紙の本
映画化されると、あたかも原作が優れているように思うムキもあるのだろうけれど、わたしゃ誤魔化されない。こんなありふれた話のどこが傑作だ?
2004/09/08 21:18
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《十一歳のショーンとジミー、デイヴが人の自動車を無断で乗り回そうと思いついた。通りがかりの二人の警察官が、そのことでもめている三人に気付き、デイヴは警察に連行されたが、そのような警察官は存在しなかった》
正直、この小説が評判だと聞いて、わが耳を疑っている。映画会社の仕掛け、それも出版社や評論家を巻き込んだ悪質なもの、としか思えない、その手の話である。昔懐かしい因縁話、古い酒を新しい袋に詰め替えた、そういう印象。
十一歳の、生活環境も違えば階層も違うショーンとジミー、デイヴが他人の自動車を無断で乗り回そうと思いついた。通りがかりの警察官に見つかり、デイヴは警察に連行される。知らされた家族が調べると、そのような警察官は存在しなかった。四日後、デイヴは無事に戻って来たが、偽警察官に悪戯されたという噂は絶えない。何も出来なかった二人の少年に残る後悔の思い。
そして、事件から25年。ジミーは一時は犯罪に手を染めたものの、母を亡くした娘のケイティのために足を洗い、雑貨商として静かに暮らしていた。ケイティは19歳。母親譲りの美貌で、いろいろな男と関係をもつ。ラスヴェガスに男友達と駆け落ちをする予定の日、夜遅くまで飲み歩いた彼女が失踪した。
その深夜、妻シレストの元に血まみれの洋服で帰ったデイヴは、見知らぬ男に怪我を負わせたと言う。シレストは夫の衣類を洗濯し、事件の証拠を隠滅する。警察には、公園のそばに血だらけの車が止まっているとの通報が入る。今は刑事となり謹慎が解けたショーンは、早速捜査に赴く。妻のロレーンと離婚し娘とも別れて暮らしている彼のもとにかかる無言電話。発見されたケイティの遺体。半狂乱のジミーは復讐を誓うが。
不幸な過去を背負った男たちが探り合う心の奥に潜む秘密。昔の事件はいつまで尾を引くのか。正直、魅力的な人物が出てこないし、事件は陰惨、決して面白い本ではない。
この手の、トラウマ犯罪本に食傷気味の読者には、またかと思わせるに違いない。逆に、トラウマ大好き、フロイトあれば世界は理解可能という人間には、お涙ものの展開である。実社会での事件の短絡化、ただそれを再現したような小説の出版の意味は、改めて問い直されてもいいのではないか。
投稿元:
レビューを見る
映画化もされた、筆力と冷静なまなざしが光る重量級の作品。
子供の頃の遊び仲間の3人、同じ町でも中流家庭のショーンと、スラム街に住むジミーとデイヴには差がありました。その違いが決定的になりかけたある日のこと。
デイヴは警官を装った男に二人の目の前で誘拐されてしまう。4日後に戻ったもののデイヴはいたたまれない思いをしながら成長し、残る二人もデイヴを助けられなかった傷に苦しむことになります。
25年後、ジミーは十代で犯罪者集団のリーダーだったのが足を洗って雑貨店主になっています。足を洗うきっかけになった最愛の娘が惨殺され、刑事になっていたショーンと、容疑者としてのデイヴと、3人の運命が交錯することに…
それまでは真面目に暮らしていた危険な男ジミーがどう動くか。
ジミーの妻のアナベスは、ろくでなしの兄弟の中でたくましく育ったしっかりした女性。デイブの妻シレストとは従姉妹だけど対照的。
一見恵まれているように見えるショーンも実は妻に去られ…
一筋縄ではいかない彼らの人生の暗黒と思いもよらない運命の巡り合わせ。
悪人といえどもそれぞれ個性が明確なのと、男性が女性を熱愛する所、暗いトーンの話でもどことなしに生気が溢れているのがこの作者らしい。
たった1、2行で重要なポイントに触れてある箇所が幾つもあるので、読みとばさないようにしないと…?
