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商品説明
中国の象徴、至宝「清明上河図」。その精緻な描写に閉じ込められた北宋末期はどのような時代だったのか。中日の歴史・建築・船舶・家具史・文学の専門家が絵をよみとく。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
『清明上河図』をよむ | 伊原弘 ほか座談 | 43-90 |
---|---|---|
『清明上河図』と北宋末期の社会 | 伊原弘 著 | 91-112 |
境界の風景 | 中野美代子 著 | 113-130 |
著者紹介
伊原 弘
- 略歴
- 〈伊原弘〉1944年生まれ。城西国際大学人文学部客員教授。
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紙の本
中国北宋の都市「開封」の賑わいを髣髴とさせる多彩な内容!
2003/11/10 00:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
「清明上河図を読む」は、春まだ早い清明節で賑わうの中国北宋(12世紀)の開封を描いたとされる絵画についての学際的な研究である。
この絵は、人里離れた山水画が多い中国絵画歴上にあって、リアリスティックに人々の姿や街の賑わいを描いていて、奇跡的な傑作と評されている。
本書は、まず冒頭に、この絵の全図の複写を数ページに渡って適度の大きさで載せ、読者はこの絵の細部に目を通すことができるように工夫されている。続くページには、研究者の活発な議論が収録され、この絵画のアウトラインや問題点などが把握できるようになっている。
続いて、各研究者の論文が収められているが、描かれている対象が多彩なので、研究者も日米に渡り、建築史、造船史、中国中世史、中国財政史、交通史、中国家具史をはじめ、日本の中世史家も寄稿している。
夫々の論文は平易に書かれ図版も多く用いられ、具体的で興味深い内容となっている。特に、造船の研究者がこの絵に多く描かれている船についてビビットに解説しているのが目をひく。当時の船についてこれほど具体的に触れている例はあまりなく貴重な論文と言える。また、中国家具史の研究者は、絵の中に人気が全くないテーブルや椅子が散見されるのに注目し、その配置状況から、当時の商談の場として使われたのではないかと推測している。従来は、これらの空間はすべて飲食店とされてきて、人気の無い空間が多くあるのは何故か分からなかったのだが、この論者の言うように商談の場とすると、商談が行われる前の早朝を描いたことになる。 なお、この女性研究者は、これだけ多くの人々や船が行き交いするのに商品を収めておく倉庫が見られないことにも言及し、さきほど触れた商談用に使われた椅子やテーブルが置かれてある所に隣接する家屋に商品を保管しておいたのではないかと推理している。この説によると、商業が画期的な進展を見せた北宋末でも、流通品は倉庫を態々建てて収納するほどではなかったということになる。定説を見直すことにつながり、着想と洞察力が光る好論文と言える。
本書は、「清明上河図」を総合的に理解するのに相応しいものなっている。ただ、難を言えば価格が少し高いことと活字が小さいページがあり読み辛い箇所があることである。各論文はゆったりと活字が組まれていて読み易いのに、これは惜しまれる活字の組み方である。とは言え、昨今の厳しい出版状況からすると、本書のような行き届いた書物がよく刊行されたものと思う。このような良心的な書物を出版された勉誠出版社に心からエールを送りたい。この出版社は、1年前に「知識人の実相−中国宋代を基点として」というこれまた素晴らしい学際的な書物を出していて、小さいながらもきらりと光る出版社と言える。社主の見識には脱帽。