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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:1999/09/20
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波新書 新赤版
  • サイズ:18cm/260p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-430631-0
新書

紙の本

市民科学者として生きる (岩波新書 新赤版)

著者 高木 仁三郎 (著)

市民科学者として生きる (岩波新書 新赤版)

税込 902 8pt

市民科学者として生きる

税込 902 8pt

市民科学者として生きる

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目次

  • 序章 激変のなかで
  •  京都─長崎─ストックホルム/旅また旅の後で/高木学校を始める/ベッドの上で考える/核の世紀/ 「市民科学者」について
  • 第1章 敗戦と空っ風
  •  花火をみるように/一九四五年夏以前/一九四五年夏以後/復興の過程とともに/父の死/わがアカデメイア/空っ風と赤城山
  • 第2章 科学を志す
  •  文科系? 理科系?/〈学問〉という響き/勉強を始める/ 「受験優等生」になる/時代思想のなかで/数学への傾斜/東京に出る──幻滅のはじまり?/数学志望の挫折/化学を選ぶ
  • 第3章 原子炉の傍で

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評価内訳

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紙の本

「市民科学者」という「方法」

2001/06/13 12:59

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 最近では珍しいほど惜しまれつつ死去した高木さんが、病床で、自分の歩んだ道に想いをはせ、未来への希望を語った本。じつは僕は「きっと〈いい性格〉の人だったんだ。だからこんなに惜しまれてるんだ」って思ってた。でも、この本を読んで、それは間違いだって気付いた。彼は「いい性格」じゃない。頑固でへそ曲がりで、近くにいたら「おつきあいしたくない」タイプだ。それでも「惜しまれてる」のはなぜだろう。彼が「やったこと」がすごいからだろうか。彼は、大学をやめ、「原子力資料情報室」を設立し、核兵器や原子力発電所に反対する運動を進めた。安定した職場を去る度胸。でも、それだけなら「ふぅん」で済まされる可能性あり。反体制的な運動に参加する志。でも、運動した人は沢山いる。それじゃ一体何なんだ。
 ヒントはこの本のタイトルにあった。「専門バカ」って言葉があるけど、その典型としてよく批判されるのは昔も今も自然科学者だ。たとえば、理論物理学者に「そんな難しいことが世間の役に立つのか」。原子物理学者に「あんた方の研究が原爆をつくったこと知ってんのか」。高木さんは核化学者だけど、「専門バカ」になるのがいやで悩んだ。「科学と日常生活の関係」って問題に悩んだわけだ。僕は、こんな大問題に悩んだだけでも、彼は誠実だったと思う。でも、高木さんは、悩むだけじゃなくて答を出した。よく「〈科学〉と〈日常生活〉は両立しない」っていうけど、これは嘘。科学しか知らないのは「専門バカ」、日常生活しか知らないのは「素人」。どっちも足りないんだ。日常生活人(市民)は科学を知らなきゃいけないし、科学者は日常生活を知り、市民の力にならなきゃいけない。科学者が狭く深い知識を持ってるのはマイナスじゃない。市民の目の高さを忘れなければ、知は「専門性に裏づけられた想像力と構想力」になる。自分の知を武器に現状を批判し、「理想社会」を実現するために対案を出すって、プラスじゃないか。こんな姿勢を忘れない科学者、つまり「市民科学者」になろう。これが彼の答だった。これってすごい、そして明るい。
 でも、「理想社会」って何だろう。高木さんは「共生、公正、平和、持続可能性」をキーワードに挙げる。「個々の人間が尊重される」ってことだろうか。科学技術が進歩しすぎ、企業が強すぎ、国家の論理がまかり通る、閉塞した今の日本社会。だからこそ、自分で考える自立した人間にならなきゃいけないんだ。ただし、間違っちゃいけない。彼の「理想社会」と最近流行の「自己責任の社会」は違う。自立したら、今度は周囲に目を向け、社会に責任を持ち、ひろく手をつなぎ、「新しい公共性」をつくるってしごとが待ってる。「自己責任」に閉じこもるわけにはいかないんだ。それじゃ、どうやって「理想社会」をつくればいいんだろう。高木さんは最後に「市民科学者」を育てる「学校」をつくった。「自分が持ってる知識」を「次の世代につなぐ」ことを選択したんだ。彼は、自分の力の限界を認識したうえで、「何ができるか」って考えた。しかも、これって「実際に〈新しい公共性〉をつくろうとする」ってことじゃないか。これまたすごい、そして明るい。
 高木さんの死去が惜しまれてるのはなぜか。「いい性格」だからじゃない。「やったこと」はすごいけど、それだけじゃない。「方法」を考えたからだ。「市民科学者」のあり方を考え、「理想社会」への道筋を考え、それを実現するための方策を考える。そして実行する。ここまで来るのに彼は壮絶な苦労をしてるから、「明るい」っていうのは不謹慎かもしれないけど、やっぱりこれってすごい、そして明るい。書評は本の問題点を指摘しきゃならないんだろうけど、みつからない。困ったけどしかたない。というわけで、当然評価は「五つ星」。

