紙の本
痛々しいほどひたすら夢を求めた生方に感動
2003/07/04 19:44
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投稿者:天野若 - この投稿者のレビュー一覧を見る
劣等感をばねにした一匹狼のアルピニスト森田勝氏の壮絶な人生を描いたノンフィクション。世の不条理に怒りを叩きつけるかのように岩壁に挑戦し続けた天才クライマー。痛々しいほどひたすらに自分の夢に向き合うがゆえ、自分にも他者にも一切の妥協を許さない。山に対する執念が生きること、そんな修羅の生涯が言い知れぬ感動を与えてくれる。
偉業を成し遂げた「三スラの神話」は、読んでいて胸が痛くなる。邪気のない純粋な気持ちとはいえ、あまりにも不用意に近しい人を傷つけてしまう。当時、困難というより雪崩が集中する極めて危険なコースである谷川岳滝沢第三スラブ(三スラ)の積雪期初登攀に成功した時、有頂天のあまりパートナーの前で 「終わってみればオレ一人で登ったようなものだ。オレが三スラを登ったのだ……」 と、しゃべりまくる。深い劣等感ゆえの極端な優越感なのか。何故「オレたちが…」と言えないのか。
彼が言葉にしたことは真実であり、思っていること。しがらみや思惑、損得勘定にがんじがらめの身には、「ちょっと違うんじゃない」と思う反面、羨ましくさえなる。
「K2下山劇」は“組織と個人”の問題として興味深い。
エベレストに次ぐ世界第二の高峰 K2遠征隊において、第二次アタック隊に選出された森田氏は、一次でないことが不満で、リーダーの懇願を無視して山を降りてしまう。“チームの使命と個人の夢”、損得抜きに自分の心にあまりにも忠実で、周囲の迷惑などにはまったく思いが至らない。組織にはまったく不向きな性格だ。それでは何故、彼は単独行者とならなかったのか。
「彼は一人孤独に瞑想にふけるタイプではない。山でも、誰か落ち着いた人がそばにいてくれないとヘマをやる。パートナーがいた方が、技術を十二分に発揮できる。そういう意味で、単独行には向いていないクライマーだったんです」
「世渡り下手というか、先を見る目がないというか、そういうところが山でもあった。参謀がいて、それ行け、とやると先頭を切ってみごとに働くが、自分で作戦を練ってやるとなると弱点が出てしまうんです」
「彼自身は単独行に憧れてはいた。しかし、淋しがり屋だからダメなんです。気質的にいって、単独行は合わなかったんじゃないでしょうか」など、ザイルパートナーたちの証言が記されている。
組織になじめず、かといって単独行者にもなれなかった悲運の人生のようにも思える。しかし、ひたすら夢を追い求めグランドジョラス北壁に42歳の命を散らした生き方に共感する人は少なくないだろう。そして、私もそのひとりである。
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この本は、元の本が文庫で残り、ハードバックはヤマケイから「ヤマケイ・クラシックス」という復刻版で出ているというシリーズのうちの1冊である。
グランド・ジョラスで亡くなった森田勝氏の一生を克明に描いたものです。
なんつうか、正直な感想として「イタイ人」という感じがした。
こう、生き方がぎごちなくて尖ってて、そして、ついに亡くなってしまった、というのがとても痛かった。
同じ内容の本が文庫で出ているわけですが、その評価はAmazonの書評のとおりかなり高い。
これは岩をやる人にとって森田さんは神だからなのか、と思う。
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神々の山嶺の主人公のモデルと言われる登山家を描いているために読んでみた。実際のエピソードを元に神々の山嶺が描かれているのがわかるが、相互に同じ表現が使われている部分が散見されるのは偶然ではあるまい。
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「神々の山嶺」主人公のモデルになったアルピニスト 森田勝氏の物語。著者佐瀬稔氏の彼への愛情が伝わってくる一冊。
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「行かないよ、ぼくはもうグランド・ジョラスには行かないよ」。ええ‥、生活が成り立ちませんこの人。命がかかってるようなことばかりやってると普通の日常に興味がなくなるってあるスポーツ選手が言っていました。そういうわけだけでもなかったみたいだけど生活すべてなげうって山に。長谷川恒男に先を越されまいとやってきたグランド・ジョラス。「落ちる!」と感じた直後、激しい衝撃がきて、そのあとのことは覚えていない。そして再び。一匹狼、悲しいが人間臭さがいい
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『神々の山嶺』の主人公 羽生丈二のモデルとなった『森田勝』の生き様を描いたノンフィクション。
純粋で傷つき易く不器用な主人公は、
あまりに自己中心的に、愚直に、がむしゃらに『壁を攀じ登る』
『不運な』自分の存在証明か?
