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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.10
- 出版社: 原書房
- サイズ:20cm/295p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-562-03346-0
紙の本
永久の別れのために
資産家の独身女性ベアトリスは、1通の心ない中傷手紙を苦に自殺をはかった。その数日後には、手紙を調査していた男が死体で発見され、容疑は自殺した資産家の遺産相続人の女性開業医...
永久の別れのために
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商品説明
資産家の独身女性ベアトリスは、1通の心ない中傷手紙を苦に自殺をはかった。その数日後には、手紙を調査していた男が死体で発見され、容疑は自殺した資産家の遺産相続人の女性開業医に向けられたが…。正統派の長編ミステリ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
エドマンド・クリスピン
- 略歴
- 〈クリスピン〉1921〜78年。オクスフォード大学在学中にディクスン・カーの影響を受けて書いた「金蠅」でデビュー。著書に「消えた玩具屋」「お楽しみの埋葬」など。
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紙の本
中傷の手紙がテーマの上質なミステリ
2003/01/29 12:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
静かな村の暮らしをおびやかす、悪意を持った中傷の手紙。だれかれなく届けられ、手がかりはたくさんあるようには見えるが警察では差出人をつきとめられないまま。村の宿屋に宿泊している謎の男、ダチェリー氏が調査に乗り出してみるが、手紙がもとで自殺者まででてしまう。果たして犯人は誰なのか? そしてその目的は?
英国ミステリによくある、中傷の手紙がテーマのミステリです。内容もいかにも英国風、主要人物や脇役、ホンのちょっとしか出ない村の人々までとてもいきいきと描かれていて、特に容疑者の女性と捜査する刑事、二人の関係はどうなるのだろう?と、一挙一動にわくわくします。ただ、二人の恋愛模様はいろいろあって盛り上がりますが、事件の調査の側から見ると起伏に乏しいように感じ、良くいえば静かにジックリと、悪くいえば淡々と語られていきます。と思いきや、最後で著者の巧みなミスディレクションと、見事なまでの伏線の張り方に「あっ」と驚かされます。
「何が淡々とだ! 何で気付けなかったんだ!」と自分の読みの甘さにガッカリさせられる、極めて上質のミステリです。
紙の本
この沈み込むような、憂愁のブルーとでもいうのだろうか、その地に、モノトーンの古びた教会の写真、これって完全に海外純文学の風情だよね、ところがギッチョン、ミステリ。ただし、本当に品のある佇まいの小説さ
2003/10/20 20:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、日本で上映される洋画のタイトルが、つまらなくなった。英語に抵抗感を抱かなくなったせいか、原題が単純にカタカナになっただけというものが多い。原題自体が単純な名詞や語句だから、訳しようもないのはよく分る。その点、小説の世界はまだまだ含みのあるタイトルが残っている。
クリスピンの作品『消えた玩具屋』、『お楽しみの埋葬』などは題名だけでも、何だろうかと読みたくなる。その点、この小説は意外性はない。無論、内容が連想されるようなものではない、ただ、どちらかというとワクワクするような、夢のあるものというよりは、ちょっとウェットな実務派とでもいうような。
田園を歩くダチェリー氏が向かうのは、コットン・アバスの村。中傷の手紙が横行するその村で、資産家のベアトリスが自殺をした。教師ペーターに恋する少女ペネロープ、その父で村の景観を破壊する製材所のロルト、開業したものの経営が苦しい美貌の女医ヘレン、彼女の隣人で顔に傷のある好男子のキャスビィ警部、優秀なバーンズ巡査、上司のバビントン大佐たち。
多彩な人々が、何者かが出した中傷の手紙に振り回されるのだけれど、私には、途中からヘレンの恋が軸になるのが、いい。26歳の美貌の女医、しかも失意にあるというのが何ともいえない設定だ。そして強情で、村で孤立するロルトと反抗期の娘ペネロープ、これも現代に通じる構図で、悪くは無い。何といってもイギリスのミステリのいいところは、時間を感じさせない点だろう。
クリスピン、名前の与える感じからも好きな作家だけれど、今回も地味ながら如何にも古きよき英国の田園風景を描いてくれる。私が魅力を感じるキャスビーなどの登場人物たちも、日本の本格推理小説ほど類型化していないのが魅力。小悪魔的なペネロープも、私たちの身のまわりにいるような存在だ。
そして、落ち着いたブックデザインが、また、いい。歴史に残る傑作ではないだろうけれど、読み直しができる佳品とでも言っておこう。その点は『愛は血を流して横たわる 』、『白鳥の歌』にも言えるかもしれない。それにしても、上手いタイトルだ。訳者と編集者に拍手。
紙の本
閉された小さな村で謎の中傷の手紙がひき起す悲喜劇
2000/12/13 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスの本格ミステリー小説の翻訳・紹介については、日本は世界トップと誇ってよかろう。とはいっても、作家別に見ると、どういうわけか陽の当たらない不遇の人もいた。しばらく前までは、エドマンド・クリスピン(1921−78)がその一人だった。
主人公である素人探偵ジャーヴァス・フェンが、オクスフォード大学英語英文学科主任教授という超インテリで、おまけに口が悪くてとっつきにくい人物であることも、人気の出ない理由のひとつだったのかもしれない。ともかく、限られた少数のファンにしか認められていなかった。
ところが、最近になって急にクリスピンの邦訳が増え出した。これも、どういう理由からかは知らないが、わたしにとっては嬉しい驚きである。
表題は直訳すると「長い離婚」で、シェイクスピアの芝居『ヘンリー八世』の中のセリフから取られている。意味は「肉体と魂を永久に切り離す処刑の斧」ということ。
クリスピンは1951年に出したこの小説に、このような表題をつけて、それ以後長篇小説とは長いお別れをしてしまった。そして26年後の1977年に次の長篇を出したと思ったら、その翌年にこの世から永久におさらばをしてしまった。
さて、この作品の内容は表題ととくに深い関係はない。ロンドンから約100キロほど離れた田舎の小さな村に起った事件である。誰もが知り合いの閉ざされた社会だから、よそ者に対しては冷たく、どこか息づまるような空気がただよっている。
そして──これはイギリスのミステリー小説によくある設定だが──住民の誰かれに、無名の中傷の手紙が送りつけられる。こうした小さな閉鎖的な社会によくある陰湿ないじめである。
ところが、それを受取ったひとり、名門の家の独身女性が自殺をしてしまう。
現場に手紙の燃えさしが残されていたが、なぜか封筒が見つからない。さらに数日後に、これもよそ者である若い男の他殺死体が見つかる。
ダチェリーと名乗る見知らぬ男が、ひそかに捜査に乗出す。彼はある人には自分は大学人だと名乗り、別の人には世論調査員だと名乗るが、多くの人はスコットランド・ヤードの秘密の捜査官ではないかとかんぐる。
クリスピンの作品によく通じている読者なら、どうもこの男はフェン教授(全然名前が出て来ないので)の変装ではないかと思うだろう。ディケンズの小説の愛読者なら、ダチェリーという名からハハンとひらめくに違いない。
これ以上種明かしをすると読む楽しみを奪うことになる。村の住人の描写も見事だし、作者の仕掛けも上手、訳文も達者ですらすら読める。クリスピンをこれまで喰わず嫌いで敬遠していた人にも、ぜひとおすすめできる名作。 (bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2000.12.14)