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紙の本

科学者・技術者にとっては重い自伝

2001/03/01 15:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:橋本公太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本は、核化学者であり、原子力企業→大学教官の道から一転して反原子力運動家となった高木氏の自伝である。この本は大変読みやすい。そして、重い。特に、科学者、技術者にとっては。
 私にとって、特に共感できたのは、彼が会社で研究をしていて、会社のシステムに疑問を持ったところである。彼は、日本の会社では「個」が見えないと言っている。このような日本型企業の問題点は、今でも残っている。
 この本は、大学助教授の地位を捨てるところまでは、しっかりと書かれているが、その後の反原発運動の部分、市民科学者としての活動の部分は意外とあっさりと書かれている。おそらく、この部分は、別の本を読めということであろう。
 科学者、技術者が読めば、考えされられることが多い本である。ぜひ、一読を勧めるが、この本を読んで、自分の生き方に悩みすぎないようにしてもらいたい。

インチキ化学者の独り言より

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紙の本

人はどうすれば成長できるのか答えを得たような気がします。

2006/10/08 23:23

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:朝光 - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の高木氏は、原発・核化学の研究、開発の先端に居た時に知った事実と、
国や会社が発表する「安全神話」のギャップを、自分が潰される可能性も恐れず
に専門家の立場から発信、指摘して来た人です。

国民が一方的なキャンペーンや情報(昔の大本営発表を彷彿とさせます)に
踊らされるのではなく、反対側の情報も踏まえて健全に議論ができる社会に
したいと願っていました。

例えば電力会社の原発建設計画への反対をしている地元住民に対して買収や
村八分工作など様々な圧力が加えられます。これらに対して高木は以下の様に
書きます(抜粋です)。
”これらの背景には、すべて「国益のため」という大儀(と称するもの)がある。
電力の安定供給は国家経済の要である。これに反対するものは非国民だ、という
居丈高な主張がある。「迷惑施設」を引き受けるのを拒みながら、自分はその
”恩恵を享受し”、日本の高度経済成長による繁栄にあずかろうとする。これは
地域エゴだという。実際には電力の大消費地は、東京などで、これらの地域は
一方的な供給地域にすぎないから、「恩恵云々」は暴論と言ってよい議論である。

この議論の仕方は、私たちが半世紀前の戦争の体験を通して学んだはずのものを、
すでにすっかり転倒させており、個人の人権や思想に基づいて国家があるので
はなく、国家のもとに個人があるという思想だ。エネルギー政策というならば、
個々の人がどういうエネルギー政策を望んでいるかという議論が先にあるべき
である。私が感銘を受けたのは、私より年上のいわば戦中世代の人達の間に、
このような国家主義に反対し、一人でも断固として土地を売らず、農民が大地
の上に、あるいは漁民が海に生きる権利を主張し続ける人々が存在したことだ。
しかも、彼らは、実によく勉強していた。”

又、最近の政治に対する危機感としては、

”日米防衛協力の為の指針、いわゆる新ガイドライン関連法案の成立によって、
戦争参加の道が一挙に開かれ、さらに、「君が代」、「日の丸」の法制化や「盗聴法」
と、私たちの少年時代には考えても見なかった方向に政治が転回している。
しかも、人々は概して静か過ぎる程静かである。結局、私たちの世代も、それ
以前の世代の過ちを、何も教訓化し得なかったのか。
そして、”なるようにしか成らない”という諦め感に流され、又、商業主義に
よって作られたメールやゲームなどの新しく創造された欲望への充足の娯楽に
のみ誘導され、本来の生きがいと関係ない生き方になってきている”と述べます。
人は経験を踏まえて、どうしたら成長してゆけるのか? 又は、戦争などを
経験してもなぜ多くは成長しないのか? がやっとスッキリ分かる本に出合え
た気がします。
評論などではない、”生きザマの迫力”が伝わってくる一冊です。

