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紙の本
正義と真実を求める異色の(?)弁護士
2001/01/02 21:06
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投稿者:エンドルフィン - この投稿者のレビュー一覧を見る
リザ・スコットラインの「逆転弁護」である。題名からわかるようにはやりのリーガル・サスペンスである。日本人は裁判というと真実を明らかにする所といったイメージを持つが、米国ではまったく事情が異なる。真実がどうあろうと、いかに立証するかがポイントで、陪審員制度ということもあってほとんどゲーム感覚に近い。そう理解していたのだが、この「逆転弁護」はその点がかなり異色だ。
女性弁護士マーク・リクターは、自分の車を強奪しようとしたホームレスを撃ち殺した男エリオット・スティアの弁護を行っていた。リクターは正当防衛を主張、間違いなく無罪の評決がでるはずだった。ところが、陪審が評議に入ったとき、スティアは意外な告白をした。正当防衛などではなく、計画的な殺人であったことをほのめかしたのだった。陪審の評決が出るまでに時間はない。記録的な吹雪に襲われたフィラデルフィアの街にリクターとその同僚の女性弁護士達は真実を求めて出ていった。
といった展開で、ここに登場する弁護士たちは依頼人の利益より、正義と真実を求めて奔走する。従って、主人公も弁護士というより探偵のような活躍を見せることになり、いわゆる法廷物とは異なる。主人公マーク・リクターが弁護士らしいのは、なかなかエンジンのかからない中古のトラックにむかって次のように怒鳴るシーンだけと言ってもいい。
>「動かなかったら訴えてやるわよ!」マータはイグニションを回しながら怒鳴りつけた。今度はエンジンがかかった。
>弁護士資格は、持っていると便利なものだ。
と、ここでは弁護士の本領(?)を発揮している。しかし、全体としてはスティアがなぜ今になってそんな告白をするのかという理由に説得力がないし、最後の結末のつけ方もご都合主義の印象をうける。もう少し緻密な計算が欲しいところだ。ただ、この事件の背景には市長選挙の不在者投票にからむ不正があったことが分かるのだが、そこらが先の米国の大統領選のいい加減さを思い起こさせて、その意味ではタイムリーとも言えるだろう。
なお、海外ミステリに関心のある方は、小生のホームページThe day of wine and mysteryを一度のぞいてみてください。