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カリスマ 下 (徳間文庫)
カリスマ(下)
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紙の本
現代に“カリスマ”の必要性を問う
2006/06/09 16:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハードカバーから新書版のノベルスになり、ついにはこうして文庫サイズにまとまり、マンガ化もされた。カルト教団の暗部と“カリスマ”とは何かを問いかけ続けた本書が人気があるからこその結果である。
以前は海外、特にアメリカのカルト教団がよくニュースになっていたが、ご存知のように我が国日本でも幾つかのばかげた宗教団体がとんでもない事件を起こしたりして、大きなニュースになっている。偶像崇拝から始まった宗教は、いつしか心のよりどころや道しるべではなく、洗脳のテクニックを駆使して盲信的狂信的信者を生み出すだけの存在になってしまったようだ。
第二次大戦下にも行われていた洗脳は、人を人でなくする恐ろしい技術だ。単純作業を延々と繰り返させたり、同じ言葉を延々と聞かせ続けたりもしくは唱え続けさせたりして、心身共に衰弱したところに強烈な印象を与える。この手法は時間はかかるが簡単なため、新興宗教団体が利用することが多々ある。また、散々罵倒し自信をなくさせ、その直後に救いの手をさしのべるという方法も、世界規模で活動しているとある宗教団体で実際に今現在も使われている手法である。いずれにしろ、個人を非日常に追い込み、判断力を失わせることによって洗脳するわけだ。
命令されるがままに平気で薬物テロを起こし、平気で人を殺したカルト教団の元信者達。彼らの中には、全く洗脳が解けなかった者もいた。自分自身の命にかかわる命令は実行しにくい催眠と違い、強力な洗脳は自殺すらも躊躇わなくなる(結果として自殺となるケースもある)。本書に登場する狂信者達の行動は、まさしく洗脳された人間特有の行動。現実にあった事件とも重なり、カルト教団の恐さを思い知らされるだろう。
実は、私はマンガ版を読み終わってから原作である本書を手に取った。マンガ版が面白かったので、原作を読む気になったのだ。絵が頭に残っているせいか、かなり分厚いのにスラスラと読み進められた。期待通り、原作も面白かった。面白かったが、後味が悪い。理由は明確。マンガ版とラストが違うからだ。マンガ版はカルト教団の恐さを感じたまま読み終われるのに、原作は……かなりショックだった。しかし、“カリスマ”という書名に忠実なのは、やはり原作である本書だ。マンガ版しか知らないのであれば是非原作を、原作小説しか知らないのであれば是非マンガ版を読み、違うラストとおそらく違うであろう感想を比べてもらいたい。