紙の本
冒険と冒険と冒険の誘惑
2004/06/19 14:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
王、戦士、魔術師、美女、蛮族、もう出てくる人はこんだけ。それなのに、わかっているのに、わくわくしてしまう。単純すぎでごめん。
ヒロイックファンタジー、または剣と魔法の物語。前世紀前半に英米で大流行したジャンル、などと言うまでもなく、いまやRPGの一大潮流だね。そのジャンルの年代を横断した名作アンソロジー。
しかしジャンル勃興期から延々、もっと考えてバリエーション作れよ、って言いたくなるぐらいの冒険至上主義真っ向勝負の作品達、単純なはずなのに惹き付けられる。荒野と魔界と城塞都市、大胆で果敢で繊細なヒーロー、ヒロイン、それだけでこんなにも心踊らされる。それでいてどうして、奇想コレクションにしてもいいような奇抜なアイデアが次から次へと飛び出すのだ。まさにアンソロジーならではの快楽。
「英雄コナン」はヒロイックファンタジーの代名詞とも言える有名作品で痛快。映画版がシュワルツネッガー出世作だったりするけど、どっちかというと猪木キャラのような。蛮勇で狡猾。「処女戦士ジレル」は若い頃に読んだときは、小生意気で鼻っ柱が強いだけが取り柄の女と思ったけど、今思うとこれがたまらなく魅力的なんだな。ああ歳は取りたくない。
ダンセイニまで入れてしまうのは強引のようで、読んでみればあまり違和感がない。指輪物語やゲド戦記はエピックファンタジーと言って、ヒロイックファンタジーとは分ける向きもあるらしいが、どうなんだろ。結局はみんな繋がってるってことなんだね。
1970年代の「白子のエルリック」になるとモダンで憂鬱だ。主人公が活躍すればするほどに、自分も周りも傷つき不幸になっていくという、やるせなく歪んだ構造を抱えている。魔術だけど夢想的じゃない。これははまる。
実は今まであまり手を出してなかったジャンルなのだけど、こうも綺羅星を並べられると、いろいろ漁りたくなってくる、誘惑の本。
紙の本
ちょっと表紙がアドベンチャーブックみたいかな
2003/03/24 22:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
<剣と魔法>のファンタジーが好きという人なら、1度は手に取らなきゃいけない本だと思う。このジャンルを代表する作家の作品が一挙に8本。主人公で言うなら、キンメリアのコナン、処女戦士ジレル、ファファード&グレイマウザー、黒き剣のエルリックといった名前が並んでいる。この他にもダンセイニとかジャック・エヴァンズとか、ファンタジー小説とかRPGの世界では基礎教養や古典ともいうべき作品や作家ばかりだ。
それだって、単に「こういう作品があって、今のファンタジーがあるんだよ」的な作品は無い。どの短編をとっても、昨今の長編ファンタジーに匹敵する深みがあり、今でも十分に通用する面白さだ。あえていうなら、ユーモアのある作品と近頃流行の<剣と魔法と機械仕掛け>といったものは含まれていない。
ともかくこれさえ読んでしまえば、剣と魔法のファンタジーについては一通り堪能できてしまうという1冊。オールドファンには「エルリックやジレルの新訳だぞ」というだけで買わせる力のある短編集だ。
…あ、なんか浮かれてますか?
紙の本
編者コメント
2003/04/02 10:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村融 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この前ある人が「映画『スパイダーマン』のようなヒロイック・ファンタシー」と書いているのを見かけた。なるほど、ヒーローが出てくる非現実的な話だから、ヒロイック・ファンタシーというわけだろう。
だが、ちょっと待ってほしい。ヒロイック・ファンタシーとは、本来ある特殊な様式の小説をさす言葉だったのだ。すなわち、英雄、美女、盗賊、魔術師がいり乱れ、亡霊、怪物、悪鬼、死神が跳梁跋扈する波瀾万丈の冒険物語だ。別名を〈剣と魔法〉というように、勇猛な剣士と邪悪な魔術師の戦いが、その中心テーマなのである。
この原点に立ち返り、ヒロイック・ファンタシーの世界を概観できるようにしたのが本書だ。ジャンルを代表する作家の作品を年代順にならべ、その歴史を通観できる仕組みになっている。ロード・ダンセイニの先駆的な神話的英雄譚、ジャンルの代名詞であるR・E・ハワードの《コナン》シリーズ第一作、ジャンルの革新者マイクル・ムアコックの《エルリック》シリーズ本邦初訳作品など全八篇。絢爛豪華な〈剣と魔法〉の世界を堪能されたい。
投稿元:
レビューを見る
ファファード・アンド・グレイマウザー・シリーズ、エルリック・シリーズ、コナン・シリーズなど「剣と魔法」のファンタジー小説を集めた短編集。ちょこっとずついろいろ楽しめて、「剣と魔法」入門編としてお薦め。
投稿元:
レビューを見る
恥ずかしながら、ヒロイック・ファンタシーはほとんど読んだことがなかったので、けっこうおいしかった。
まー、パルプの頃に書かれたものだから、ご都合主義と置いてけぼりの設定はどうにもきついものがあるけどね。
そんな中で、個人的に一番面白かったのは、意外なことにコナン。
大昔に一回読んだことがあったんだけど、そのときは全く読み進めることができなくて、2話くらいで挫折。
しかし、今回のはすらすら読めた。訳のせいかな?