しかしある時点から、
トップを後輩に譲る気遣いも獲得し、不思議と人が集まってくる。
長谷川恒男に対するライバル心なのか、
ソロで退廃し、壮絶な戦いの末に生き延びたグランドジュラスに、
再び挑み帰らぬ人となる。
なぜソロでの再挑戦ではなかったのか?
なぜ若いザイルパートナーを伴ったのか?
それほどに成功させたかった。
もはや、ライバルは長谷川恒男ではない。
やはり、人間くささの点ではノンフィクションの勝利と思えます(私の中で…)。
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登山家森田勝の生涯を追った一冊。
彼の岩への執着は凄いものがある。
登山を見付けた彼は、社会からはずれ登山へとのめりこんでいく。
ここまでの生き方は並の人にはできないのではないか。
長谷川恒夫と競ったグランドジョラス。
2度目の挑戦で帰らぬ人になってしまう。
今の時代、彼のようなクライマーがいるのだろうか。
人生を太く短く生き抜いた人だったと思います。
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小説「神々の岩稜」中の登場人物 「羽生」のモデルとなった人物。
山に登る事だけにその人生を費やし、常に自分に降りかかる逆境を払いのける為に、戦い続けた氏の生き様は正に壮絶。
年をとっていくに従い、様々な事柄を自分の中でうやむやにし、次第に諦めていく。それが普通の人だと思いますが、氏はそれをしなかった。格好良い男の生き様とはこういう生き方をなのではないかなと思います。
「神々の岩稜」を読んだ時、「こんな人がいたら凄いな」と思っていましたが、実在していました。
「神々の岩稜」を読んだ方には、是非一読をお勧めします。
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(以前の管理履歴から引用)
amazonにてゲット。星4つだけど、星4.5。
神々の山嶺の羽生のモデルになった人。
緑山岳会は今もあるけど、
昔はホントにピーキーだったんすね。
人を愛するが故の孤独と、
突き刺さるような山行への熱情が胸に迫る。
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純粋で不器用であるがゆえに人に誤解され、でも人一倍さみしがりやな森田勝の人柄に惹かれた。本人の熱い気持ちとは裏腹に、不運なまま終わってしまった人生がもどかしい。
ここまで一つのことに一途になれる人ってうらやましいと思います。
「神々の山嶺」のモデルになってるとのことで、こっちも読んでみたい。
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1937年に生まれ、1980年にアルプスのグランド・ジョラスで転落死した登山家・森田勝の一生を辿る一冊。初版は1980年。
貧しく、学歴もなく、コンプレックスを抱えていた男は、登山で結果を出して自分を支えようとした。ひたすら山に登り続け、山に生き場所を求めた。孤高の登山家に人が期待する高い精神性を有していたわけではない。さびしがりやで人なつっこく、そのくせ空気が読めずに衝突を繰り返しては人を遠ざけた。目立ちたい、人に先んじたい、という俗な欲求も強く、自分が理想とする登山のためには人の迷惑を顧みず、登山隊のなかで規律違反さえ犯した。彼を嫌い、否定する人も少なくない。しかし、山に懸ける純粋な想いだけはだれもが認めるところであった。どうしょうもなく不器用で一途な山男の姿が浮かび上がる。
健康登山がせいぜいの私には、この本に描かれているような登山は無縁の世界だが、限界に挑む男たちの生き方に心惹かれた。
『神々の山嶺』の主人公・羽生丈二のモデルであもある。
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人としては尊敬もできないし、たぶん近くにいるとムカツクタイプひとだろうが、一つのことに純粋にひたむきになれる姿には羨ましさを感じずにはいられない。
ちょっとだけ自分に似てる感じもするなぁ。
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世渡り下手
子供のような純粋な心、少年のようなひたむきさ
単独行には向かないクライマー、淋しがりや
人と心を通じ合う才能
アルピニスト・森田勝さんの物語(ノンフィクション)
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孤高のクライマー森田勝。一匹狼として名を馳せた男がたどった修羅の生涯を、迫真の筆に描く山岳ノンフィクションの名作。 神々の山嶺の後から読みましたが、こっちの方が熱いですね。
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神々の山嶺の羽生のモデルの人。
文章いう枠を通してみると魅力的に見えてしまうが、
周りにいて付き合いたいかと思うとやっぱり無理だなぁ。
ほかの人も書いてたが、
山野井氏みたいにソロに徹し切れなかったところが
悲劇なのかもしれない。