意周到に実行する辛抱強さとアタマの良さも兼ね備えている。そして世話になっている家の娘メアリ・ルーに、自分の計画を邪魔されあちこち引っ張り回されたりしても文句も言わずに大人しく従っている。トマシーナはメアリ・ルーのお守り役も果たしているのだ。

けれども、一家の主であるマクデューイは、そんなトマシーナには目もくれず、トマシーナの素晴らしさに気付きもしない。
むしろ、彼が唯一溺愛している娘のメアリ・ルーが、自分よりもトマシーナにべったりであることを快く思っていないフシがあり、トマシーナを邪険に扱ったりする。
そんなマクデューイの職業はなんと獣医。
本当は人間のお医者さんになりたかったのだが、獣医だった父親の跡を無理矢理継がされた形であるため、獣医の仕事には全く熱意を持っていない。むしろ最愛の妻を動物からの病気感染で亡くしてからは、彼の動物嫌いには益々拍車がかかり、少しでも治る見込みがないと診断した動物は、飼い主の気持ちも考えずさっさと安楽死させてしまう始末。

そして運命の日。
憐れトマシーナは、多忙なマクデューイのおざなりな診断で「髄膜炎でもう治る見込みがない」とあっさり安楽死させられてしまうのだ。
その日からすべての歯車が狂ってしまった。
トマシーナはただの猫ではない。幼くして母親を亡くしたメアリ・ルーにとっては母親であり姉であり大切な友達。かけがえのない存在だったのだ。
メアリ・ルーは、トマシーナを手厚く葬ると同時に、敬愛していた父親も心の中で殺してしまった。それは彼女にとっては自分自身をも殺すことと同義の行為であった。
最早生きる希望のすべてを失ってしまったメアリ・ルーは、食べ物も受け付けず次第に衰弱し、やがて死を待つばかりとなってしまう。

無神論者で傲慢だったマクデューイの苦悩がここから始まる。
牧師である友人のアンガスとの非常に有意義な対話にも、心を動かされはしても道を拓くことはできない。
医者にも匙を投げられてしまう。

転機となったのは、人里を離れ、森に住む"魔女"と噂されるローリーとの出会い。
彼女は自然を愛し動物を愛し、傷ついた生き物を優しく癒す。
彼女と触れ合う中で、マクデューイは長い間閉じていた目と耳を開かれ、次第に大きく変わってゆくこととなる。

祈ることを知る

生かされて今が在ることを知る

しかしもうすべては遅過ぎるのか…。


クライマックスは、まさかの大ドンデン返しに震えるほどの驚きと大感動の嵐。
ファンタジーと現実の見事な融合に大いに魅せられた。

猫が好きならもちろん、猫が好きではない人も楽しめること請け合い。
もう一匹の主人公ともいえる神様猫「タリタ」こと「バスト・ラー」の、神秘に満ちた語りと共に、その豊かで示唆に富んだ魂の物語を、じっくりと堪能してみてほしい。

