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商品説明
「自分とは違うもの」になるための装置−仮面。その日本・韓国・中国・インド・インドネシア・スリランカ・ネパールにおける展開を考察し、人々と神々が共に生きるアジア文化の本質を凝視する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
日本の仮面 | 後藤淑 著 | 1-36 |
---|---|---|
韓国の仮面 | 金両基 著 | 37-72 |
中国の仮面 | 広田律子 著 | 73-110 |
著者紹介
広田 律子
- 略歴
- 〈広田律子〉1957年千葉県生まれ。慶応義塾大学文学研究科史学専攻修了。神奈川大学経営学部助教授。著書に「鬼の来た道」「中国少数民族の仮面劇」ほか。
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紙の本
なぜ人は仮面をつけるのか
2001/01/09 19:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤井正史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神が生身の人間として顕現する時、面は不可欠の手段となる。
・・・神は人間の体がなくては人々の前に出て動くことはできないのだが、人間の方も面がなくては神になれないのだ。」(本書より)
いつからか人々は仮面をつけ、演じてきた。そこに現れる非日常的空間は、遠くわれわれの祖先から現代に伝えられた、神々と遊び、庶民からの思いを伝えられることができる貴重な手段であった。本書はアジアに色濃い、多神教の豊かな信仰と美しさを、仮面と芸能、そして芸能の源泉である祈りを探った、アジアへの好奇心大満足の書である。日本の章では、縄文時代の土面までさかのぼり、仏を供養するための芸能として伝来した伎楽の面、後の猿楽などの流行や、能楽・狂言によって大成されていく仮面をめぐる歴史をなぞり、深く掘り下げている。本来の日本人の持つ神や霊に対するスタンスは、欧米化している現代の日本人の貧弱な宗教性に比べると、非常に大胆だ。人と神・霊とが共存している社会を、かつて私たちも持っていたことを再認識させられる。
仮面と仮面劇という文化の伝承を、日本・韓国・中国・インドネシア・ネパール・インド・スリランカの7カ国、それぞれの研究者が担当して分析しているところも、国ごとの特色を際立たせている。アジアとしての共通性と各地域の独自性に焦点が当てられ、仮面劇が演じられる祭りの準備と当日の進行まで、ライブ感たっぷりに書かれているので、宗教・演劇・美術・習俗全般など、様々な面からのアプローチでも興味が尽きないだろう。
各地の仮面の表情や仮面劇は、神道、仏教、儒教、道教、ヒンドゥー教など、アジアに分布する宗教と、各地域の民間信仰が入り混じり、人々の心情や生活を伝えることで構成されている。表現される内容は多種多様で、それぞれの関連性も明らかではないが、社会風刺・異界の人との交流・性に表現された神事・呪術による除災など、人々の願望や成立した時代の社会背景を伝えている。そして、それは現代にも通ずる祈りであることが、人々を今も惹きつける。
アジア各国の祭りの風景を思い浮かべつつ読了し、子供の頃、夏祭りの夜に露店で買ってもらった面を付け、幼なじみと神社の境内を走り回ったことを思い出した。舞楽が奉納されるお神楽の前で、仮面を付けた子供たちが遊ぶ風景は、神々と人が交わる仮面劇そのものといえなくもない。豊かな農村社会の名残りが、東京の下町にもあったのだ。まさにアジア的宗教空間だったと言えるだろうか。