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紙の本
ゆとり教育と国際政治の関連を指摘した画期的な書物
2004/05/07 20:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ゆとり教育」が各方面で批判され、文科省も事実上の方向転換を余儀なくされたことは記憶に新しい。
しかし、「ゆとり教育」がなぜ日本で教育政策として持ち出されてきたのかについては、必ずしも十分な説明がなされてきたとは言えない。
例えば苅谷剛彦『教育改革の幻想』(ちくま新書)は、受験勉強がゆとりを奪うという言説の虚偽をあばき、日本の子供たちの勉強時間が70年代以降一貫して少なくなってきている事実を指摘したが、「ゆとり教育」が生み出された原因については、子供の自主的な勉強意欲を信じるロマン主義的心性を掲げるにとどまっていた。
教育社会学者・岩木秀夫による本書は、この点について画期的な指摘を含んでおり、「ゆとり教育」について考えようとする人にとっては必読書となっている。
教育政策の背後に潜むのは、じつは国際政治上の要請であったという。すなわち、80年代になって登場した新保守主義の政治家たち——レーガン、サッチャー、中曽根——の政策こそが、日本の「ゆとり教育」を生んだというのだ。当時は日本経済の強さが問題視されており、アメリカと英国の指導者は自国の学力向上による競争力強化を目指したのに対し、日本は国際協調の必要性から逆に学力低下誘導策をとったのだという。
そればかりではない。新保守主義とは本来、結果の平等を批判し、機会の平等を重視して、競争に敗れた者は経済的不利益を蒙ってもやむを得ないとする考え方であるが、日本にあってはバブル崩壊以降、所得の不均衡が拡大し、「中流崩壊」や「階層社会化」が進むなか、機会の均等すら怪しくなってきているのである。こうした状況下、マスコミの提供するサブカルチャーによってめまぐるしい「個性浪費」に時を過ごす若者とは、低学力誘導政策により興味の対象を国内消費に限定された階層、すなわち「中の下」の位置づけをあらかじめ割り当てられてしまっている層ということになる。それは、グローバル化による国際的な産業構造を十分に利用できるエリート層の対極にある存在なのだ。
日本社会が階層社会に向かっているという警告は、上述の苅谷剛彦や社会学者の佐藤俊樹『不平等社会日本』(中公新書)によっても発せられているが、本書は国際政治の視点を導入することで、グローバル化時代の教育と階層化問題に新たな光を当てている。きわめて刺激的な書物と評することができよう。
紙の本
一昔前の日本の教育状況を再考する!
2016/05/03 10:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、2004年発行で少し古い感はあるのですが、10年前に我が国が「ゆとり教育」から「学力向上」へ舵を切った当時の現状がよくわかる良書です。本書によれば、それは欧米の新自由主義の思想が根底にあり、ポストモダン、グローバル主義という時代を反映していると言います。この一昔前の教育の大転換について、再度、勉強したい方には最適の書です。