シュワちゃんこんな台詞覚えられないよ、てくらいよく喋る。
ほとんど喋らないか「オレ、コナン」みたいな片言のイメージだったので新鮮。
王になった後の話で映画作ればいいのに。
それから、エルリック。
ざっと内容は知ってたんだけど、これも初めて読みました。
さすがに、パルプに比べれば現代に近いから小説として洗練されてる。
ニューウェーブの一翼だけに、ファンタジーと言うより、SFだね。〈エルリックシリーズ〉くらい読もうかな。
……なんか、無難なのばかりだな。
ヴァンスの〈滅びゆく地球シリーズ〉の『天空の眼』もよかったかな。
ちなみに、カットナーの『暗黒の砦』はあまりにもあまりな展開で読むのが辛かった。
嫁さんの〈ジョイリーのジレル〉は面白いんだけどなぁ。
漫画の『いきなり新連載』みたいな感じで、こういうアンソロジーは入門編としていいと思う。
読み込んでいる人間には物足りないんだろうけど。
投稿元:
レビューを見る
フリッツ・ライバーのファファード&グレイ・マウザーシリーズ目当てのアンソロジー。
それ以外は一度も読んだことのないシリーズばかりだけど面白かったです。
惜しむらくはほとんど邦訳がないことと、あってもほとんどが今は絶版なこと。
とりあえずはエルリックと手放してしまったファファード&グレイ・マウザーシリーズを何とか手に入れよう。
投稿元:
レビューを見る
「サクノスを除いては破るをあたわざる堅砦」ロード・ダンセイニ ◯
「不死鳥の剣」ロバート・E・ハワード
「サファイアの女神」ニッツィン・ダイアリス
「ヘルズガルド城」C・L・ムーア
「暗黒の砦」ヘンリー・カットナー
「凄涼の岸」フリッツ・ライバー
「天界の眼」ジャック・ヴァンス ◎
「翡翠男の眼」マイクル・ムアコック
面白くても続編が読めないのがもどかしい。やっぱりヴァンスは最高。
投稿元:
レビューを見る
解説(中村融)よりメモ
『ヒロイック・ファンタジー』とは
……別称〈剣と魔法(ソード・アンド・ソーサリー)〉
①魔法が通用し、機械文明の興っていない想像上の世界を舞台に、
②剣をふるう英雄が、
③邪悪な魔術師や超自然の怪物と戦いを繰り広げる物語
(アメリカのSF作家ディ・キャンプによる定義)
ヒロイック・ファンタジーの歴史〈ディ・キャンプ説〉
①源流:古代の神話伝説や中世の騎士物語
②19世紀末:小説の形に定着させたパイオニア
※ウィリアム・モリス(イギリスの文人)
……愛好する北欧の神話や英雄譚にならった、中世風の異世界を舞台とする「遍歴と探索のロマンス」
代表作『世界のはての泉』(1896年)
〈荒俣宏説〉
{※フィオナ・マクラウド(スコットランドの作家)
……ヒロイック・ファンタジーへのケルト文学の影響}
③20世紀前半:モリスに続く
※ロード・ダンセイニ(アイルランドの作家)
……生涯にわたり寓話を書き、その作風は多岐にわたるが、ヒロイック・ファンタジーの歴史において重要なのは初期の英雄神話風の物語。短編形式によってヒロイック・ファンタジーの可能性を広げ、特筆すべきは『アラビアン・ナイト』の影響をうかがわせる東洋趣味。
※E・R・エディスン(イギリスの作家)
……戦いの喜びを謳いあげる英雄神話風の物語
代表作『ウロボロス』(1922年)
④イギリスで受け継がれる伝統
※J・R・R・トールキン
……深い学識を武器に、緻密に造りあげた異世界での「遍歴と探索の物語」
代表作『指輪物語』(1937年)
※T・H・ホワイト
……時代錯誤(アナクロニズム)を意図的に持ちこみ、作品世界は「なんでもあり」のおもちゃ箱。
代表作『永遠の王』(1958年)
⑤1920年代:アメリカへ流入
