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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.8
- 出版社: 早川書房
- サイズ:20cm/357p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208365-4
紙の本
父さんのからだを返して 父親を骨格標本にされたエスキモーの少年
著者 ケン・ハーパー (著),鈴木 主税 (訳),小田切 勝子 (訳)
20世紀初頭のニューヨーク、一人のエスキモーが「文明」の中に「野蛮」を見た−。文明の傲慢さと無理解に翻弄されたエスキモーの少年の彷徨を、当時の探検熱と人類学のありようを批...
父さんのからだを返して 父親を骨格標本にされたエスキモーの少年
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商品説明
20世紀初頭のニューヨーク、一人のエスキモーが「文明」の中に「野蛮」を見た−。文明の傲慢さと無理解に翻弄されたエスキモーの少年の彷徨を、当時の探検熱と人類学のありようを批判的に俯瞰しながら描き出した衝撃の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ケン・ハーパー
- 略歴
- 〈ハーパー〉1945年カナダ生まれ。エスキモーの社会に深く関わりながら、教師、歴史家、言語学者、経営者として活動する。
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紙の本
人類学や考古学の恐るべき一面
2001/10/10 18:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:神楽坂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルは、グリーンランドから来たイヌイット(本文中では古い資料が多用されているためエスキモーと表記されている)の少年ミニックが訴えたことに由来している。彼は7歳の時、アメリカ人探検家によって父キスクらとともにニューヨークへ連れてこられた。キスクは間もなく死に、自然史博物館の庭で埋葬が行われたという。しかし、それはウソだった。信じがたいことに、彼の骨は組み立てられ、「北極エスキモー・キスクの骸骨」のラベルとともに展示室のガラスケースに収められたのである。
ミニックがそれを知ったのはその10年後。彼は父の体の返却を願い出たというわけだ。しかし、博物館はまったく取り合おうとしなかった。1907年のことである。大変昔のことなので、そういう時代だったのかと思ったが、キスクの遺骨がグリーンランドに返還されたのが何と1993年だと聞き、愕然とした。これは、現代の話でもあったのだ。いったい人類学や考古学とは何なのか。我々に突きつけられた問題はあまりにも大きい。
紙の本
だめだ、返さない:アメリカ人類学と北極探検に翻弄された少数民族の物語
2001/11/14 22:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ人類学の「父」と呼ばれたフランツ・ボアズは、19世紀末に着任したアメリカ自然史博物館で、絶滅危惧民族研究のプロジェクトを立ち上げた。彼は地上からエスキモーやインディアンなどの少数民族が消え去る前に、彼らの言語・文化・社会・民俗に関する資料を収集しなければならないと考えていた。同博物館から多額の資金提供を受けていた北極探険家ロバート・ピアリは、ボアズからグリーンランド・エスキモーを研究標本として「採集」するようもちかけられ、6人ものエスキモーを連れ帰ってしまった。その一人が、父キスクとともに連れてこられたミニック少年である。本書はミニックの放浪の生涯を綿密に描いたノンフィクションである。
慣れない異国の博物館の地下で生きたまま「展示」されたエスキモーたちは次々と病死し、ミニック一人が孤児として残された。博物館の一職員によって養われることになったミニックは、父キスクの遺骨が博物館に骨格標本として陳列されていることを知る。彼はことあるごとに父の遺骨の返却を要求するものの、ことごとく拒絶され続けた。ミニック自身、アメリカ社会にも適応できず、なんとか帰れた故国グリーンランドにもやはりなじめず、再びアメリカに逆戻りという根無し草の放浪の生涯を送ることになる。彼は最後に安らぎの地を見つけることができたのだろうか。著者が調べあげたその結末については、ぜひ本書を読んでいただきたい。
はからずも故国と異国の間を生涯にわたってさまよう運命を背負ったエスキモー少年の物語に読者はきっと感銘を受けるだろう。同時に、当時のアメリカのさまざまな個別事情−社会的注目を集めた極地探検行、勃興期のアメリカ人類学、ボアズというカリスマ人類学者の存在、自然史博物館の社会的地位、少数民族を眺める人種観、そして擡頭しつつあった優生思想など−を思い起こさせる本書は確かに読みごたえがある。
備考)本書に序文を寄せているオスカー賞俳優ケヴィン・スペーシーの旗振りで、本書の映画化の計画が進んでいるそうである。
なお、「エスキモー」という民族呼称には抵抗がある読者がいるかもしれないが、原著者自身が序文で釈明しているように、当時の資料や記事で広く用いられていたこの呼び名をあえて使用したとのこと。私の上記書評でも、彼の方針に沿って「イヌイット」というより現代的な表現は用いなかった。
(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)
【目次】
序[ケヴィン・スペーシー] 17
はじめに 23
1章 ピアリーの家来 27
2章 鉄の山 44
3章 アメリカ到着 59
4章 ニューヨークで孤児になったエスキモー 76
5章 アメリカ人ミニック 92
6章 ウォレスの事件 108
7章 詐欺 121
8章 「涙の人生に運命づけられて」 134
9章 父さんのからだを返して 144
10章 科学のために 156
11章 「とても哀れなミニックの境遇」 165
12章 「絶望的な流浪の境遇」 177
13章 北極計画 193
14章 逃亡 201
15章 「破棄できない契約」 217
16章 グリーランドへの帰郷 233
17章 ふたたびエスキモーとして 243
18章 チューレ基地 262
19章 ウィサーカッサク:大嘘つき 273
20章 指名手配:生死を問わず 279
21章 クロッカーランド探検隊 297
22章 ふたたびブロードウェイに 317
23章 北の国 330
エピローグ 340
あとがき 347
訳者あとがき 353
【関連URL】
1)Kenn Harper: "Give Me My Father's Body"
→原書出版元(Steerforth Press)のページ。豊富なリンク集が参考になる。
2)Kenn Harper: The story of an Inuit specimen named Minik
→原著者ケン・ハーパーへのインタビュー記事