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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2003/01/24
  • 出版社: 角川書店
  • レーベル: 角川文庫
  • サイズ:15cm/574p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-04-369001-0

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症例A (角川文庫)

著者 多島 斗志之 (著)

精神科医・榊、担当患者で17歳の亜佐美、そして女性臨床心理士の広瀬。亜佐美は境界例か、解離性同一性障害か? 正常と異常の境界とは? 三つの視線が交わる果てに光は見出せるの...

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症例A (角川文庫)

税込 1,012 9pt

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精神科医・榊、担当患者で17歳の亜佐美、そして女性臨床心理士の広瀬。亜佐美は境界例か、解離性同一性障害か? 正常と異常の境界とは? 三つの視線が交わる果てに光は見出せるのか?【商品解説】

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みんなのレビュー187件

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評価内訳

紙の本

スーパーマン榊医師

2004/07/24 11:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 解離性同一性障害(多重人格)の原因が幼児期以降の虐待であると説いておきながら、その原因に本書は踏み込めないでいる。確かに過去を変えることはできない。しかし、もし患者に通院で治療を施しても、あるいは入院で完治したと見えてもいずれ帰る家族との関係が修復されない限り治療に効果はないし完治しえないのではないだろうか? 亡き岐戸医師を継ぐ榊医師は、家族にまで踏み込まなければならなかったはず。それがないので、本書では榊医師に岐戸医師を越える素地が見当たらなかった。

 弓と居合が出てくる。両方とも精神統一のために集中力が非常に必要だそうだ。伏線となる話の登場人物江間遥子の弓と本線の登場人物広瀬由起の居合。これらは治療の一助の域を出ないが、人生のブレを本筋に戻すということを暗示していた。江間は病気ではないが大人になれ切れていない感がある。田舎に戻って兄と弓を射るが全く話にならないほどの醜態を晒す。広瀬は多重人格で未だに人格の統合が図られていない。その苦しみから出ようともがく。

 それにしても榊医師の強靭な精神力には恐れ入る。まずは、少女・亜左美に散々病院内で振り回される。それもつかの間、広瀬由起の多重人格に勝手に触れさせられる。それによって亜左美も多重人格ではないのかという確信を強める。彼の過去には苦い経験があり、患者に自殺され自身の家庭も崩壊している。はっきり言って榊医師のほうがおかしくなってもおかしくはない状況だ。にもかかわらず、亜左美も広瀬由起も見捨てないという真摯な姿勢はいったいどこからくるのだろうか? 多重人格は幼児期の虐待に原因があると述べているが、榊医師の幼児期以降の成育過程を明らかにすることで、もしかしたらその強靭な精神力の源がわかるかも知れない。そこに多重人格治療のカギがあると見るのはうがちすぎだろうか?

 真面目に人に相対するということの大切さを本書は説いている。実は現実の世の中はこんなに他人に真摯に対応しない。いい加減である。相手の辛さはわからないし、自分の生活が大切だ。相手の中に一歩足を踏み入れることができない。もし、それが出来ていれば虐待はなかったろうし多重人格も生まれない。そうすれば、女性患者のストーカー行為も生まれずに自殺もなかったのではないだろうか? 元を断たねば負の連鎖を断ち切るのは難しい。

 多重人格をキワモノとは見ずに描いた本書は非常にレベルが高い。著者の多島氏には、キワモノと見られがちなモノを題材に真っ向から取り組む力があるような気がする。今後もそういうものを期待したい。

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紙の本

リアルな多重人格

2003/02/05 00:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 従来通用していた「精神分裂症」という病名が「統合失調症」と改められたのが昨年2002年八月、この作品が上梓されたのは、それより前の2000年。病名をどのように変えようとも、実際に罹患している患者さんの苦悩が和らぐこともなかろうと思わないでもないのだが、幾分かでも世間的な偏見が軽減されるならば、改称の意味もあるか。
 この作品では、博物館の収蔵品の真贋をめぐる話と、ある精神科医が、日本では症例が少なく馴染みがない、乖離性同一性障害(「多重人格」という俗称のほうが通りがいいか)をめぐる話と、二つの「事実への探求」のエピソードが交互に語られる。むろん、その二つの大筋は、終盤近くになって一種の合流をはたすわけだが、物語全体の比重からいえば、「乖離性同一性障害」周辺の話に重きが置かれている。そして、どちらのパートについても、専門的な細部についても丹念に取材してあるようで、かなりのリアリティを感じさせる出来となっている。
 自分が担当する患者について、主人公の精神医は医療スタッフから「境界例ではなく、乖離性同一性障害ではないか?」という示唆を受けるのだが、日本での症例が極めて少ないこともあって、容易に従来の診断を覆そうとしない。それ以前の部分で、実際の精神科の医療現場の現実を丹念に書いているからこそ、そうした、診療の場で慎重をならざるをえない態度に真実味が増す。
 多重人格、という、ともすればファンタジックな粉飾で語られがちな題材に真っ正面から取り組み、しかも位負けしなかった、かなり読み応えのある作品です。

