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紙の本
悲しき対象は、熱帯なのかそれとも我々なのだろうか
2001/07/11 20:48
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
構造主義人類学の祖として知られるレヴィ=ストロースが、1930年代にアマゾン奥地のインディオを訪ねた調査旅行の記録である。しかし、ブラジル先住民の詳細な社会や文化の記録を期待すると、裏切られる。かといって、旅行記と言うにはあまりに考察が深く緻密すぎるし、時間も空間も交錯していて、つっかえたり飛ばしたり戻ったりして気がつくと、独特な世界観の中に取り込まれている。
これが構造主義の認識方法なのかと理解するほど構造主義がわかっていない者にとっては、まるでノンフィクションを装った文学作品のように思えてくる。過酷な環境の中に苦労して入り込んで、知られていない社会集団の記録を一つ増やすことにどれほどの価値があるのか、繰り返し自問する著者の憂鬱さが全編に垂れ込め、未開社会に対する軽蔑は勿論、礼賛に偏ることも許さず、読む者を思索に引きずり込む。
原著が出てから半世紀、日本でも絶えず版を重ねながら二十年以上も読み継がれてきたのも、うなずける。ふと思いついたときに、いつでもページがめくれるように、手元に置いておきたい本である。
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フランスの社会学者クロード・レヴィ=ストロースが1930年代のブラジルの少数民族を訪ねた旅の記録をまとめた紀行文です!
2020/07/11 14:49
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、20世紀のフランスを代表する社会人類学者、民族学者で、コレージュ・ド・フランスの社会人類学講座を1984年まで担当し、アメリカ先住民の神話研究を中心に研究を行ったことで有名なクロード・レヴィ=ストロースの作品です。同書は、1930年代のブラジルの少数民族を訪ねた旅の記録をまとめた紀行文で、その文章にちりばめられた思想、特に優れた未開社会の分析と、ヨーロッパ中心主義に対する批判により世界的にセンセーショナルな評価を受け、文化人類学、また構造主義におけるバイブルの一つとなった名著です。中公クラシックスからは2巻シリーズで刊行されており、上巻の同書は、全部で9部からなるうちの第5部までを収録しています。「第1部 旅の終り」、「第2部 旅の断章」、「第3部 新世界」、「第4部 土地と人間」、「第5部 カデュヴェオ族」となっており、いよいよ名著が幕を開けます。
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古臭い翻訳
2021/03/20 09:58
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TK - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつか読みたいと思っていたのですが、がっかり。原文が難解な文章なのでしょうが、こんなに下手な直訳調な文章を今どき読むはめになるとは、思いませんでした。30年以上前の学生時代に読まされたのが、まさにこんな悪文でした。早く新しい人に新しい翻訳をだしてほしいてす。
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世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう
2001/06/14 15:17
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤崎康 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『悲しき熱帯』は、いまさら紹介したり書評したりするのが気後れするくらい、もはや押しも押されぬ「古典」となった名著である。だが今回、「古典復興!」のキャッチ・フレーズとともに「中公クラシックス」の一冊としてラインナップされた本書を再読してみると、まったく未知の興奮に誘いこまれてしまった。これはやはり尋常一様なことではない。
人類学者レヴィ=ストロース初期の内省的民族誌である本書は、いうまでもなく、体系的な構造人類学の書ではなく、しなやか且つパセチックな、芳醇且つ戦慄的な記録文学の傑作でもある。
訳者・川田順造氏は本書の内容を以下のごとく的確に要約している。…「1930年代のブラジル奥地での豊かな経験のかずかず、ユダヤ人としての第二次世界大戦中のアメリカへの脱出の思い出、少青年期の回顧、インド、パキスタン、現在のバングラディッシュを訪れた時の印象などが、著者の強靭な筆によって、個別の体験や感想から、人類史の一断面を見る思いさえする一連のタブローにまで高められている。十五年の醸成のあと一気に書かれたこの本は、上等な木の樽の中でたっぷりと時間をかけて濃(こく)と香りを身につけた酒のように、辛口でありながら豊かなひろがりをもった大人の読み物だ。」
…まったくもってレヴィ=ストロースは「辛口」且つ「濃厚」である。たとえば、おおかたの旅行者や探検家が抱く異国情緒=エキゾチズム的心理や感性に、彼はしばしば冷水を浴びせる。すなわち、アマゾン地方やチベットやアフリカは、旅行記、探検報告、写真集などの形で都会の書店に氾濫しているが、それらの本では、読者にいかに強い印象をあたえるかという効果が最優先されるので、読者は持ち帰られた見聞の価値を吟味することができない。批評精神が目覚めるどころか、読者はその口あたりのいい食物のお代りを求め続け、その膨大な量を呑みくだしてしまうのである。要するに現代では、「旅行屋」や「探検屋」によって報告される「異国の珍奇な習俗」は、旅行記というかたちで虚しく大量消費される、紋切り型のイメージにすぎないのだ。レヴィ=ストロースは言う。「旅行譚は、もはや存在していないが、しかしまだ存在していて欲しいものの幻影をもたらすのである」と…。
こうしたレヴィ=ストロースのペシミスティックな思いは、次の一節に痛切な叫びとして、また西欧中心主義への呪詛として、結晶する。
「…文明社会はそれらのもの(熱帯の原住民たち)が真の敵対者であった時には、恐怖と嫌悪しか抱かなかったにもかかわらず、それらのものを文明社会が制圧し終えた瞬間から、今度は尊ぶべきものとして祭りあげるという喜劇を、独り芝居で演じているのだ。アマゾンの森の野蛮人よ、機械文明の罠にかかった哀れな獲物よ、柔和でしかも無力な犠牲者たちよ、私は君たちを滅ぼしつつある運命を理解することには耐えていこう。しかし、貪欲な公衆を前にして、うち砕かれた君たちの表情の代りにコダクロームの写真帳を振り回すというこの妖術、君たちの妖術よりもっと見すぼらしいこの妖術に欺かれる者には決してなるまい。」なんという素晴らしい文章だろう!…。
ちなみに、このようなレヴィ=ストロースの文章は、フランス文学の伝統であるモンテーニュやラ・ロシュフーコーらモラリスト(人間観察家)的な筆致を継承していると思われる。本書の末尾近くに書きつけられたアフォリスム(箴言)的な、そして黙示録的な次の一句にも、それは如実にみてとれる…。「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」 (bk1ブックナビゲーター:藤崎康/現代文化論・映画批評 2001.06.15)