※H・P・ラグクラフト
……橋渡し役。ダンセイニに心酔。文通を通して、ヒロイック・ファンタジーを作家仲間に知らしめる。彼らが依拠した怪奇小説誌『ウィアード・テールズ』を中心にアメリカにおけるヒロイック・ファンタジーは展開。
架空の神話体系『クトゥルー神話』の創始者
⑥アメリカでの展開
※クラーク・アシュトン・スミス
……詩人あがりの豊富な語彙を駆使した、異国趣味に彩られた魔術師の物語。
代表作:地球最後の大陸ゾシークを舞台にした一連の作品
※ロバート・E・ハワード
……野生児が暴れまわる物語を好み、頽廃した文明の産物(魔法)を自然の活力(剣)が打ち破るというパターン=〈ヒロイック・ファンタジーの完成形〉
代表作『英雄コナン』シリーズ(1932年)
⑦コナンの模倣を目指す流れ
※クリフォード・ボール『呪われし者デュアー』(1937年)
※ヘンリー・カットナー『アトランティスのエラーク』シリーズ(1938年)
※ノーヴェル・W・ペイジ『プレスター・ジョン』シリーズ(1939年)……「陽気でユーモラスな赤毛のコナン」の異名
⑧コナンとは異なるものを目指す流れ
※C・L・ムーア『ジョイリーのジレル』シリーズ(1934年)
……1970年代以降、フェ���ニズムの高まりとファンタジー・ブームが交差して盛んに書かれるようになった女性戦士を主人公としたヒロイック・ファンタジーの原型。コナンとは人気を二分。
※フリッツ・ライバー『ファファード&グレイ・マウザー』シリーズ
……コナンを意識したうえで、別種のキャラクターを創造。魔術師くずれの都会人剣士グレイ・マウザーと北方の蛮人ファファードのコンビ。都会的で軽妙洒脱な味わい。
こうして1930年代~40年代にかけて、ヒロイック・ファンタジーはパルプ雑誌を土壌に花開いたが、第二次世界大戦後(科学万能時代)には勢いを失う。
⑨いくつかの秀作
※フレッチャー・プラット『ユニコーンの井戸』(1948年)
※ジャック・ヴァンズ『終末期の赤い地球』(1950年)
※ポール・アンダースン『折れた魔剣』(1954年)
(10)引き継がれるヒロイック・ファンタジーの伝統
※マイケル・ムアコック
代表作『エルリック』シリーズ(1961年)
(11)1960年代
※リン・カーター『ゾンガー』シリーズ
※ジョン・ジョイクス『戦士ブラグ』シリーズ
※アンドレ・ノートン『ウィッチ・ワールド』シリーズ
※ロジャー・ゼラズニイ『ディルヴィッシュ』シリーズ
〈リン・カーター説〉
{ラグクラフトの前に、
※ジェイムズ・ブランチ・キャベル
※エイヴラハム・メリット}
{1950年代の秀作に、
※ディ・キャンプ『プサート』シリーズ}
〈J・R・R・トールキン以後〉
※ロイド・アリグザンダー
※アーシュラ・K・ル・グィン
※ジョイ・チャント
(……『エピック・ファンタジー』)
投稿元:
レビューを見る
http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000399150.html
投稿元:
レビューを見る
コナン・エルリック・ジョイリーのジレル・ファファード&
グレイマウザー、そしてダンセイニ、カットナー、この本
以外ではなかなか出会うことのないニッツィン・ダイアリス
というラインナップで、ヒロイックファンタジー入門として
は絶好のアンソロジーと言えるこの本。読んだことのある
作品が多いし、ジャック・ヴァンス・トレジャリーで読む
リストに入ってるキューゲルものも収録されているが、それ
でも実に楽しく読めた私は、やはりただ単純にヒロイック・
ファンタジーが好きなのだろうな。