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紙の本

おもしろいです。

2001/01/15 16:58

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投稿者:まんも - この投稿者のレビュー一覧を見る

 とても厚い本ですが一気に読みました。境界性人格障害や解離性同一性障害について、とても詳しく丁寧に書かれていると思います。

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紙の本

深い造詣

2020/07/14 12:10

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kissho - この投稿者のレビュー一覧を見る

この人の「黒百合」がとても面白かったので本作も読んでみました。前任医師の死に謎があり、一方贋作の謎も同時進行するので、ミステリーに分類されるのは妥当でしょうが、この作品の本質は多重人格という病気への深い造詣だと思います。これまで漠然としか理解していなかった多重人格について、ストーリーを通じて素人にも分かり易く解説してくれています。ストーリー自体も澱みがなくドンドン引き込まれます。一人の多重人格少女にスポットが当たっていると思って読み進めていくと・・・・!

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紙の本

DID

2020/04/23 11:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あおたいがー - この投稿者のレビュー一覧を見る

ややネタバレあり。

二つの話がそれぞれ進行していって、途中で繋がっていくが、ひとつの話は結局謎のまま終わるし、重要人物と思われた五十嵐さんは登場しないまま終わってしまうのがちょっと消化不良感あるけれど、全体として面白かった。
登場人物がDIDであるというのは割りとすぐわかるが、専門的な話でも心理学的にも興味深く読める。

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紙の本

精神病患者と医師の葛藤と治療の物語

2018/06/08 21:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る

精神疾患の小説といえばサイコパス殺人の話が非常に多いですが、これは違います
精神病患者と医師の治療と葛藤の物語です

前医の自殺で患者を引き継ぐことになった精神科医の榊と患者の亜左美の物語と、狛犬の贋作調査をすることになった都立国立博物館の江馬遥子の物語が交互に語られます。
一気読みの面白さです、どうぞ下調べせずにお読みください。

ネタバレ注意
個人的感想としては二つの物語が実はあまり交差していないところと、最後の亜左美の病名解明のところがいきなりであっさりすぎるのが少し残念でした、ヒロイン2人いるから難しいね

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紙の本

引き込まれるストーリー展開

2013/05/11 16:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:MUNINN - この投稿者のレビュー一覧を見る

読み始めは病院サイド(榊)と博物館サイド(江馬)で視点が交互になっているのが、どういう関係なのか予 測できず、 微妙な感じだったのですが、2者の関係性が表れ始めてから、また広瀬の秘密が暴かれてからは急展開、 内容に引き込まれて、先が気になって仕方がなく一気に読んでしまいました。回想録もまさかの内容、そして、入手先がまた・・・おもしろいです。分厚さ気にならないくらい。
 だけれでも、結末が・・・。 榊に電話してきた亜左美の姉は、亜左美の交代人格と見ていたんだけれども違うような感じだし、 結局彼女がどうなるのかは不明だし、沢村の死因も判明したけれどもその先が・・・ あとは読者の想像におまかせします、ということなのかしら? 私としては曖昧に濁されるよりも、明示した結末が欲しかったな。 一気読みしただけにあまりにも結末が簡素すぎて、一瞬ポカンとしてしまいました。

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紙の本

精神病患者は魂の荒野を行く。精神科医はその時どこにいるのか。

2004/07/13 15:42

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投稿者:Kay - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人に自分のことを分かってもらえないって、どんな気分だろう? 勿論、自分のこと「全て」を「他人」に理解してもらうなんて不可能だ。そんなことは当たり前だ。だけど、それを知っていながらも私達は人が自分のことを分かってくれないと嘆いたりする。それなら、もし「ほとんど」分かってもらえないとしたら? 改めて、精神病というのは扱うのに非常に重いテーマだと思った。

 多重人格なんて、触れるチャンスのなかった私には、本当に話の中でのものでしかなかった。それは確かにまだそうなのだが、今では「多重人格」と言われれば、この話を思い出すだろう。それほど真摯に描かれているという印象を、確かに受けた。なにより、榊医師が真摯だった。彼の精神分析や催眠に対する態度を頑固者、とか、頭が固い、とか思われる人もいるかもしれないが、私には信念のある科学者に見えて、好感が持てた。しかし、人格者だからと言って患者の精神を修理出来るということにはならない。患者にも医師にも、それはもどかしいことなんだろう。けれど皮肉なことに、だから小説はドラマチックになるのだが。

 ところで、博物館の話は「箸休め」みたいな気分で読んでいた。読み終わってしばらくして、自分なりにこの話の存在意義を考えてみた。それは「ホンモノ」と「ニセモノ」の境界線の危うさを示すためなんじゃないか、と思った。美術館の収蔵品と精神病患者の妄想、と言う対比で。まあ、いささか大仰だが。筆者は、博物館の話も榊医師の話も、微妙なところで終わりとしている。「曖昧なものは、曖昧」と私は身をもって教えられたってこと…か?

