紙の本
新しい常識。
2019/06/28 21:58
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投稿者:雨宮司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、網野氏が生前にこの著書を完成させた意義は大きい。ともすれば農業一辺倒で他の職業はなおざりにされがちな歴史で、こうした言わばからめ手から、歴史を包括的に繙いていった点が独特であり、その困難な作業を着々とこなしていった労に、まずは素直に感服の意を表したい。疑問だらけだった日本中世史に、ここまで多様な視点から新鮮な光を当てたのは見事の一語に尽きる。……えっ、これらは歴史の授業で習ったって? 幸運な時代に生まれたのですね。それは新しい教科書でしょう。この本は、それらの新しい教科書が持つ、複眼的視点に寄与した著作のひとつなのです。もう刊行されてから20年以上過ぎましたが、まだまだ輝きを失っていません。名著の条件です。
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日本列島の東西における差異に注目して、日本と日本文化を再検討した網野史学の代表作です!
2020/04/08 10:49
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、我が国の歴史学の第一人者とも言われる網野善彦氏による代表作の一つで、日本列島の東と西で生きてきた人々の生活や文化に見られる差異が歴史的にどのような作用を及ぼしたのかを考察した画期的な内容の書です。実は、網野氏は同書の中で、「日本人は同じ言語・人種からなるという単一民族説にとらわれすぎていないか?」と私たちに問います。そして、日本の東半分と西半分における文化的な差異に注目して、日本というものを再検討していきます。同書の構成は、「1 はじめに」、「2 ことばと民俗―東と西の社会の相違―」、「3 考古学からみた東と西」、「4 古代の東国と西国」、「5 しゅう馬の党と海賊」、「6 東の将門、西の純友」、「7 源氏と平氏―東北・東国戦争と西海の制覇」、「8 東国国家と西国国家」、「9 荘園・公領の東と西」、「10 イエ的社会とムラ的社会」、「11 系図にみる東西」、「12 東は東、西は西」、「13 東と西を結ぶもの」、「14 東国と九州、西国と東北」、「15 東の文化と西の文化」と興味深いものとなっています。
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日本は一つの国にあらずってか
2021/11/13 00:51
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の他の本にも書いてある、
百姓は農民にあらず、という話に始まって、
東北と西日本、東日本と九州、
という二つの組み合わせは、
それぞれに親和性が高い、とか、
婚姻関係は、東日本出身同士、
西日本出身同士が圧倒的に多い、
とか、雑学的な知識としても面白い
ことが沢山書いてあって楽しく読めました。
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西の国と東の国との対立と牽制の中から、日本の歴史を見る。西の国と東の国の方言の違い、習俗の違い、考古学の西と東、古墳の西と東の違い、東国と東北の「蝦夷」の征服と対立。■東の陸上軍としての源氏と西の海賊的武者としての平氏、東国のイエ的社会と西国のムラ的社会、縦支配の東国と横支配の西国、職人世界の西国と職能世界の東国、などなど、日本史の再検討と再体系を提示する興味深い歴史的具体的な論文的エッセイ。■筆者にとっては、奥州藤原氏が繁栄を極めたのか、また何故源氏に滅ぼされなければならなかったのか、その点について、理解しかねていたところ、網野善彦が、東国と西国の認識の枠組みを提供してくれたことのよって、系統だって理解できた。■東国は、九州との類似性が強く、そして、西国は、東北との繋がりがあるのだという。それは、歴史的に明らかにしていく後世のものたちに委ねられた「歴史」の像の建設にある。つまりは、「歴史」は、まったく持って「現在」のことでもあるのだ。