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紙の本
おしどり探偵という罠
2002/07/10 19:24
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投稿者:あさの - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼少期、父親とともに拉致監禁され、しかも目の前で父親をなぶり殺しにされた少年二人が、長じて真の犯人を追求するために犯罪に手を染め……という話。この少年たちを救出したヒーローであるにもかかわらず(というかそのためにというか)、拉致されて薬づけにされるのが、主人公、アイリーン・ケリーの夫、フランク。だからストーリーは、夫の身を案じ、警察と打々発止の戦いを繰り広げながら夫の探索を続けるアイリーンの活躍が描かれている。五作目なことを考えても、とりあえずアイリーンとフランクのおしどりぶりはもはや一種の『ウリ』になっているはずで、ともすれば(おしどり探偵ものにありがちな)マンネリ……というかなあなあで、途中から読んだ読者を爪弾きにしてしまうような傾向は、この作品に限っては、かなりない。つまり、前四作の話もちらちらとエピソードとして出てくるのだけれど、かなり興味深い出し方で出てくる。他のを読んでない人は仲間に入れてやらないよ、じゃなくて。多分、前シリーズ読んでても、それらのエピソードは新鮮なのでないかな。
ハードボイルドミステリーで、気が強くて頭の切れる女主人公というのは、面白いのだけど、かなり肩がこるのも確か。多分、ハードボイルドという分野がもともとは男性のものだったからかもしれない。強がりも、やせがまんも、時々爆発する怒りも、そして怒鳴り声よりも怖い静かな怒りも、男ならなんとなくサマになるんだけれども、これを女性がやると、どうもちぐはぐに感じる。(ヒステリーが延々続いてるように思える)がんばってもがんばっても苦しい、とか、男社会で傷ついてます、わたし、みたいな側面が覗くことがままあって、それが女が主人公のハードボイルド系ミステリーを息苦しくさせてるような気がする。アガサクリスティの時代の女探偵はもっと洒落ていた。というか、したたかだった。もっと徹底的に男を馬鹿にしていたしね。
だから、この手のハードボイルドは、女主人公に思い入れできなくて、読んでる最中、なんとなく辛いのだけど、この小説は、それを全て凌駕するくらい、周りの男性軍がチャーミングだった。
中でもネゴシエーターのキャシディは秀逸です。一人でブランコに乗ったり、昔の恋人の死の夢を見ては夜中にかけだしたりね。
そしてフランク。いや、もう、人質の鏡。
作者自身、フランクは、探偵に情報提供するだけの役(刑事)ではない、と言い切っているし、そういう意味では彼がこの小説の主役なのかも。
そしてブレッドとサミュエル。
沈黙は人の心を殺す。そして結びつける。二度と解けないくらいに固く。