第十五巻第一話は『おたま』という短編で、その後は、長編『二十番斬り』である。「おたま」とは小兵衛の飼い猫のなまえだ。前に、第十二巻第一話『白い猫』で語られた、小兵衛と彼の妻にして大治郎の母のお貞とが飼っていた猫の名も、カタカナで「タマ」だった。『白い猫』のラストでは、おはるが、捨て猫を飼いたいと言うのに、小兵衛が強く反対し、他の猫好きの夫婦のところへ持って行くと言っていた。ところが、この第十二巻第一話『白い猫』では、「おたま」は「一昨年の、ちょうど今ごろ」、迷い込んで来て、住みついた、という。この「今ごろ」というのが、小兵衛隠宅の庭の白梅が散り、綾瀬川の堤の桜の蕾が綻びる頃である。第十四巻の終…
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