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紙の本

父親はつらいよ

2005/06/20 11:37

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カワイルカ - この投稿者のレビュー一覧を見る

ポール・ギャリコの猫物といえば『ジェニィ』が思い浮かぶが、こちらは同じ猫物といっても父子の危機をテーマにした現実に起こりうる話である。これを生真面目なリアリズムではなくて、ファンタジーにしてしまうところがすごい。三人称の語りとトマシーナを語り手にした一人称の語りを使い分けているのは効果的だし、人物描写や終盤のハラハラドキドキさせる展開なども、さすがにポール・ギャリコと思わせる上手さだ。
スコットランドの片田舎で獣医師をしているマクデューイは妻を病気で亡くし、生き甲斐は幼い娘メアリ・ルーだけ。そんな彼は、メアリー・ルーが可愛がっていた牝猫のトマシーナが病気になったとき、あっさりと安楽死を選択してしまう。それ以来父親とに心を閉ざし病んでいく娘にマクデューイは心を痛めるが、手のうちようがない。ひょんなことから魔女と呼ばれているローリという娘に出会ったことから、頑なな父親の心が変化していく。
マクデューイ氏は「誠実で、率直で、公正な人間」だということは誰もが認めるところだが、決して町の人々から良く思われているわけではない。もともと医者になりたかったので獣医の仕事に満足しているわけではないし、動物に愛情も持っていない。その上無神論者で頑固者ときている。たった一人の友人であるペディ牧師は優しくてマクデューイ氏とは対照的な性格だ。ふたりは仲がいいはずなのに、話し始めるといつも口論になるところがおかしい。
トマシーナを安楽死させメアリ・ルーが口をきかなくなってから、マクデューイ氏はトマシーナに嫉妬していたのではないかと自問するが、すでに遅すぎる。親が子供を気がつかないで傷つけてしまうのは良くあることだが、マクデューイ氏は娘を決定的に傷つけてしまったのだ。親友のペディ牧師はマクデューイ氏に頼まれて、メアリ・ルーと会うことになるが、彼女があまりにも深く傷ついているのに衝撃を受ける。この場面は小さなメアリ・ルーが傷ついている様子が目に見えるようで、読んでいてもかわいそうでならない。やがてうわさが広まり、診療所に動物を連れてくる人々も少なくなる。自業自得といってしまえばそれまでだが、マクデューイ氏の苦悩する姿を見ていると、かわいそうになってくる。
そんな彼がローリと出会い、彼女を愛するようになる。頑なな中年男性が、若い女性に感化されてやさしさを取り戻すところは『ジェーン・エア』のロチェスター氏を思わせる。これは父と娘の物語であると同時に恋愛小説としても読める。面白くて心に残る作品は少ないが、これはそういう数少ない作品のひとつだ。
Dolphin Kick 2005

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紙の本

偶然のより糸を繰る存在は誰なのだろう?

2011/03/09 13:11

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ギャリコの『トマシーナ』は、先行書評のみなさんが既に語っておられるとおり、『ジェニィ』を大叔母にもつ由緒正しき猫のトマシーナの物語である。筋立てや心を打つ場面についても既に語られているので、若干、気になったところを書いてみたい。

 トマシーナは、少女メアリ・ルーの飼い猫であり、母亡き後に誰よりも親しみをもって傍らで愛した存在である。他方、メアリ・ルーの父親、マクデューイ氏は獣医だが、その仕事に就くまでの父との確執を抱え、さらに患畜のために妻を亡くしている。役に立つ動物を助けることには意義を感じるが、飼い主に甘やかされたペットの患畜と飼い主へのまなざしは辛辣としかいいようのない態度を隠さない。つまりあるべき獣医としてはほど遠い人物として、マクデューイ氏は描かれている。娘がなにより大切にしていたトマシーナの病気を、娘の懇願にもかかわらず治療してやることもなく安楽死させてしまった、というのもそのような極悪な人間らしさを際立たせる象徴として描かれている。

 このマクデューイ氏に安楽死させられた体験を当のトマシーナが語る章と、淡々と醒めたまなざしでマクデューイ氏やメリー・ルーをめぐる人々の生きざまが語られる章が交互に挟み込まれていくのが、とても独特である。トマシーナのまなざしからみたマクデューイ氏や飼い主のメリー・ルーの描写もさることながら、地の文はジャーナリストであった作者の真骨頂だろう、状況描写や心理描写の細やかさが冴えている。

 トマシーナが安楽死させられた日のできごと、マクデューイ氏の医師としての信念を丹念になぞると、ショックから心を固く閉ざしてしまう娘への父の思いが冷酷無比とばかりは言い切れないとさえ思えてくるし、メアリ・ルーのまわりの子ども達の心理描写もまるでその場に居合わせたような鮮明なようすで見えてくる。傲慢で強気だが独自の信念をもっていたマクデューイ氏の気持ちの変化が、アンガス・ベティ牧師との対話を重ねるにつれ、次第にゆらぎながら変化していくさまも見事。

