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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.7
- 出版社: 角川書店
- サイズ:20cm/208p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-04-873320-5
紙の本
New History街の物語
著者 小川 洋子 (ほか著)
人はだれしも心の中に忘れられない景色をもっている−。小川洋子、柴門ふみ、原田宗典、盛田隆二の4人の作家が織りなす極上短篇アンソロジー。【「TRC MARC」の商品解説】
New History街の物語
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収録作品一覧
ガイド | 小川洋子 著 | 5-52 |
---|---|---|
動物園跡地 | 柴門ふみ 著 | 53-98 |
中途半端な街 | 原田宗典 著 | 99-150 |
著者紹介
小川 洋子
- 略歴
- 〈小川〉1962年岡山生まれ。「揚羽蝶が壊れる時」で第7回海燕新人文学賞、「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞。著書に「冷めない紅茶」「まぶた」などがある。
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紙の本
四人の作家が、それぞれの“記憶の情景”を紡ぎ出し、どこかノスタルジックな世界へと誘ってくれる短篇集
2001/10/04 22:16
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投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰にでも記憶に残っているノスタルジックな街の情景があるだろう。それは、少年・少女時代の二度と戻らない出来事の思い出や、身を焦がすような恋の追憶に関わっているかもしれない。そうした情景の中に自分を再び置いたとき、人は心のときめきや、高まり、あるいは、悲哀を感じるときでさえも、日常の中にいる自分を超越した何かを実感するのではないだろうか。
小川洋子・柴門ふみ・原田宗典・盛田隆二の短篇からなる『街の物語』は、四人の作家がそれぞれ独自に“記憶の情景”を紡ぎだし、未知の、それでいて何処かで見たことのあるような親近性をにじませるデジャ・ビュ(既視感)の世界へと誘ってくれる。
「サウダージ」で三島由紀夫賞の候補にもなった盛田隆二の「アジール」は、画家として立つ夢を失わずに絵筆を取りながらも、締め切り仕事に追われる30歳近いイラストレーターの稲本と、10年来の恋人・美紀、銀座の映画館で偶然に知り合った子持ちの祥子をめぐる物語。
美紀とは同棲したこともあるし、堕胎させたこともある深い付き合いだが、美紀は職場の上司に結婚を申し込まれ、煮え切らない稲本に未練を残しながらも、上司のプロポーズを受け入れる決心をした。
稲本は、茅ヶ崎のビーチで彼女と過ごした青春の日々を思いながらも、仕事に忙殺されている。そこに、祥子が絡んでくる。祥子の何気ない一言に動かされた稲本は、商業ベースの仕事であることを無視して、クライアントから発注されたポスターの原画描きの仕事に自分の芸術的感性を投入する。担当者は難色を示すが、思いがけないことにクライアント側から絶賛され、テレビCMのビジュアルとして検討されることになる。
絵のグループ展の搬入日も間近だが、稲本は祥子と息子のとも君と三人で茅ヶ崎の海を見に行くことにする。閑散とした冬の海を前にして、稲本と祥子は互いの気持ちを探り合う。稲本が祥子との生活に心が傾いていくのを暗示して物語は終わる。
挫折しそうだった夢が蘇生していく過程と祥子との関わりの深化が、自然な瑞々しさと余韻を込めて描かれ、しっとりとした読後感をもたらしている。
柴門ふみ「動物園跡地」は、東京での生活と女にだらしない恋人に疲れ、帰郷して新たな生活に踏み出した千咲が、かつて淡い恋心を抱いた、遠縁の年下のシンゴと再会し、かつての二人の思い出のある動物園跡地のマンションに入り、シンゴが司法試験に合格するまで、そこで待ち続けると、夢のような愛の告白をするファンタジックな物語。女性の恋心の在り方がよく実感できる点でも興味深い作品だ。
この他、小川洋子「ガイド」、原田宗典「中途半端な街」を収録。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.10.05)