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紙の本

びっくり

2004/03/19 16:42

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投稿者:KIRI - この投稿者のレビュー一覧を見る

多重人格が出てくる話は昨今珍しいものでなく、けっこうある。漫画でもボスは多重人格でのボスだったりする。けれど、どれもそのへんの2重人格の女くらいにしか思えないし、実際現実感が薄かった。しかし、本書はリアルである。それは多重人格者を変に特別なものとしてではなく、精神を病んだ1つのタイプとして捉えているからではないかと思う。実際にその病と格闘する人。それに医師として、最終的には一人の人間としてかかわっていこうとする主人公。非常に微妙な問題を、丁寧に描いていて読後に考えさせられた。

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紙の本

症例A

2003/06/10 16:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:琴之 - この投稿者のレビュー一覧を見る

とてもおもしろいと思います!
昨日読み始めたんですが、夜を徹して読んでしまうほど引き込まれるものがありました。
著者の精神医療に対する姿勢や、理解など、とても強く感じ、よく勉強されてるな〜と感心しました。
しかし、物語として、ここで終わり? と思わせる終わり方でした。
この続きの方が気になるし、おもしろくなるのだと思います。五十嵐老人の病院内での扱いも、府に落ちません。中盤の由起に対する記述を読んでいると、左手の厚みが気になり、この長さでちゃんと完結するのか不安になったりもしました。
後、帯や本の漂わせるニュアンスから『症例A』手に取った私には博物館の秘密がたとえ模造であってもあまり興味がなく、飛ばし読みを誘ってしまいます。
でもとてもおもしろいと思います☆
下のクラリス様の書評が完璧だと思われます。

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紙の本

安直な精神病理モノを蹴散らす力作。本当に読み耽ってしまった。

2001/01/25 18:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本作では、二つの「謎解き」が平行して進んでいく。主旋律は、不可解な反応を見せるクランケ(達)の精神世界の「謎」を解明するストーリーであり、もう一方は博物館が秘めている、世間に公表されれば大変な問題を引き起こす「謎」が暴かれていくストーリーである。
 本作の迫力の源泉は、何と言っても主旋律の物語だ。この主旋律の「謎解き」物語において、精神医学についての丁寧な解説が、不自然に羅列されるのではなく、精神科医の診断過程を克明に描き出すという手法で展開されている。ダニエル・キースの『五番目のサリー』や『24人のビリー・ミリガン』を嚆矢として、精神病理モノとでも言えるようなジャンルが形成されて来た訳だが、背景となる精神医学の知識をきちんと展開させた作品には、なかなかお目にかかれない。一方、この作品では、精神医学的所見を得ていく過程自体が、主人公である精神科医達の診断上の苦悩と密接に結びつく形で、メイン・ボディーのストーリーを形作っており、それ故、精神医学の知識が作品の奥行き、重厚感をきちんと支える役割を果たしている。つまり、精神医学的知識を羅列した単なる「情報小説」に堕することなく、精神病治療のディティールが説得力・リアリティーを持って描かれていると感じることができるのである。
 しかし不思議なのは、本作の場合、それだけを取り出せば「正直つまらない」としか言いようのない「博物館の謎」のサイド・ストーリを、著者が敢えて作品に含めている点だ。小説において、余分なストーリーは夾雑物として、思考の中断を招くため、作品の評価、感動を引き下げることに繋がるはずである。それ故、このサイド・ストーリをこの作品に含めた著者の意図が結局分からなかった。
 ただ勿論、本作は希有な例外であって、サイド・ストーリが有っても、この「症例A」という作品から得ることのできる感動とは無縁であり、評者の評価にも全く影響を与えていない。それほど、メインボディーが素晴らしく、感心させられた。

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紙の本

救いたい、救われたい。

2004/05/27 16:39

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「困っている人を救ってあげたい、という思いの裏に、
自分を救って欲しい、という思いが隠されてることは、
よくあることだよ」

これは、ある相談センターで所長を務めるカウンセラーの言葉である。


『症例A』には、精神医療的な視点を通して、
人間という存在の不確かさ、正常と異常の境界の曖昧さ、
そして、それゆえの人間の未知なる可能性が描かれている。

医師を志した頃の理想を忘れることなく、患者と真摯に
向き合ったが故に癒えることのない傷を負った精神科医・榊。

統合失調症(分裂病)か、境界性人格障害か。
榊の揺れる診断を欺くかのように奔放に振舞う少女・亜左美。

榊と対立を余儀なくされながら、亜左美の診断について
異を唱え、別の可能性を主張する女性臨床心理士・広瀬。

3人は互いに疑念、不信、反発の視線を向け合うが
あるとき、広瀬は意を決して榊に自分の全てを晒す。
それは亜左美の治療ためであり、自分の救済のためでもあった。
榊は衝撃を受けながらもやはり真摯な姿勢で広瀬を受け入れる。
それは困難を抱える広瀬のため、そして自らの過去を見つめ直すためだ。

