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紙の本
静かな大地
著者 池沢 夏樹 (著)
【親鸞賞(第3回)】明治初年、北海道の静内に入植した和人と、アイヌの人々の努力と敗退。日本の近代が捨てた価値観を複眼で見つめる、構想10年の歴史小説。『朝日新聞』連載を単...
静かな大地
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商品説明
【親鸞賞(第3回)】明治初年、北海道の静内に入植した和人と、アイヌの人々の努力と敗退。日本の近代が捨てた価値観を複眼で見つめる、構想10年の歴史小説。『朝日新聞』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
池沢 夏樹
- 略歴
- 〈池沢夏樹〉「スティル・ライフ」で中央公論新人賞・第98回芥川賞受賞、「マシアス・ギリの失脚」で谷崎潤一郎賞受賞、「花を運ぶ妹」で毎日出版文化賞受賞。
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紙の本
人間の尊厳とは
2003/10/09 21:00
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の書評は簡単には書けないと思う。とても大事な問題を扱っている。作者が10年も構想を暖めて書いたというのに頷ける。
維新後の明治四年、淡路島から北海道静内に移植した元侍の集団がいた。維新前の北海道は松前藩が支配し、アイヌへの理不尽な支配を続けていた。維新後のそれがどうなったのか。
主人公である宗形三郎は、あるきっかけからアイヌの友人を持つ。札幌の学校に学ぶ中で、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の福沢諭吉の書物に学び、「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク教授の影響を受ける。
その影響もあり、虐げられたアイヌの人々の立場に立って生きることを決意する。
三郎は和人からも一定の信頼を得るとともに、アイヌの人々からも信頼を得る人へと成長する。
しかし、アイヌびいきの三郎に対する陰口や風当たりはいろいろな側面から増すことになる。
作品の中で示されるアイヌの話には、思わず頷いてします。
天地はかぎりないと思っていたのに、その天地が今日から和人のものになったという。天子が決めたことだという。この自然が、この空がどうして一部の人の所有になるのか?
アイヌはもめごとがあるときにはチャランケ(話し合い)で決める。話が決まるまで話し合う。しかし、和人は一方的に決め付けて、刀と鉄砲でいうことをきかす。
こんな理不尽があっていいのか。
維新後の資本主義、利益優先の資本主義化は北海道のアイヌへも容赦なく襲いかかる。アイヌのためにそれに抵抗する決意をした三郎であったが…。
意外な結末が待っていた。三郎は自害した。
私は自殺する人間が大嫌いだ。どんな苦しみや悲しみがあってもそれに立ち向かっていく人間が好きだ。
そういう面では、この作品は私を裏切った。しかし、この作品で扱われているテーマは大事だと思う。
かなりの長編だが、ぜひ読んで欲しいと思う。