いよいよ、天明四年(一七八四年)、田沼意知暗殺の年がやってきた。第十四巻『暗殺者』は長編である。作中、天明の大飢饉や、田沼意次の権勢は相変わらずだが悪評ますます高く、印旛沼の干拓も順調ではないことにも触れている。第一話『浪人・波川周蔵』は、仕掛け人藤枝梅安シリーズのようなやりとりから始まっている。もっとも、波川周蔵はここでは暗殺依頼を断わっている。波川周蔵は、秋山小兵衛・大治郎と並んで、この巻の三人目の主人公である。剣の腕は秋山父子と互角。妻と幼い娘がおり、人柄もいい。そして、周蔵は大治郎と同じようにからだが大きく、彼に仕掛けを依頼するのは小兵衛と同じように小柄で上品で義理も人情も知恵もある老…
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