国家が出仕上がって行く過程で、中国から東南アジアまでの行き来をするであった海洋貿易によって立つ日本が、海を国境として認識していくことになったという網野の視点は、国家の存在様式を考える上で、非常に重い指摘だ。■西国は、「日本化される」以前の状態は、朝鮮や中国との交易によることが大きく、朝鮮文化との同一性が強かったのである。西国のムラ的な繋がりは、横への繋がりが強く、上からの中央的な「秩序」の権力の構造に適応していなかったのである。応仁期以降、堺の自治、京都、奈良、倉敷、大阪などなど独自の非中央的な地域文化が発達する。■これは現代であっても、通じることだろう。非営利的な特定法人に対しても税の負担を求めることなったが、どうもそれについて納得できないのだが、話がそれた。
■応仁の乱以後、職人国家としてしての東国のあり方と西国の非人と職能、「職人」たちの諸国を自由に通行交易できる特権が、室町期に「特権」を「由緒書き」として特定の権威ある人物と結び付けて持つようになる。■東国は源頼朝であり、西国は、神話伝説上の天皇、皇后、皇子であることが多い。年貢の納め方の東国西国の違い、非水田的な絹、布などの繊維製品によって納めた東国と米年貢で納める西国、曹洞宗の広まった東国と一向宗の広まった西国、西国と東国の社会のあり方が、同じ日本でこれほどに違っていることに驚いた。そうした「大人」の読む歴史的視点を提供してくれている。
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網野善彦さんの本で「日本の歴史をよみなおす」が面白かったので、読んでみることにした一冊。こちらは少し学術色が強いので、日本史を良く覚えていない僕には難しかった…が、読了後の気分はよいです。
この本で網野さんは、東と西では言語・社会・文化の成り立ちに違いがあり、現在僕らが思うような単一民族的な「日本」という感覚がなかったことを様々な資料を使って教えてくれます。
日本の歴史が面白いと感じられる一冊。また別の著作が読みたくなりました。
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日本の東と西では、簡単には埋められない違いがあるのでは?ということを様々な例で提示してくる好著。例えば、関西の系図には女性の名前も、出自も嫁ぎ先も記載があるのに、東国ではほぼ男性のみ。家族のありかたにも東西の違いが明確にでているようです。
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網野善彦先生の本です。
歴史や考古学、民俗学、社会学など、著者の意識の幅広さがよくわかります。
文庫版前書きでも書かれていたとおり、琉球やアイヌは話題にしていませんが、それでもあまりある内容。
日本の東西の文化の違いは、縄文時代から分かれていたとか凄すぎる。
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ようやく読み終わった。100頁頃まではダラダラだったが、そこから一気に読み進められた。やはり一気に読んだ方が、内容が掴みやすい。歴史に中立などありえない。歴史を叙述するということは、ある世界観や認識の体系に自ら与することである。東日本のイエ系社会、父系社会と、西日本のムラ系社会、母系社会の対比。韓国、中国、北方との、日本各地の地理的に対応している部分との交流の歴史、それが江戸時代の鎖国という体制下で閉ざされたこと。日本の政治家たちは、恐らく史観を持ち、大局を見据えた政治判断をしてきたのだろうと想像する。統一日本という形を作るには、鎖国はやむを得なかったのではないか。しかし、それが現代日本に至るまで、排他的風土を遷延させてきた一因かもしれない。一方で、交流というと聞こえが良いが、侵略を受ける可能性もあったのであろう。そして、現代でも、国際秩序という規範の下では、軍事増強、核問題、資源確保など、国の線引きを前提に派生する問題は山積している。地球的視野という考え方は、一人一人の地域住民が持ち得るのだろうか。
そんなことに想像を巡らせた、読了後の感想。
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古本で購入。
フォッサマグナを境とした東と西をそれぞれ独自のものとして捉え、如何なる相違が存在し、互いにどう関係してきたかを述べていく。
