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読割 50
紙の本
死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
著者 乙一 (著)
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにする...
死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
死にぞこないの青
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商品説明
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。書き下ろし長編小説。【商品解説】
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紙の本
人格の表と裏の恐怖
2002/07/30 20:57
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和音 - この投稿者のレビュー一覧を見る
春休みが終わり小学生5年生になったマサオ。そして、担任の先生は大学を卒業したばかりの新任の羽田先生。新しいクラスでの係を決める時に嘘をついてしまったマサオはそれから羽田先生に嫌われてしまう。他の子が宿題を忘れたりしても、掃除の時も特に悪いことをしていなくても自分だけ叱られるようになって、全部、マサオのせいにするようになります。そして、クラスのみんなもマサオを無視したりといじめるように・・・
マサオはだんだんと自分がいじめられてしまう事をなんとも思わなく当然のように考えてしまいます。このマサオが感じたり思いこんでしまうところは、読んでいて痛いほどつらかったです。クラスのみんなから不当な扱いを受けても、みんなを本当はいい奴なんだと思うマサオ君は、なんて優しい気持ちを持った子なんだろうと思いました。
羽田先生の表と裏の性格を使い分け裏の性格の方がどんどんヒートアップしてくる所は 人間の狂った部分が全面に押し出され読んでいて怖かったです。マサオの裏の性格の「アオ」とセンセイの裏の性格。人間みんなが強弱はあってもこのような性格を持ち合わせているのではないか?と考えずにはいられませんでした。
紙の本
息苦しくなる作品。
2002/06/20 23:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狩野涼子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度も読むのを止めたくなった。
息が苦しくなって、涙が出てきた。
友人も「イタイ。」と一言しか感想をくれなかった。
でも、いい作品だと思った。
学校という閉鎖空間だから、起こるコトが書かれている作品。
実際に、あんな先生が居たから。
実際に、ああいった級友が居たから。
実際に、さらりと流してしまった自分が居たから。
なんとなくで、流れてしまった学校での時間を思い出すから、息苦しくなる作品。
そして、それでも、最後まで読ませてしまうから、乙一先生は、すごい作家さんだな、と思った。
紙の本
ビルドゥングスロマンとして
2012/10/13 21:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hit4papa - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学校5年生に進級したマサオは、ちょっと太めの運動オンチ。勉強は中より少しましぐらいだが、大人しくクラスの中では目立たない存在だ。たわいのない話で盛り上がる仲の良い友達がいて、それなりに楽しく過ごしているという、どこにでもいる少年。
マサオの担任の羽田先生は、学校を出たばかりのスポーツマン。さわやかで快活な羽田先生に、4月早々から、マサオやクラスの皆、お母さんたちも信頼を寄せている。
マサオはクラス委員の選考の際、ちょっとした行き違いで、皆から浮いてしまう。ちょうどその頃、羽田先生も、生徒たちから指導のあり方に対して不満の声があがり始めていた。羽田先生は、生徒たちの非難を逸らすため、マサオを徹底的に叱りつけるようになる。全てをマサオのせいにして、クラスの皆に宿題を課したり、居残りをさせたりするのだ。マサオがちゃんとしないから、という理由で。クラスの目はマサオにのみ向けられ、すべての不都合の原因がマサオであるかように振舞われる。生贄の羊だ。
私は、このくだりを読んでいて、総毛立ってしまった。先生という小学生には絶対的な権力者が、ひとりの引っ込み思案の少年を、逃げ道のない孤独に叩き込んでいく。羽田先生は、マサオが上手くできることでは、皆を見て蔑みの笑いを浮かべていたと攻撃する。徐々に、仲の良い友達は去り、クラスの子は冷たい視線を浴びせるようになる。いじめとして明確に伝えることができない恐怖。クラス全体が、ただ、そういう雰囲気になっているだけだ。絶望から自分をクラスの最下層の人間と納得し始めるマサオ。羽田先生から”悪い子だ”と繰り返し宣言させられる。マサオの悲しみが、息苦しさが、私の気持ちを波立たせる。怒りに似た感情で胸がいっぱいになってしまうのだ。
そんなマサオにだけ見える全身青色で傷だらけ、拘束衣を着た少年”アオ”。マサオの屈辱を見守るように現れては消えるアオは、口が縫い付けられているので話をすることができない。自分の運命を諦めかけたマサオ。マサオへもの言いたげなアオ。マサオへの肉体的ないじめが加えられようとしたとき、アオはマサオとひとつになる。そして、アオは、ようやく口を開く。「先生を殺せ」と。 ・・・
マサオはアオの導くまま行動を開始するのだが、はたしてどうなるだろうか。そして、アオとは何もなのか。私はビルデゥングスロマンが大好きで、読了後はいつも甘酸っぱい感傷に浸ってしまう。本作品もビルデゥングスロマンといってよいだろう。ただし、劇薬入りのビルディングスロマンだ。読了後には、甘酸っぱさも、清清しさも残らない。後味がけっして悪いわではないが、目の覚めるような痛烈さで、気持ちがざわめいたままだ。
