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ザ歌舞伎座
生誕400年を目前にした、世界に誇る日本文化の華「歌舞伎」。その殿堂、歌舞伎座の内深くまで分け入り、舞台(おもて)と楽屋(うら)を余すところなく写し撮った写真集。ジャパニ...
ザ歌舞伎座
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商品説明
生誕400年を目前にした、世界に誇る日本文化の華「歌舞伎」。その殿堂、歌舞伎座の内深くまで分け入り、舞台(おもて)と楽屋(うら)を余すところなく写し撮った写真集。ジャパニーズ・ワンダーランドへようこそ!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
篠山 紀信
- 略歴
- 〈篠山〉1940年生まれ。写真家。「坂東玉三郎の世界」等、歌舞伎と玉三郎に関する写真集を発表。
〈坂東〉1950年生まれ。歌舞伎俳優。舞踊や映画等、幅広いジャンルで活躍。
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本物のレトロが息づいている
2001/05/29 19:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:てら - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて一度だけ、ご縁があって、歌舞伎座の三階さんの楽屋へ尋ねたことがある。ある有名な役者の部屋子さんへの陣中見舞いだったのだが、当然、自分は歌舞伎座の裏など、見聞するのは何もかも始めてのこと。驚いたのは、そのあまりの古さ。今ではドラマか、マンガの中でしか、お目にかかれないような、立て付けの悪そうな木製の木枠にガラスの扉、石で出来た流し台、くすんだ土壁の色。外観は何度か補修だの、なんだのとお色直しもしているが、さすがに一般の目に触れない、ましてや、その他大勢専門の三階さんの楽屋までは手が回らないのだろうが、それが逆に創建当時の昭和26年当時の趣を平成の今にそのまま伝えているところがなんとも不思議な味を漂わせていた。この写真集に登場する楽屋裏の風呂場のページについ、その時のことを思い出してしまった。普通なら、こんなところを写真集に掲載しようなど、凡人には思いつかないだろう。いつもは「座席の間が狭くて窮屈」だの、「いまどき、エレベータもエスカレータも何も無いなんて」だの、不平不満たらたらこぼしている自分も、この写真集に、相互扶助の心が生きていた、そして、この座席でも窮屈に感じない平均身長が低くても不自由を感じることも無く、おだやかに時間の過ぎていた古の日本人の心の名残を感じて、少し恥じ入るのです。
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坂東玉三郎の案内で、名優たちの「記憶」が立ち込めている歌舞伎座の異形空間を篠山紀信が大胆に切り取った
2001/03/07 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
能などと共にわが国の舞台芸術を代表する歌舞伎の歴史は、約400年前の阿国歌舞伎に遡る。それほど長い間、愛好されてきた歌舞伎だが、演じられる舞台として有名な東京・歌舞伎座が出来たのは明治22年(1889年)だった。歌舞伎はとりわけ江戸時代に発展を遂げ、江戸三座と呼ばれた中村座、市村座、森田座は江戸末期の天保の改革で浅草への移転を余儀なくされるが、二世紀近くにわたって、歌舞伎を広める拠点となった。
現在、東京・東銀座にある歌舞伎座は、明治22年にその地に建設されて以来、大正10年の漏電による焼失を経て、大正13年に新築落成したが、昭和20年に空襲で再び焼失し、昭和26年に、戦前の歌舞伎座を踏襲した様式の日本式大建築としての、新しい歌舞伎座が誕生し現在に至っている。
『ザ歌舞伎座』は、歌舞伎俳優・舞踊家として独自の足跡を残してきた坂東玉三郎を案内役に、歴代の傑出した歌舞伎役者という「聖なる怪物」たちの「記憶」が、隅々にまで立ち込めている歌舞伎座に写真家・篠山紀信が入り込み、その非日常的で異形(いぎょう)の空間の表情を切り取り、白日のもとに晒す、幻惑的なショットの数々からなる。
歌舞伎という舞台芸術にかなり慣れ親しんでいる人、これから歌舞伎の世界に入っていこうとしている人の双方に興味深いのは歌舞伎の裏舞台の表情であろう。この写真集は、歌舞伎を「美女」に見立てると、その取り澄ました「舞台」の表情だけでなく、「美女」の華やかさを生み出す楽屋裏や、大道具・小道具・照明係、衣裳部屋・舞台裏絵描きのスタッフら裏方さんたちの地道で熱意溢れる働きぶりも鮮やかに浮き彫りにしている。
かつて玉三郎自身も子役だったときの記憶を懐かしむ、腰元さんが子役の顔を化粧している「子役部屋」の様子、鳴り物・三味線など歌舞伎の音楽を受け持つ人達の部屋「御簾内(みすうち)で笛、太鼓などを演奏している光景、西陣織、刺繍物など美術品とも言える衣裳が山と積まれている「衣裳部屋」、新之助が『天守物語』の出待ちから出ていくところの「天守物語 奈落下」のシーン、玉三郎が鏡獅子の衣裳を着て自分の楽屋に居る光景、特別に照明の入った空舞台で撮影した花道の様子など、通常では見ることの出来ない歌舞伎座の珍しい表情がふんだんに覗けるのが何とも楽しい。
都会のビルの谷間に独特の風格を示しながら屹立している歌舞伎座という「異空間」について玉三郎は、舞台裏を歩いている時に人知れず積もった埃について「演劇の考古学者のような人が居て、その埃を分析したら、どの名優が何を演じた時の幾日目に積もった埃なのかわかるような気がする」と書いているが、そうした濃厚な「記憶」が、この異空間には幾重にも堆積しているのであろう。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.03.08)