 一方トマシーナの<死後>唐突に出現するのがエジプトの猫の女神セクメト・バスト・ラーの語りである。トマシーナ自身の語りとは別になっていることによって、物語はさらに複雑な魅力を持ち始める。セクメト神は古代エジプトでは復讐の女神とされるが、「守る」力も絶大なのだと信じられていたという。その二面性はそのまま烈しさとやさしさを併せ持つ女性ローリの姿と重なってくる……。

 本作は『ジェニィ』のように猫を主体にした幻想的なものがたりであるが、さらにいうなら死を前にした人々のすがた、運命を信じること、神を信じること――それらの敬虔な想いと疑いとをリアルに描ききっている。穢れを知らぬ女性ローリによってもたらされた救い、ローリの信心とやさしさと烈しさがマクデューイ氏の心を解かし、キリスト教の神に背を向け、やさしさや温かさを拒み続けてきたマクデューイ氏が改心した奇跡のものがたりと読むこともできるけれども、あえて作者が古来エジプトの猫の女神を持ち込んだことには、建前を取り払ってキリスト教の死生観そのものを問い直そうという意図もあったのではと思われる。読み返す度に複層的な魅力の増す秀作。
 

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紙の本

50年後の今にも通用するような現代的なテーマをファンタジー的な要素で包み込んだ作品

2010/05/22 23:51

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書の存在を知ったのは、今から約半年前。

『猫だましい』を読んだ時だった。

結果としては、『ジェニィ』を読了してから
本書を読み始めてよかったと思っている。

トマシーナからみると、ジェニィは大叔母にあたる。

ジェニィといい、トマシーナといい、ウィッティントンといい、
自分の冒険やご先祖の冒険を語る猫は、
自分の血筋をしっかりと知っていて、それを誇りに思っているようだ。

『ジェニィ』は、猫になったピーターの目線で語られていたが、
この『トマシーナ』は、若干引いた三人称語りの部分と、
猫のトマシーナが語るところとがある。

しかも、語り手であるはずのトマシーナが途中で死んでしまい、
その後、自分をエジプトで神とあがめられたバスト・ラーの生まれ変わりと語る
タリタという猫が語り手にもなったりする。

トマシーナの親しみ深さとていねいさを併せ持ったような語り口とタリタの気位の高い語り口、
そして、どちらの一人称語りでもなく、カメラを引いて抑えた形で、
登場人物たちのそれぞれの語りを聞かせていく三人称。

この視点の交代がちっとも不自然ではなく流れるように展開していくのが本書なのだ。

この自然な転換は、扉の物語の要約にも現れている。

  あたしはトマシーナ。

  毛色こそちがえ、大叔母のジェニィに生きうつしと言われる猫。

  あたしもまたジェニィのように、めったにない冒険を経験したの。

  自分が殺されたことから始まる、不可思議な出来事を……。

  スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。

  動物に愛情も感心も抱かない彼は、ひとり娘メアリ・ルーが可愛がっていた
  トマシーナの病気に手を打とうともせず、安楽死を選ぶ。

  それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。

  町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、
  頑なな父と孤独な娘を変えていく。

  ふたりに愛が戻る日はいつ?

『ジェニィ』は、猫になったことを通して成長していくピーターと
それを見守るジェニィの物語に集約することができるが、
『トマシーナ』は、登場人物、登場猫が増える分、様々な読み方ができる。

トマシーナの目線で見たマクデューイとメアリ・ルーの生活。
猫目線で見る女の子の描写の的確なこと。
女の子と猫が似ているというのも、わかる。

タリタが語る、エジプト時代の猫の話。
『猫だましい』にもあったような猫と人間のかかわりの歴史が垣間見られる。

スコットランドという土地の文化も色濃く反映されている。
トマシーナを子ども達が弔うシーンが出てくるが、
それはスコットランド風の見送り方なのだ。

マクデューイとローリの関係は、恋愛的側面もあるが、
現代西洋医学や科学と科学だけでは割り切れないものの対比としても見られる。

牧師のアンガス・ペディは、お互いを若い頃から知る親友同士であるが、
神について語る職業を選んだペディに対し、
マクデューイは過去の出来事の影響もあり、
神を信じる気持ちは失ってしまっている。