紙の本
表裏一体
2008/05/17 10:13
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ココロの本棚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまらなく不快でたまらなく胸が痛んだ。
しかし、最後まで一気に読みました。
乙一さんの作品は独特のどんよりした雰囲気があります。
マサオは気が弱い少年。人より足が遅く少し太っている。しかし勉強はそこそこに出来て、人を憎まない純粋な心を持っている。新任の教師、羽田はサッカーが得意で明るい教師。ところが教育の場で「叱る」ことによって自分の人気や評判が落ちることを何よりも恐れている。そこで羽田はすべてマサオを叱ることによって、嫌われることなくクラスのバランスをとり始めることに・・・・・・。
決して暴力的でない陰湿ないじめ。首謀者である羽田の不条理な言動にはものすごい不快感をおぼえました。
不気味な描写とともに現れるアオは、いわばマサオの分身ともいえる存在。
アオとの対話の中で心に強さを持ち始めるマサオにはたくましさを感じます。
ラストは胸をなで下ろしました。長く暗いトンネルを抜け出したような光が見えたのです。最後まで不条理でなかったことに対し、著者に「ありがとう」と言いたい。
紙の本
タダシイ先生とヨクナイ生徒。
2005/05/12 08:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
その内向的な性格から、クラスメイトどころか新任の先生にまでイジメを受ける主人公マサオ。エスカレートするイジメの内容に、マサオの精神が崩壊しそうになった時、アオが現れた。ペンキで塗ったような青い顔。片目は潰れ、耳も無い。口は紐のようなもので縫われて、全身傷だらけ。アオはマサオの生み出した幻覚なのか、それとも・・・。
作者自らあとがきで「好きなように書いた」と言っているだけあって、物語性は薄いかもしれない。感動的なラストも用意されていない。でもだからこそ、人物描写や感情描写に対する作者の類稀なる才能が浮き彫りになっている。「揺れる」「ずれる」心理描写。その精密さは他に読んだ事が無い。ダイヤモンドのように輝いた作品では無いかもしれないが、じわっと心に染みる物を感じる一作だった。
電子書籍
ひさびさに…
2017/12/25 22:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の頃を思い出した。
人見知りで人付き合いが苦手なのは致命的な欠点だと思っていた。
学校が楽しいと信じて疑わない親をがっかりさせたくなくて、学校の話題を避けた。
最初はマサオに自分を重ねたけどマサオのほうがずっと大人で心が強くて立派だった。
紙の本
おもしろかった
2015/05/08 15:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶーにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
他のサイトでも評価が高かったので購入しました。本編とあとがきを含めて212ページの薄い本だったので外出中の待ち時間用にしました。先生のマサオに対する理不尽な言動に悔しくて、電車のなかで何度泣きそうになったことか。読んでる間は胸が締め付けられるような暗い気持ちになりましたが、アオがあらわれて主人公が反撃を始めたころから「がんばれ!マサオ」に変わっていきました。先生やクラスメイトたちにはもっと厳しいラストでもよかったな。
紙の本
感情のごみ捨て場
2003/07/27 19:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:UMI - この投稿者のレビュー一覧を見る
はてさて天才と称されてしまう乙一は、「ホラー界の俊英」なのか「せつなさの達人」なのか。そのどちらに分類しようか迷ってしまうのがこの『死にぞこないの青』。
新聞報道で伝えられる「いじめ」は凄惨で暴力的だ。実際にいじめを目にしたことのないボクにとっては、記者が書き立てる「いじめ」やニュースキャスターが痛ましい表情で語る「いじめ」がすべてである。
目立たない日々を送ることを願う小学校5年生の内気なマサオ。ちょっと人と話すのが苦手でちょっと人より走るのが遅い。クラスに一人はいるちょっと太った漫画とゲームが好きな子供。
そんなマサオを「感情のごみ捨て場」に選んだのは、ほかならぬ担任の教師だった。それは、クラスにおける自らの地位を確立するための、または自分の言動を正当化するための、ほんのちょっとした出来心だったのかもしれない。誰かを蔑めば外見的には自分の地位は高くなる。そんな担任にクラスメイト達も共鳴していく。伝染といってもいいかもしれない。
教室で孤立していくマサオの前に、ある日おぞましい姿をした青い肌の少年が現れる。マサオが「アオ」と名付けた少年は、たびたびマサオの前に現れるようになる。彼はただじっとマサオを見つめているのだ。
小学校5年生の少年の前に、人の弱さと恐れと醜さがこれでもかと並べられる。
実際のいじめとは、対象となってしまった人間をじわりじわりと追い詰めていくものなのだろう。気分の良くなる作品ではないと思うが、いじめというものをリアルに感じられたという意味ではこの文庫本は偉大であると思う。
紙の本
裏の自分と復讐
2019/04/08 08:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:melon - この投稿者のレビュー一覧を見る
担任の羽田先生から江戸時代の「えた・ひにん」のような存在とされてしまったマサオ。当初はその扱いに諦めを感じていた。学校でのひどい扱いを公言せず、隠し続けたのが羽田先生には都合が良かったのだろう。しかしもう一人の自分である全身真っ青な「アオ」を知覚し、復習をするようになる。
マサオは自身の扱いに不満を覚えてなんとかしようとしないところが、ターゲットにされやすい性格なのだろうと思う。復讐を含め、甘い。
ホラーではない。アオもマサオのもう一人の自分という感じであり、幽霊のような恐怖は全くない。