環境考古学の成果によると、東西の文化の相違は既に2万年前にはその根を持っていたとか。
細石刃文化から見ると、東には北方の亜寒帯的要素が、西には南方の温帯的要素が強く結びついていたという。
こうした地域差は縄文時代に入ってからも歴然と受け継がれていく。
東と西の相違は多岐にわたる。
東の「畠作」と西の「水田」。
東の「馬」と西の「船」。
東の「馬を操る盗賊」と西の「海賊的武者」。
東の「主従制・惣領制国家体制」と西の「座的結合・職能国家的性格」などなど。
東国の独自性を主張し、在地領主のイエ的・家父長的な支配を強調してそれに基づく主従制原理に貫かれた武家政権を軸に中世国家を捉えようとする研究者たちの多くが東出身。
対して、座的な構成を持つムラ、村落の平民百姓を支配下に置く荘園・公領の支配者、公家、寺社、武家などによって相互補完的に形成される権力として中世国家を理解しようとし、「日本国」意識を強調する研究者の多くが西出身。
このように、中世史研究者の中においでも東と西の相違は鮮やかなのだという。
ちょっとトンデモ説のようではあるが、話としてはおもしろい。
また東国と九州、西国と東北の結びつき、というのもおもしろい。
南北朝期の日本列島を巻き込んだダイナミックな動きが、これを前提にしていたというのは初めて知った。
多くの研究を引きつつ(書かれたのが30年近く前なのでだいぶ古いが)展開される東西の相違・独自性は、実におもしろい。
ただ、「なぜこれほど東西で異なるのか」というところまで言及されていないのが惜しい。
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再読:平成26年1月29日
気になった箇所が。
P269 ・・・若狭の小浜には、応永十五年(1408)、「亜烈進卿」という名のパレンバンの「帝王」の遣わした「南蛮船」が着岸、「生象一疋黒、山馬一隻、孔雀二対、鸚鵡二対、其他色々」を日本国王に進上している。・・・
という記述が・・パレンバンから若狭まで来てたなんてすごいですね^^
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1593439
東と西の語る日本の歴史
著者: 網野善彦
発行年月日:1998/09/10
サイズ:A6判
ページ数:340
シリーズ通巻番号:1343
ISBN:4-06-159343-9
定価(税込):1,155円
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<目次>
学術文庫版まえがき
一 はじめに
くらしのなかの東と西
単一民族説への疑問
ゆがめられた日本史像
地域への視点
二 「ことば」と民俗ー東と西の社会の相違ー
二大方言の対立
人口の移動
習俗の相違
イエとムラ
三 考古学からみた東と西
石器の語る東と西
縄文の地域差
弥生の東進と縄文の抵抗
古墳の拡大
四 古代の東国と西国
大和と西日本
大和と東国ー統合と自立ー
「通説」への疑問
古代東国の役割
西の海と船、東の弓と馬
東国と東北の「蝦夷」
五 「僦馬の党」と「海賊」
「海賊的武者」と西日本
「弓射騎兵型武者」と東日本
東国の製鉄
六 東の将門、西の純友
「東国の乱」
西国の海賊
「本天皇」と新皇将門・海賊純友
東国人の二つの道ー自立への志向ー
七 源氏と平氏ー東北・東国戦争と西海の制覇
「鼓を打ち、金を叩いて」
「亡弊の国」-東国の叛乱ー
東北の国家ー東北人の二つの道ー
東北・東国戦争ー東の源氏と東北の藤原氏ー
「海賊的武者」の主ー西の平氏ー
八 東国国家と西国国家
平氏と西国国家への道
西国国家の基盤ー海の道ー
海民の世界
西国国家の海洋的性格
源氏と東国自立路線
西国国家機構創出の試み
義仲と「北国政権」
東国国家の「日本国」支配
九 荘園・公領の東と西
「おやもうたれよ子もうたれよ」
荘園・公領の単位と規模
年貢ー東の絹布、西の米ー
東の畠作、西の水田
十 イエ的社会とムラ的社会
東の豪族的武士と西の中小武士
人間・社会の関係ータテの論理とヨコの論理ー
西の「職能国家」と東の「主従制的国家」
十一 系図にみる東西
女系系図の世界
男系系図の世界
東西、婚姻のかたちー結合と拒否ー
十二 東は東、西は西
東国自立への模索
東国の勝利と御成敗式目
二つの国家、二つの都
モンゴル襲来と東西関係
十三 東と西を結ぶもの
東と西の交流
海の道
陸の道と山の道
