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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1999.11
- 出版社: 青土社
- サイズ:20cm/372p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7917-5772-6
- 国内送料無料
紙の本
生命の尊厳とはなにか 医療の奇跡と生命倫理をめぐる論争
著者 アーサー・カプラン (著),久保 儀明 (訳),楢崎 靖人 (訳)
ヒトゲノム計画、クローン、臓器移植、脳死…。医療の飛躍的な発達は、人類にほんとうの幸福をもたらすのか。自己決定権や介護の問題をふまえた新しい死生観にもとづく「生命倫理」を...
生命の尊厳とはなにか 医療の奇跡と生命倫理をめぐる論争
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商品説明
ヒトゲノム計画、クローン、臓器移植、脳死…。医療の飛躍的な発達は、人類にほんとうの幸福をもたらすのか。自己決定権や介護の問題をふまえた新しい死生観にもとづく「生命倫理」を提唱する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アーサー・カプラン
- 略歴
- 〈カプラン〉ペンシルヴェニア大学教授、生命倫理センター所長。クリントン政権の下「健康管理対策のためのクリントン委員会」などの委員も務める。
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紙の本
生殖・遺伝子医療の歪んだ発展と“活用”,健康保険の営利産業化など倫理なき医療大国の実態を総ざらい
2000/09/13 18:15
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投稿者:尾崎 雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
500年前に死んだ女性ミイラから卵子摘出,死んだ前夫から精子を取って妊娠する,流産した胎児の卵子で出産する,後産の生体細胞の“医学的有効活用”,卵子のヤミ売買,毎年2100億円が不妊治療費に投じられ,3年間で4億9000万円稼いだ医師も,野放しの精神障害者の“人体実験”,性犯罪常習犯の去勢を合法化,メディケア(老人介護保険)費用の10%は不正請求,切断された右手の縫合手術を拒否する自己決定権とは,医師の自殺ほう助をテレビで実況放映,死病の治療を拒否する権利を認める民主主義,人前での授乳はわいせつ行為か——これらは先進民主国家,米国であったこと,ないし行われようとしたことのごく一部である。
真理追究の成果を歯止めなく医療に応用したあげく「奇怪な発想」から良好に保存されたミイラから卵細胞摘出を求める科学者も現れた。ペンシルバニア大学教授・生命倫理センター所長が独特の文体で倫理不在社会が行き着く先について論じた長短119編のエッセイを読むと医療と倫理の間で広がるギャップの深さに驚く。
従来の常識を破る事例ばかりで判断に苦しむが,著者のスタンスは明解。たとえば「ミイラを母親にすることは道徳に反している」。なぜならば「当人の明確な同意を得ないで精子や卵子などの生殖細胞を利用すること,また,それらを用いて胚や胎児を作り出すことは,人間の基本的な尊厳を蹂躪(じゅうりん)する行為だから」である。なにごとにも自由放任,個人の権利を擁護し,社会的調和よりも自己決定権を尊重するとされてきた米国社会だが,著者は違う。著者の座標軸は法理を超えた人間倫理と納税者の公正な利益の確保。無脳症で生まれたため決して助からない乳児の延命治療に莫大な社会資源を傾注したり,社会的公正を欠く行き過ぎた弱者優先治療によって最大多数の最大多数幸福を犠牲にしたりする“人道主義”にはちゅうちょせず疑問符をつける。健康中毒の一般読者には「70代後半や80歳代の高齢者が心臓疾患を予防するため血眼になって食事制限をしながら薬を飲むといったことはあるべき姿なのだろうか?」と問い掛ける。
「プレゼントとしてタバコを何カートンも贈るなどということは,倫理的にはヘロインと注射針を贈ることと何ら変わりない」と断言。「現代医学における選択の自由と品質の確保に対する最大の脅威は,健康管理システムが複合企業による独占に移行している事実にある」と指摘,その脅威は「20世紀初頭において石油,鉄鋼,鉄道産業を推進していた悪徳事業家だけが夢みることができた類のものにほかならない」と説く。我が国でも薬害エイズ事件など企業,医学・医療者,行政の複合的倫理欠如がもたらした凄惨な事実を思い起こせば,それを杞憂とはいえまい。著者は健康管理対策のクリントン委員会および湾岸戦争症候群に関する大統領諮問委員会の委員を務めた論客だが,残念ながら訳文が直訳調なので,残念ながら,手放しでお薦めできるところまでは行っていない。
(C) ブックレビュー社 2000