投稿元:
レビューを見る
ゴールデングローブ賞の主演・助演男優賞受賞はショーン・ペンとティム・ロビンス、どちらもかつてヤング・アダルトという名で呼ばれた若き獅子たちの世代である。この世代は、主役と脇役が、作品に応じ、年齢に応じて多様に入れ代わり、独特の癖のある演技が光るという人たちが多いように思う。T・クルーズやM・シーンの息子たちも有名であったが、T・ハットン、K・サザーランドといった性格俳優系も印象的だった。
そんな中で、とりわけショーン・ペンは、悪党、チンピラ、裏切り者といった負の役柄を演じるたびに凄味を発揮し、それでいて屈折の中に厚みのある演技が、ぴか一の印象を残した。本書のジミー役を映画で演じるには、この人を置いて他にないだろう。
逆に酷薄な役柄を演じることの多いケヴィン・ベーコンが、上級階層の刑事役をあてがわれているあたりは、相当にひねくれたキャスティングであるように思う。ショーンペンと逆の役であればどうだったかということも、ぼくは散々想定したが、そちらも悪くはない。よりありきたりのキャスティングになり、その場合アカデミー作品になり得たかどうか、興味は尽きないところだ。
この作品中、最も複雑で、壊れた内面を演じねばならないティム・ロビンスはもちろん『普通の人々』での凄まじい演技力に裏打ちされた役者だ。すっかりフィットしていそうな役柄だ。但しハイスクール時代に花形野球選手だったという設定を除いて。
映画については、未だネットで予告編を見ただけの段階だ。それでも本書を読んでずっと想念に上がってきたことは、アクセントとなりそうな映画的シーンや、俳優たちの深みある演技への、大きな期待感だった。読みながらも、映画が脳内で先行してしまっている。つまり、俳優の顔を思い描くことなくこの作品に取り組んだ初期の読者のようには、今回のぼくには想像力の幅がないのである。それであっても十分に読み応えを感じさせてしまったのが本書。逆にキャスティングの妙に支えられたと言ってもいいと思う。
大作であり、また名訳である。これほどぞくぞくと読める本はそうはないと思う。よくぞ映画という二三時間限りのコンパクトな表現世界に閉じ込めることができたものだと思う。
さて、運命を暗示する川というイメージ、たびたびリフレインされる立ち去ってゆく車の追憶、と、実に映像感溢れる光景が、作品の根底にずしりと居座っている。象徴的なシーンが連続する。時間の靄が多くのひずみを埋めてゆく。住人たちの心の皺のなかに多くの語られぬ言葉を埋め込んでゆく。時が過ぎ、戦争があり、貧困は、見た目には一掃され、貧富の境界が消滅したかに思われる。何もかもが曖昧で混じり合ったものになる。明確な愛や憎悪は、すべて混ざり合って見えなくなって、安定してしまう。そうした時代のある夜に、あまりにも宿命的な血が流されることになる。その血はいったい誰の流したものだったのか。
ミステリーとしては、事件自体の表面はシンプルなものである。マクベインあたりなら100ページに纏め上げそうな謎解きに過ぎない。しかし、この小説は、事件そのものよりも人間の光と影に焦点を当て、執拗なまでにディテールにこだわり、その心の移ろいに目を凝らしてゆく。
自分のなかに、収まりのつかないけだものを飼っている三人の男たち。翻弄され、暴走してゆく女たち。そして何よりも本書の事実上の主人公と言えるのが町である。町の上に降りかかる時間という試練と、そこに生き、老い、死んでゆく住人たち。多くの人々の目線に晒され、歪んで錆びてゆく物語。
事件は起こり、嵐を巻き起こし、まるで何も起こらなかったかのように終熄してゆく。その後には、事件を生き延びた人たちが、同じ町で同じ暮しを同じように営み続ける。心の中に多くの空洞を抱え込んでいるにしても、それらはまるで何事もなかったかのように、継続されてゆく。
思えばマイケル・チミノの『ディア・ハンター』も、真の主人公は一つの町であった。そこに生き、他国で戦争が起こり、生き残った者だけが、また町の続きを生き始める。あの映画の記憶が掘り起こされるかのような、悲しく、切なく、しかしどうしようもなく人間によって作られる悲喜劇こそが本書であるのだ、とぼくは思う。
投稿元:
レビューを見る
謎解きミステリと言うよりも、登場人物達の生き方により焦点を合わせた作品。
3人の男達の怒りや悲しみ、振り返る事は出来てもやり直す事は決して出来ない人生のドラマを読んだ。
真相はあまりにあっけなく勧善懲悪的な物ではないので、読後モヤモヤする人もいるかもしれない。
でもきっと、これが人生なんだろう。
投稿元:
レビューを見る
犯人は、すぐに「あれ?」と思うし
犯人探しやトリック・謎解を楽しむ物語ではない。
ヒトに触れられたくない過去を守るため
自らに沸き起こる邪悪な気持ちを抑えるため
ついた嘘が結末につながり。
家庭をもって、信じてさえいれば。
結局三つ子の魂百までということなのだろうか。
映画のキャスト(特にケビン・ベーコン)が興味深いので
映像で見るのもありかな。
投稿元:
レビューを見る
登場人物たちの「人生」に非常にリアリティがあり、読み始めたら止まらなくなった。
暴力と殺人が、直接の被害者は勿論、そうでない人々(家族や友人)の運命をも次々と狂わせていく、負の連鎖に息が詰まりそうになる。