東国武士の西国移住
諸地域の対立と連合ー東国・九州と西国・東北ー
東アジアのなかで
十四 東国と九州、西国と東北
飛礫と騎馬武者
東国・尊氏・九州ー西国・後醍醐・東北
直義と尊氏・師直の対立
諸地域の出現ー中国と四国ー
山の民、海の民
日本海沿海地域と「倭寇」
東西の結びつきと対立
十五 東の文化と西の文化
東国国家と日光
元号と叙位任官
祭祀・年中行事の体系
花押の東西
「関東八州国家」と後北条氏
印判と書状の様式
東西の里制
東西、都市の形成ー渡・津・泊・市・宿ー
「職人」と地域の意識ー東の馬・西の船ー
天皇と頼朝ー「由緒」と特権ー
九州の「職人���と頼朝
西国と朝鮮半島
東国・西国戦争ー関ヶ原から「鎖国」へー
江戸時代の東と西
日本史学の二潮流
現代の東と西ー新たな日本人像を求めてー
あとがき(原本)
解説 山折哲雄
索引
*****
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日本の東西文化の違いについて記した、壮大な網野史観の本。縄文時代から江戸時代まで、それぞれの時代における東西の政治文化の特徴や傾向を史料や考古学の観点から丁寧に示していくことで、やはり東西には明確な違いがあるとしてもよいと謙虚に主張している。私のようなド素人が読んでも、1つ1つのトピックの妥当性が判断できず、「ふーん、そうなのかも」という感想しか持てなくて情けない限りなのだが、それでも知的好奇心を十分にくすぐってくれる良書だと思う。
ちなみに、本書によると西日本と東北は親和性があり、東日本と九州も親和性があるらしい。そして、この傾向は少なくとも平安時代には見受けられる。この場合の西日本と東日本の境界は、ざっくりと福井県ー岐阜県ー愛知県を結ぶラインだと思って差し支えない。
私がこれまで名古屋・福岡・川崎で合計40年生きてきた感覚として、関西地方や中国地方はどこか「本質的に違う」と感じるところがある一方、福岡にはそれなりに馴染むことができたという経験からも、本書の主張にはかなりの部分で共感できた。
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・正月に餅を食べない民俗は、雑穀や畑作をその年の幸福や豊作を象徴しており、その根底に焼畑耕作がある(坪井洋文)。
・大型の前方後円墳は、4世紀後半には会津地方まで、5世紀には仙台平野から北上川流域に広がった。
・9世紀に官牧が生まれ、その中の馬牧は上野を除く関東と駿河、遠江に、天皇に貢進する勅旨牧は甲斐、武蔵、信濃、上野に設けられた。
・中世における東国の年貢はほとんど例外なしに繊維製品だった。陸奥は当初金と馬だったが布に変わり、出羽も絹に変わった。西国諸国の年貢は米だった。
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カテゴリ:図書館企画展示
2017年度第7回図書館企画展示
「大学生に読んでほしい本」 第3弾!
本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。
青島麻子講師(日本語日本文学科)からのおすすめ図書を展示しています。
展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。
開催期間:2018年1月9日(火) ~ 2018年2月28日(水)
開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース
大学入学直後に読んだ本です。地元の友人とのみ過ごしていた高校までとは異なり、大学には様々な地方出身者が集まっており、言語・食事・風習など、種々の違いに直面しました。
皆さんも、かつての私と同じく日本人の多様性を意識しだしている時期でしょうか?
この本は、「東のイエと西のムラ」「東の弓と馬、西の海と船」「東の畠作、西の水田」…など、歴史を紐解きながら、日本列島の東と西に生きた人々の差異を説き明かしてくれます。
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東の馬、西の船、東の縦繋がりと西の横繋がり等、日本列島に住む人々の生活や考え方の大きな違い。
日本民族と一つに纏めることがいかに無理なことで、不自然なことか。
人間の生活領域の広がりを感じた。