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商品説明
今日歌舞伎として上演される演目のうち、上演頻度の高いもの、上演されていなくても作品として優れているもの310作品を厳選。演目ごとに物語・みどころ・成立・初演と作者・芸談等を解説。駸々堂出版82年刊の新版。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
渡辺 保
- 略歴
- 〈渡辺保〉1936年東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。演劇評論家、淑徳大学教授。紫綬褒章受賞。著書に「女形の運命」「忠臣蔵−もう一つの歴史感覚」「俳優の運命」「娘道成寺」など。
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紙の本
歌舞伎に対して食わず嫌いの人でも、分かり易く、親しみ易く、一種の入門書としても興味深く読める
2001/04/05 18:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
阿国(おくに)歌舞伎に起源を発し、江戸時代に盛んとなり、独自の発達を遂げたわが国固有の総合舞台芸術、歌舞伎は21世紀に入って古典としての輝きを一層増すものと思われる。これもやはり長い伝統を持つ能などに比べると大衆的な芸術ではあるが、欧米の伝統的舞台芸術オペラと少し似たところがあって、ある種のとっつきにくさが否めない面もある。「浮世柄比翼稲妻」や「三世相錦繍文章」といった題名からしてそういった印象を与える場合が多いのかも知れない。
歌舞伎に対して食わず嫌いの人でも、分かり易く、親しみ易い一種の入門書として興味深く読めるのが演劇評論家・渡辺保(たもつ)著『新版 歌舞伎手帖』である。初版以来18年を経て、当初の版元が倒産したのを機に、講談社からの新版として刊行された。
冒頭の「凡例」によると、収録の310作品は、今日歌舞伎として上演される演目のうち、比較的上演頻度の高いものから選んだという。殆ど上演されなくても、作品として面白く、上演されることが望ましいものは極力加えることにしたとしている。
表題は一番馴染みのある通称を首題として、次に正式の題名にあたる本外題(ほんげだい)、別名題、その幕ごとの別称を記したとしている。またひとつの方針として、歌舞伎は本来役者の芸が中心のものだが、現在では戯曲そのものの分析も問題になっているところから、物語を出来るだけ詳細に記したということで、そのため、初心者等にも分かり易くなっている。親切な配慮と言えよう。
早速、「油地獄」を引くと、あぶらのじごく=女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)とあり、大坂天満の油屋河内屋の次男与兵衛が遊女小菊にうつつを抜かし、遊ぶ金欲しさから親しい人妻お吉に借金を断られた末、お吉を殺して金を奪い、小菊と遊びにふけるが逮捕されるという物語である。「みどころ」で、殆ど現代劇といえる生彩を持つと評価され、「成立」を見ると、歌舞伎では江戸時代を通じてほとんど上演されず、明治になって松竹の白井松次郎が二代目実川延若に勧めて復活させたのが今日の上演の起源、とある。あの有名な近松門左衛門作の世話浄瑠璃なのにこれは意外な発見であった。
「一本刀土俵入」は、酌婦お蔦に恩を受けた下級力士が、十年後立派なやくざになって偶然にもお蔦とその家族を助けるという物語だが、「成立」を見ると、初演の六代目菊五郎は、自分で戯曲を読み、反対を押し切って上演し、当たり芸とした。これも興味深い発見。また「鰯売恋曳網」は三島由紀夫作。今では殆ど上演されない元禄歌舞伎の戯曲の様式を現代に再生させることに成功した、とある。
頁を繰っていくと歌舞伎を観るのが楽しくなりそうな事典である。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.04.06)