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商品説明
産の上にて身まかりたりし女、其の執心、此のものとなれり…。日本的な家系の悲劇を浮かびあがらせるミステリ。94年ノベルスとして刊行され、98年に加筆・訂正のうえ文庫に収録された小説を底本としてハードカバー化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
京極 夏彦
- 略歴
- 〈京極夏彦〉1963年北海道生まれ。作家。「魍魎の匣」で第49回日本推理作家協会賞、「嗤う伊右衛門」で第25回泉鏡花文学賞、「覘き小平次」で第16回山本周五郎賞を受賞。
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紙の本
10年経つと、筋は殆ど覚えていなくて、凄い小説を読んじゃったという記憶だけが残っていたけれど、こんなにも分かりやすい話だったんだと認識を新たに
2004/07/17 21:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ご存知、京極夏彦の弁当箱本のシリーズを、豪華本に作り直したもので、その迫力は文庫版には劣るものの、おどろおどろしさでは、やはり並ぶものなしといった感じである。『姑獲鳥の夏』のノベルズ版は、1994年の出版当時に読んで、世の中にこんな凄い作家がいるのかと、当時30歳だった京極の年齢を知って呆然としたことを覚えている。まさに出会いの一冊である。以降、新刊は読むものの、以前の本を読み返す機会がなくて、寂しく思っていたときに、こういった形での出版となり、これを利用して再読の仕儀となった。
で、まずその豪華仕様である。白い本の装幀ならば、菊地信義、とばかり思っていて、黒地の紙に立体的な金色の文字を配した、ちょっとあざといこの本を開いて、そこに「本文書体 游明朝体02R OTF」と、珍しい表示があって、その下に「菊地信義」って書いてあるのに気づいた時、思わずオエって言ってしまった。それほどに、らしからぬデザインではあるけれど、それはあくまで菊地らしからぬ、であって、いかにも京極本らしいデザインではある。
でも、菊地らしいデザインは随所にあって、たとえば小口に絵を入れてしまうというのは、多分、色を塗るだけに比べて圧倒的に面倒くさいだろうなあ、とか、あるいは本を開くと、まず黒い頁、その次は山吹色、そして普通の紙へと変化しながら、タイトルや著者名、出版社、目次といった情報が、斜めに配列されながら微妙に位置を変えていくあたりは、うーん、芸が細かい、などと思ってしまう。
で、やっと中味になるのだけれど、これが予想以上に読みやすい。あれ、10年前はもっと難渋した気がするのだけれど、と思ってしまう。ただし、忘れている、見事なまでにというほどである。面白かった、凄かった、という記憶はあるけれど、それ以外は全くの空白、この本に出てくる関口並である。
この小説の中心にいるのが、久遠寺梗子である。妊娠20箇月を迎え、未だに出産の気配もないという、東京は豊島の雑司ヶ谷で開業医をやっている久遠寺家の次女である。で、何かと噂のたえない家のことについて、恥を忍んで相談に来たのが、梗子の姉である、28歳になる独身の涼子である。
で、彼女が依頼するのが、妹の夫で密室状態の部屋から姿を消した牧朗の生死と、その失踪の理由を明確にすることである。その依頼相手と言うのが、神保町で「薔薇十字探偵社」を構える旧華族の出の榎木津礼二郎であり、彼に代わって涼子の話を聞いたのが、居合わせた関こと関口ということになる。
そして、直前までその事務所を訪れていたのが東京警視庁の刑事木場修太郎であり、巻頭で関口に久遠寺家のことを話していたのが古本屋「京極堂」を営む、関口の大学時代の友人で祈祷師でもある、京極堂こと中禅寺秋彦であり、その妹で出版社に勤める敦子である。秋彦は、関口に失踪した牧朗が自分たちの大学時代の知人であることを思い出させる。
で、姑獲鳥というのは「子供を抱かせに来るお化け」「羽毛を纏うと鳥になり、羽毛を脱ぐと女怪になるという化け物」「女児を攫って養女にする」「産む女」「お産で亡くなった人の幽霊」「お産で死んだ女の無念という概念を形にしたもの」など諸説紛々としている。
その説が、結局はストリーにピッタリあっているというのが、何よりの驚き。前に読んだ時は、凄い凄いで、こんなに理詰めの話だったとは思いもしなかった。再読はしてみるものである。勿論、傑作の評価は変わりません。ちなみに、我が家の高一長女は、この話が京極さんのベストだそうです、はい。
紙の本
京極夏彦の独特の世界観
2019/11/13 23:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ノッポ - この投稿者のレビュー一覧を見る
京極夏彦のデビュー作、「百鬼夜行シリーズ」である。
まず、タイトルの姑獲鳥(産女)とは、亡くなった妊婦の溶解のことを指します。亡くなった妊婦をそのまま埋葬すると姑獲鳥になるといわれていたため、当時妊婦を埋葬するときは、腹を裂いて胎児を取り出して母親に抱かせるか、人形を持たせることにされていました。
読み終わって「なるほど」とはならない不思議な余韻が残りました。