ラスト、「それでも人生は続いていく」ことに、やりきれない気持ちになった。にも拘わらず、心を打たれるのは何故だろう。
犯人が逮捕されてめでたしめでたし、というストーリーではないのですっきりしないし、拍子抜けしてつまらないと感じる読者もいるだろうが、しかし、現実はこんな風なのではないだろうか。
投稿元:
レビューを見る
かなり前に読んだ本です。
内容はうろ覚えなので、今度時間がある時に
もう一回読んでみようかな。
投稿元:
レビューを見る
どんな展開が待っているのか、小出しにされる真実に急かされるようにして読み進めました。結構大胆に伏線張ってたんですね。気づかなかったのが悔しい。しかし本当の読みどころは事件の真相より登場人物たちの心の動きです。幼い頃の事件で負った傷、自分の人生を変えてくれた娘が殺された怒り、変わりゆく町への愛情、自分のあり方への問いかけ…。途中までは登場人物の気持ちや考えがまるで見えてこなくて、日本人の感覚では分からないことも多々ありましたが、最後の方に出てくるミスティック・リバーでの場面以降でやっと気づける部分も出てきました。読み返すともっとよくわかってくるかも。
投稿元:
レビューを見る
父が面白いと言って貸してくれたので読んでみました。ちょっと文章が硬いなあと思いながら読みました。章によって主役が変わるのでその人物の心情を理解するまで多少時間がかかるなあと思ったり。
可哀想な人は結局可哀想なままで終わるのか。人間は話し合いで物事を解決することは出来ないのか。暴力的な人は最後まで暴力で物事を解決するのかなあ。そんなことを思いながら読みました。作中のどの人物にもあまり感情移入できなかった感じです。
投稿元:
レビューを見る
期待して読んだ割には平凡だったので厳しい評価。読みながらツインピークスを思い出してしまった。話は違えど雰囲気は似てる。
投稿元:
レビューを見る
私が読書に、はまるきっかけにもなった作品ですね!
映画化にもなった作品ですが、あまりにも切ないミステリー作品で、読んだ当時かなりの衝撃を受けたのを憶えています。海外ミステリー作品としては個人的には、いまだにナンバー1作品です!でも、あまりも切ない内容なだけに映画を観る気持ちになれないのでした。
投稿元:
レビューを見る
大人になって同じ町に住み続ける幼馴染み三人組を中心に
昔の事件と今の事件が錯綜する。この、一つの町に住み続ける人たちの話ってのが、転勤族の子だった私には、うらやましいような、ピンとこないような。複雑。
フォークナーの世界というには底が知れてるし、阿部和重の世界よりは節度があるってとこかしら。シャッターアイランドの前にと思って読んだけど、なーんかなー。
投稿元:
レビューを見る
この小説を一文で表すとするなら、「運命の分かれ道をたどっていくような小説」だと思います。
主要登場人物はショーン、ジミー、デイヴ。三人で遊んでいた11歳の時、警察の名を騙った男たちによってデイヴが誘拐されます。それを機に三人の距離は遠くなり25年後。ジミーの娘が殺され、刑事となったショーンは、その捜査を担当することに。そして、当日デイヴがジミーの娘のいた酒場にいたことが分かり…
誘拐犯の車に乗ったデイヴと、乗らなかったショーンとジミー。三人の運命はここで大きく分かれますが、それが事件を機に再び合流することになるのです。
作中全体に漂うのはやるせなさ。愛するものを失った哀しみ、戻らない人生への悲嘆、運命への諦め。そうしたものを叙情的な心理描写や比喩を使いこれでもか、とばかりに描きます。
そのため、展開はかなりスローテンポ。人によっては、読みにくさを感じるかとも思います。でも、この雰囲気がこの作品を、作品足らしめているとも言えると思います。
合流した道は再び分かれ、そして三人が最終的にたどりつく場所。それは運命に抗えない人の弱さ、人生の残酷さをこれ以上ないくらいに感じさせると思います。
読みやすいわけでもなく、読後感がいいわけでもなく…。それでもこの文体が肌に合ったならば、忘れ得ぬ物語体験ができる、そんな小説だったように思います。
2002年版このミステリーがすごい! 海外部門10位
投稿元:
レビューを見る
映画化もされた文学的なベストセラーミステリだが読後は錘のような物が腹に残る。話は3人の少年に起こったある暗い誘拐事件から始まる。25年が過ぎ元ギャングで雑貨屋のジミーの美しい娘が公園で射殺された。過去の負の連鎖は避けられない。刑事になったショーン、当時誘拐されたデイヴ、 そしてジミー、3人はそれぞれの宿命を背負い事件に関わっていく。そして捜査線上にデイヴの名が現れた時…。人は自分の居場所をいつも探している。今の自分を招いたのは血の切なさと不幸な偶然の巡り合わせが作る宿命という愚かさ。そこに救いはないのか。すべては脳の中で起こり人は傷ついていく。人生は苦く切ない
投稿元:
レビューを見る
ショーン、ジミー、デイヴの主人公3人の関係性がとてもおもしろかった。設定は最高だと思う。内容もまあ普通におもしろいと思う内容だった。
話の最後、ショーンと奥さんの無言電話の謎もなかなか素敵なオチだった。