彼らは神に対する主義は異なり、語れば議論にもなるが、
基本的には親友同士で、
その議論は非常にユーモアに溢れたやりとりで展開されていく。

神学から死にいたるまでさまざまなことに造詣が深いペディが、
愛について語るところは特に印象に残っている。

「ひとりの女性を愛するということは、
その姿をいっそう神秘的に演出する夜の闇や輝く星、
その髪を温めかぐわしい香りを漂わせる陽光やそよ風をも
同時に愛することになるのだ」
からはじまり、実に1ページに渡り、
~を愛するなら~を愛さずにはいられないはずだと語っていく。

そんなペディとの友情だけは続いているマクデューイだが、
彼は深く深く葛藤している存在である。

本当は人間の医者になりたかった夢を父親の動物病院を継がなければ
医学を学ばせないという圧力によりつぶされた経験がある。

父親との関係は修復できず、
夢を失ったことで神を信じる気持をも失った。

さらに、動物の病気がうつってしまったことが原因で
自分の妻を亡くしてしまい、なおさら、自分の仕事が愛せないし、
神などいないという気持ちが強くなる。

妻を失い、同時に、娘の母親も失ってしまったのだ。

彼は、自分の仕事は愛せなかったが、娘は愛していたから、
トマシーナを安楽死させる前は、母親不在ながらも
なんとか良い関係ではいたのだ。

トマシーナの安楽死にまつわるエピソードは、
マクデューイの医者としての尊厳をゆるがす出来事と同時に起こる。

その日交通事故で瀕死の怪我を負った盲導犬が担ぎ込まれていた。

その手術のときに、具合が悪くなったトマシーナを連れて
メアリ・ルーは診察室にやってきていたのだ。

妻が動物の病気がうつって亡くなっていたため、
マクデューイはメアリ・ルーが診察室に来ることを禁じていた。

また、人間のために働く盲導犬の手術の最中だったこともあり、
すぐにトマシーナの安楽死を助手のウィリーに命じたのだった。

盲導犬は手術のかいがあり救うことができた。

ところが、その報告を盲導犬の持ち主にしにいったところ、
ご老体だった持ち主は、事故に巻き込まれたショックに
耐え切れずに亡くなっていたのだった。

このことは大きな影を落とす。

犬は生かしたのに、人は死んでしまった。

犬を見ていたときに、自分は猫をちゃんと見なかったのではないか。

いや、自分は、娘が自分よりも心を開いていると思える猫に嫉妬をしていたから、
猫を簡単に安楽死させる道を選んだのかと彼は苦悩する。

トマシーナの安楽死のあと、メアリ・ルーは、父親に心を閉ざし、
自分の中で父親を抹殺することで、自分の心も体も壊していく。

まさに現代の心の病である。

マクデューイは、頑固な自分に生き写しの性格を持つ娘と自分の関係の中に、
かつての自分と父親を見たことだろう。

マクデューイはローリが自らの伴侶となり、
メアリ・ルーの失った母親にもなってくれること、
彼女の病を癒すことを期待するのだが・・・。

本書は、1957年に描かれながらも、
50年後の今にも通用するような様々な現代的なテーマを
ファンタジー的な要素で包み込んだ作品であるといえよう。

本書で救いをもたらしたものがなんであったのか。

それは現代的なテーマに対する答えも示唆しているようでならない。

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紙の本

My Best of ギャリコ(猫)作品

2017/09/13 02:57

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夜メガネ - この投稿者のレビュー一覧を見る

寝る前に何か読みたいと探していた時に安く中古の文庫を買えたのですが、
なんと新訳版の初版でした。

ポール・ギャリコなら読めるかなと思ったのと、裏表紙のあらすじと世界観から選んだだけです。
 本編とは別に、2017年5月に映画館で「メアリと…」の予告観た際に
「なんだか設定・舞台やキャラの名前までそっくりだな…」と思いました。(原作は別なのですが…。)