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紙の本

科学と科学研究者の意味を問いなおす

2005/05/26 16:19

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:西下古志 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、2000年10月8日に亡くなった高木仁三郎(1938年−2000年)が、第二次大戦敗戦前夜から、1997年にライフ・ライブリフッド賞(RLA)を受賞し、翌年、「市民科学者」を育てるための高木学校を出発させる前後までのみずからの歩みを語った、いわば自叙伝と言ってもよい著作である。ほとんどの部分は、癌との闘病生活を送るベッドの上で書かれたという。
のちに「反原発」「脱原発」の指導的論客、市民活動家として活躍する高木も、東京大学理学部で核化学を専攻する科学者として出発する学生時代、また日本原子力事業株式会社から東大の原子核研究所を経て東京都立大学理学部に助教授として着任する会社員、教員の時代には、かならずしも原子力産業に対して批判的なまなざしを持っていたわけではなく、本書の標題にあるような「市民科学者」としての自覚を持っていたわけではなかった。本書の前半で語られている都立大助教授を辞職する時代までの高木は、自立した個人の確立、また、科学者としての自己の確立を模索し続ける少壮研究者であった。
高木の人生が「市民科学者」へと大きく変わっていく契機となったのは、成田市三里塚で空港建設反対運動をおこなっている地元農民たちとの出会いと、宮澤賢治の世界との邂逅であった。高木は、ハイデルベルクにあるマックス・プランク核物理研究所(MPI)への留学後に都立大を辞め、「市民科学者」としての道を探りながら、プルトニウムをはじめとする原子力の問題にとりくみ、市民の日常生活の場に立脚点を置き、原子力発電、原子力産業への徹底的な批判者になっていく。
高木も参加して創設された原子力資料情報室は、かれの活動の根拠地となった。まだ「NGO(非政府組織)」といったことばもない時代、この原子力資料情報室は、日本のエネルギー問題、環境問題にかかわる運動のなかで大きな役割を果たした。本書の後半では、NGOの先駆的存在とも呼ぶべき原子力情報資料室を足場とした「市民科学者」高木仁三郎の軌跡が語られている。その活動の過程で、国を越えた人と人とのむすびつきの意味や、国民の生活をないがしろにする陰湿な行政や企業の実態、さらには、高木自身が直面せざるを得なかった、市民運動のなかで自然科学を専攻する研究者としてのどのように自己の意味を見出していくのか、といった問題が述べられている。
本書は、ごく普通の日常生活のなかに基盤を置き、そこから出発してそこへと戻ってくる「科学者」というあり方が、可能であるのか否かを、高木自身の経験に即して問いなおしているものと言えるだろう。学問が細分化していくなかで、自然科学が、人間と世界のあり方を根本から問い直す学問分野とのむすびつきを失って自己目的化する傾向がますます強まり、また同時に、大学が教育・研究の場ではなくなり、学生という名の「投資家」が企業で評価されるスキルを身につける場へと大きく変貌しつつある現在、本書での高木の問いかけは、「科学」や「学問」、「大学」と社会とのかかわりにとって大きな意味を持つだろう。
高木の主要な著作は、2001年から刊行が始まった『高木仁三郎著作集』全12巻(七つ森書館)に収められている。