そして、亜左美の治療は新たな段階へと移行する。


この物語には、フロイトから始まる精神分析の由来から、
いくつかの精神病・障害の具体的な説明、そして広瀬の
示す「別の可能性」の症例が驚くほど緻密に記されている。
このような「精神領域」に興味がある者(私も)には
それだけで一読に値する読み物だろう。

しかし、当たり前だが『症例A』は参考書ではない。

榊、広瀬、亜左美が提示するのは、正常・異常の
ラインを超えて、どんな過去があろうとも日々を生き続ける
人間の強さであり、また、誰しも根底には「救いたい」、
「救われたい」という思いを抱いているという人間の弱さである。

そして、この人間の強さと弱さこそが
「人間の可能性」の根源なのだ。

私は学生時代、心理学を専攻していた。
カウンセラーを志し心理学科を受験をしたとき、
救われたい、と思っていたのか、今は定かではない。
ただ、他人の心よりも、得体の知れない
“自分の心”に興味が向いていたのは確かだ。

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紙の本

症例B…?

2001/08/27 02:14

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:クラリス - この投稿者のレビュー一覧を見る

 多くの方が書評を書いていて、その中で共通しているように、「少女」「博物館」「臨床心理士」についての3つの謎が同時進行する。
 さて、読み終わっての第一印象は、精神医学、臨床心理についての考え方が変わった。本文中にあるように、精神病の偏見は私の中にもあり(あった)、多重人格と云えば近頃流行のホラーや犯罪しかイメージできなかった。それらが、この小説では一変する。参考文献を見ても、作者の調査、取材などには脱帽。ともかくグイグイ読ませる。
 ただ、他の方の書評通り、結末が駄目だ。3つの内一つの謎の結末? しかない。他の方も書いていたが、博物館の謎の必要性が感じられない。それに、少女はどうなったのだと考えると、読み終わった気がしない。
 もしかすると、精神病には簡単に結末(完全治癒)など無い、ということを云いたかったのか? それとも、現実のように、小説は3日で結末があるが、精神障害は人生のように結末無く続くと云うことなのか? あるいは、もしかして、「症例B」なる少女に関する続編が出版されるのか?
 しかし、以上を考慮しても、読む価値が十分にある力作であることには、間違いない。

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紙の本

ある精神病の原因とは

2001/01/13 00:34

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:格  - この投稿者のレビュー一覧を見る

 二つの物語が平行して進んでいく。一つは、精神病院における医師と少女の患者、さらに女性の臨床心理士がからむ物語。もう一つは、博物館における偽物問題の追求。二つの話がほぼ同程度の重さで進行していき、当然ながら後半で結びついていく。
 中心はあくまで前者の話らしいが、これがまたしても、子どもの頃のトラウマを原因とするもの。精神病に関する真摯な追求は感じられるが、またか、という感じは否めない。さらに、ここでの説明の限りでは、素人である私には、躁鬱病と分裂症、境界例の区別は理解できない。多重人格についても、それほどの違いなのか、というところまで分からない。
 話としては面白いのだが、終わり方は唐突。後者の話はいったい、どうなるのか、というだけでなく、少女の方はいったいどうなってしまうの、という感じ。いろいろな話を詰め込み過ぎて整理できていない印象を受ける。

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紙の本

精神病の治療法の難しさが良く分かる。

2001/01/10 14:25

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ERI君 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 友人から結末をのぞけば、傑作とのうわさを聞き読んで見た。確かに、話の語り口もうまいし、構成もよく出来ている。精神病についての説明も、素人にも分かりやすく、作家が勉強してしっかり理解した上で書いてあるように思える。でも、主人公の医師と院長の問答は、まるで、精神病の啓蒙書を読んでいるようだ。専門的な話なので、説明が必要だから、こういった感じは、必要なのかもしれない、だが、くどすぎる感じがする。
 ミステリとしても気に入らない部分がある。
 なぜなら、三つ解決すべき問題があって、ラストではその一つしか解決してない。提示された問題を全て解決する必要があるとは思わないが、あまりにも無責任な話の取りまとめである。
 ラストに泣けたという話を聞いた。しかし、確かにラストシーンは感動的なのだが、私は、他の謎の解決が気がかりで、ごまかされたような気がして、感動している余裕は無かった。(宮引恵利)

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