トマシーナが繰り返し語る「でも、これは殺人の話なの」という通り、
もし、ペットに安楽死をさせた経験がある人には相当辛い内容です。
そして、ヨーロッパを中心に昔は多かった仮死状態での埋葬の歴史を彷彿とします。
(ゾンビとかの元ネタと言われています 。特にイギリスでは墓荒らし/墓泥棒が多かったのも有名です。)

都会ではなく噂話がインターネットの速度を抜く田舎らしさも随所にみられて好きな世界観です。
ジプシー(ロマ)の描写がリアルで、臭いが漂ってきそうなくらいでした。
この作品では赤毛のキャラたちが主人公なので、現在も根続く
赤毛差別へのアンチテーゼとしての役割も見事です。

神なるタリタ人格が突然出てくるのも面白かったですし、章の分け方も見事。
それから、良質なラヴェンダーは私の犬も好んでいたのを思い出しました。
英国製のものはフランスのものより甘みが強く、柔らかいので私も好きな香りです。
(…猫は、ハーブはキャットニップ、それより洗い立ての洗濯物のほうが好きでした…。)
ローリにこんなにも共感できるところを作れるのはギャリコならではの手腕です。
フェミニンな行動・心理描写は彼の得手ですから。

手放したくない、大切な1冊になりました。個人的には星は10点。

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紙の本

スコットランドを舞台にした、愛の奇跡の物語

2004/07/13 19:48

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る

猫のキャラがとても印象的なギャリコの物語では、『ジェニィ』に優るとも劣らない傑作。初めて読んだのは、もう随分前になりますが、矢川澄子訳の『まぼろしのトマシーナ』(大和書房)ででした。気高さを感じたトマシーナの肖像画、装幀に描かれた絵とともに忘れられない作品です。

久しぶりに再読して、今まで抱いていた作品の印象が変わりました。これまでは、トマシーナという猫が魅力的に描かれた物語と、そのイメージが強くありました。そういう側面もあるのですが、本書の核となるテーマはもっと別のところにあるんじゃないか、これは心に傷を負った男と、彼がこの世で何よりも愛する娘が、愛の奇跡によって救われる物語なんじゃないか、そう思ったんですね。
マクデューイ氏という動物嫌いの獣医が、娘の愛を失って苦悩する姿、彼がひとりの女性と出会うことで人間としての温かさを取り戻していく姿、そんな彼の姿が切迫した調子で描き出されていたところ、そこに本書の一番の読みごたえを感じたのです。

愛するトマシーナが父親の手によって殺された時、「トマシーナァァァァァ!」と絶叫するメアリ・ルー。それ以後、父親を心の中で抹殺したメアリ・ルー。彼女が深く傷つき、この世の中の出来事から心を閉ざすようになっていく姿は、見ていてどうにも痛ましく、やり切れない気持ちにさせられました。

親友のアンドリュー・マクデューイを救おうと、彼の心にそれとなく働きかけていくアンガス・ペディ牧師。《赤毛の魔女》《変人ローリ》と呼ばれる女性とともに、彼の存在が大きかったこと、その人となりが魅力的だったのも心に残ります。

山田蘭さんの訳文、なかなか見事だと思いました。特に、トマシーナが語る章での生き生きとした調子の文章と人称代名詞の用い方に、訳者のセンスの良さ、細やかな気遣いを感じました。

解説は、河合隼雄氏。氏の『猫だましい』(新潮文庫)という本の中でも、この作品を取り上げているのですね。本書を、「ものがたる」ことの名人、ポール・ギャリコの傑作のなかの傑作ではないかと讃えた文章は、読んでいて気持ちの良いものでした。

原題は、Thomasina 1957年の作品。
猫の名前がついた物語では、同じ著者の『ジェニィ』(新潮文庫 ※私が読んだのは、矢川澄子訳の『さすらいのジェニー』大和書房)とともに、深く心に残る、忘れがたい名作です。

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2005/01/28 23:29

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2007/02/12 22:08

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2007/05/10 17:49

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2007/07/15 19:31

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2007/09/12 22:37

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2004/06/02 16:47

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2008/10/27 19:44

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2009/12/15 02:04

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2010/03/06 21:13

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