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紙の本
深海のパイロット 六五〇〇mの海底に何を見たか (光文社新書)
著者 藤崎 慎吾 (著),田代 省三 (著),藤岡 換太郎 (著)
日本の深海探査技術は世界のトップレベルになったと言われるが、その陰で毎日のように未知の深海に黙々と潜り続けるパイロットたちがいることはほとんど知られていない。そんな深海探...
深海のパイロット 六五〇〇mの海底に何を見たか (光文社新書)
深海のパイロット
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商品説明
日本の深海探査技術は世界のトップレベルになったと言われるが、その陰で毎日のように未知の深海に黙々と潜り続けるパイロットたちがいることはほとんど知られていない。そんな深海探査船のパイロットたちにスポットを当てる。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
深海に挑む冒険者達が見出した、地球の魅力と冒険の楽しさが濃縮された一冊
2007/08/23 00:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
パイロットと聞くと、どうしても遥か天空を駆ける人々を思い浮かべるだろう。そこにあるのは高さとスピード、そして孤高である。
しかし、正反対の世界にも冒険の世界がある。いや、むしろ、空という、ある意味で開発されつくした世界ではなく、本書が取り上げるような違う世界だからこそありうる冒険というのも確かに存在するのだ。
というのは、知ってのとおり人類は月まで到達している。その距離およそ38万キロ。ところが足元の、海底1万メートルの世界はほぼ人跡未踏の状態に留まっているのである。1万メートルというと、たかだか10km。その距離を歩くとするとわずか2時間30分で事足りる。その”近場”に、人類はほとんど足を踏み入れることができないのだ。障害となるのは距離ではない。圧倒的な水圧である。
水中に10メートル潜るごとに、1気圧分の圧力がかかる。100メートル程度の深さであれば人間も生身で耐えられても遥か深みには耐えられない。海底に潜るというのはそれだけ大変なことなのだ。おまけにたかだか数百メートルも潜れば、そこには太陽の光も届かない闇の世界となる。
高圧の闇の世界。そこに何があるというのか。漆黒の闇の世界を前に、多くの人は何もない世界を思い浮かべてしまうだろう。しかし、そこには地上からは想像も付かない不思議な世界が広がっているのである。本書は、そんな深海に潜る人々の話をまとめている。
深海に潜るための船、それを操る人々、そして深い潜行から何かを知ろうとする人々。本書ではそれぞれの立場から深海の探検に何があるのかが生き生きと描かれている。本書に出てくる誰もが熱い情熱を持って課題に取り組んでいる上、一般に知られていない冒険であれば面白くないわけがないのだ。
深海2000に始まり、6500メートルまで潜れる深海6500を駆使しての調査には、思いもかけないことが多い。とりわけ、科学者の誰もが予想すらしていなかった発見の数々には、読者も興奮を味わえると思う。
私が面白かったのは、科学者が飽くなき好奇心を発揮して、無人機ですら到底できないような作業を有人で行わせること。科学者曰く、無人だと危なすぎてやってもらえない。それを黙って有人でやってしまうというのは凄い。
また、チームごとにも争いがあるのも面白い。あいつらにできたら自分達にできないわけがない、という自負。世界の一線に立つ人は誰でもきっと持つものなのだろうが、はっきり表明されると気持ち良い。しかも結果が伴っているのがすばらしい。
深海の持つ魅力をたっぷり味あわせてくれる一冊。海に興味がない方でも、表層近くの水に隠された奥の世界を知る喜びを知らしめてくれるだろう。文句なしにお勧めできる冒険の書であると思う。
紙の本
何故人が深海にもぐらなければならないのか
2011/11/14 23:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
長沼氏との対談本もあるSF作家藤崎慎吾と、潜水調査船パイロット、地質学者の三人による共著。共著とはいっても、本文の大半は深海探査の興味深いエピソードを集めた、藤崎氏による第一部で、これが200ページを占める。これだけでもはや新書としては一冊分なのだけれど、加えて二人(第一部にも登場する人物)がそれぞれの立場から「しんかい二〇〇〇」や「しんかい六五〇〇」について語った文章が加えられて一冊となっている。
深海探査を興味深いエピソード共に紹介することで、楽しく深海探査の意義を伝えようとするのとともに、予算的な問題で運用を休止することになった「しんかい二〇〇〇」の再度の運用を開始したいという願いが込められている。
深海探査の話は長沼氏の著作などでも触れられていたけれども、ここではもっと具体的な体験が扱われていて、日本初のブラックスモーカーが発見された時のビデオから書き起こされたその場の会話など、とても臨場感のある本になっている。
本書の背後には、技術の進歩によって無人探査機の開発が進み、有人深海探査の意義が薄まりつつある状況に対しての危機感がある。三者ともに、それぞれの言い方で、なぜ深海に人が赴かねばならないか、ということを語っている。それは一言で言えば、どんなものよりもやはり人間というセンサーがもっとも役に立つ、ということだろうか。もちろん正確さや定常的なデータの取得等にかんしては機械に分があるけれども、人間の視界とカメラの視界には歴然たる差がある。そして、事前に想定して用意した機械の観測範囲外のものは捉えようがないものも、人間ならば捉えることができる。先端的な研究においてはどうしても人間の感覚、勘に如くものはない、ということ。
パイロットたちの具体的、体験的エピソード集ともいえる本書の構成は、著者たちの考える有人深海探査の意義がいかなるものかということを如実に語っている。