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紙の本

市民と科学者の引き裂かれ

2001/09/22 19:46

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:24wacky - この投稿者のレビュー一覧を見る

 市民化学者という耳慣れぬ言葉と共に、著者の後半生は語られる。この言葉は科学者という存在が実は市民ではなかったことを浮き彫りにさせ、国家に庇護された科学者=体制側への批判と、先人の未だ踏み入れぬ荒地を満身創痍で前進する個人、その二者の対立をも含意する。
 そもそも原子核化学の研究に燃えていた若き日の著者には、周囲同様、核の脅威には無頓着であった。木を見て森を見ず、自らの課題に没頭する毎日であった。が、個人に忠実な本来の性質が、矛盾を抱えた組織への違和感となって現れる。その違和感はさらに国家の原子力開発そのものに向けられる。翻って社会へ目をやり、市民として三里塚闘争に参加する。そして花巻農学校の教師を辞任し、郊外で農民と共に耕し、学ぶ道を選んだ宮沢賢治の言葉から、職業的科学者の衣を脱ぎ捨てる覚悟を持つ。
 1975年、「原子力資料情報室」を仲間数人と立ち上げた際にも、著者の「見る前に跳べ」、「走りながら考える」性分は直らなかった。スタートさせたものの、どのような方向性にすべきか、まったく定まっていなかったのである。資料室というからには、様々な原子力関係の情報を収集し、管理する。それを行うメンバーのサロン的な場所。大方の意見はそういったものだった。情報室をどうすべきかは、そのまま著者自身が何を目指してどう行動していくかという問題とほとんど同じ軸であった。ここに大きな葛藤が生まれる。「科学者としての専門性とただの一市民としての感性や視点をどう両立させうるのかという、決して容易でない」個人的問題。同時に、情報室は「研究調査の専門機関なのか、反原発のためのキャンペーン組織なのか、という問」がつきつけられる。
 この葛藤は著者のその後に悪友のようについて回る。チェルノブイリ以降の世界の反原発への趨勢にせきたてられながら、悪友はなおも纏わりつく。国・政治という大きな壁への挫折。専門家と運動家両側への引き裂かれ。この悩みはまわりの誰にも共有してもらえない。やがて著者はプルトニウムという原点に帰ることでこの悪友におさらばする。自分の専門の間口をひろげ過ぎたという反省に立ち、「運動のリーダー」を過度に背負い込むこともやめることにする。
  といって、もちろん、「専門家」に徹し切るつもりはなかた。一人の人間として、一市民活動家の立場は、すでに自分から取り除くことのできない身体の一部のようなものになっていた。それなら、専門家と市民、時計とかな槌という二足のわらじをはくのではなく、やることの範囲を絞ったうえで科学者=活動家といった地平で仕事をすることも可能ではないか。いや、そこにしか自分が今後生きていく道はないのではないか(P.174)。
 平凡過ぎるかのこの結論も、実は我々各自に突きつけられていることを忘れてはいけない。文明が発達(退化?)した時代で、人は「市民」と「専門家」の両方を併せ持って生きている。というより、その両者に引き裂かれて生きざるを得ない。その専門性が増せば増すほど、それ以外のことは何も分からなくて済ませている。この文章はパソコンで書かれているが、私はパソコンの仕組みについてほとんど何も知らない。市民になるためには専門家という言葉に括弧を入れなければならない。そうした後の市民とは?我々は普遍的な市民となり得ているだろうか? 
 

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紙の本

日経ビジネス1999/10/11

2000/10/26 00:19

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野口  均 - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の高木仁三郎氏については、かねて関心を持っていた。チェルノブイリの事故で原発の安全性について関心が高まったころ、氏はテレビの討論番組に反原発の立場でよく出ていた。肩書は原子力資料情報室代表(現理事)とあるだけで、原子力発電という巨大な国家プロジェクトに対して、どんな政党にも機関にも頼らず、在野の一科学者ということだった。
 一体どういう人だろうと長らく疑問を抱いていた。氏は東大で核化学を専攻した後、日本の原子力開発の創成期に日本原子力事業(後に東芝に吸収された)で原子炉で生成される放射性物質の研究に取り組み、その後東大原子核研究所に転じて宇宙核化学の研究で成果を出し、1969年30歳で都立大の助教授にスカウトされた人物だった。俗な言い方をすれば、この時点で学会での将来は保証されていたと言っていいだろう。
 だが、高木氏はドイツに留学してやりかけた研究の決着をつけると、慰留を振り切って73年に都立大を退職してしまう。なぜか。それが、本書に書いてあるわけだが、一口で言うと科学者の責任ということだろう。責任と言っても、家族に対する責任、給料をくれる会社や組織に対する責任、 社会人としての責任といろいろあるが、この場合は専門知識を持った者の責任と言ったらいいだろうか。
 もし医者が、売り上げが上がるからと必要もない手術をし、必要もないクスリを投与したとすると、病院経営者としては責任を果たしているが、本来の医者としての責任を果たしているとは言えない。同じことが企業内で、研究機関でさまざまな研究開発、巨大プロジェクトを遂行している専門家たちにも言えるのではないか。会計士、法律家 、経営者、エコノミスト、ジャーナリストなどにも言えることだが、原子力や遺伝子などの地球規模でしかも何世代にもわたって深刻な影響を及ぼす分野の研究者の責任は、重さが違う。
 本書には、高木氏が自分の道を突き進もうとして、壁にブチ当たっては煩悶したさまが赤裸々に語られている。暗澹たる気持ちにさせる組織的な嫌がらせや、昨年夏発病したガンとの闘い、そこから得た新たな心境についても語られている。しかし全編を通じて、群馬県の前橋で過ごした少年時代のちょっと反抗的でやんちゃな高木少年の面影がこだましている感じで、けっして暗い印象はない。こんな時代にこういう人物がいるのが、不思議である。いや、こんな時代だからこそ、出てきたのだろう。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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