紙の本
ダルジール警視シリーズ第11作
2001/09/26 21:17
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投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
地元のイベント、中世聖史劇の配役に住民の関心が集まっている頃、ダルジール警視の隣家で女が撃たれる事件が起きた。現場にいた男は銃の暴発だと主張したが、撃たれる直前の様子を窓から目撃したダルジールは納得できず、強引に捜査を進めていく。一方、パスコー主任警部はダルジール宛に次々と届く自殺を予告する手紙の差出人を探っていた。事故か殺人かを問う事件に、聖史劇を巡る人間模様と手紙が絡み合い、上演日に向けてすべてが混迷の度合いを深めていく。
今作でダルジールは、最新スタイルのディナージャケットを着こなし、見事なタンゴを踊るという信じ難い一面を披露してくれる。さらに、なんと聖史劇で神の役を演じることになり、ますます何者をも畏れなくなっていく。反対にパスコーの方は、前作『闇の淵』で負った傷が完全に癒えないうちに、自殺予告の手紙に自分の闇を照らされ、さらに大きな痛手を被ることになる。本作品あたりから、パスコーは傍若無人の上司に振り回されるだけでなく、自分自身の問題で深みにはまっていく。
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病んだ世界へのレクイエム
2002/04/16 06:28
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ダルジール警視宛てに定期的に送られてくる差出人不明の自殺予告手紙、市民によって演じられる聖史劇、そして建設会社社長の周辺で偶発する殺人事件、という3つの異なる要素の複雑な組み合わせによって進行する物語は、最後までそれが何処に行き着こうとしているのかまったく見極めがつかない。また、物語が終わったときも、依然としてテクストの中立性は保たれたままだ。そしてそのことこそ、作者の世界に対する誠実な姿勢あるいは批判意識を表しているといってよい。
無論、テクストがミステリの枠組みの中に位置している以上、謎は明らかになり事件は解決する。しかし事件が終わっても現実は続く。「ミステリにおいて探偵がいくら万能でも、彼が神でない以上(または神でさえも)他者を真に救済することは出来ない」という痛烈な皮肉は、本作をメタミステリとして読むことを求めているようにさえ思える。
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英国ミステリの重鎮、レジナンド・ヒルの“ダルジール&パスコー”シリーズの代表作。複数の事件が並走し回収するモジュラー型といえば、大好きな“フロスト”シリーズがあるが、こちらも負けるとも劣らない強力なキャラクター描写で読ませる。下品で強引なデカ、っていうのはある種の類型キャラなのかな?本書は、トリック・謎解き主体というより、人物を描くことに重きを置いたミステリなので、様々な人間模様を味わいながらページを繰るのが楽しい1冊。各章の冒頭に効果的に配置されたエピグラフと謎の手紙が、読後感に一級品のブレンド・スコッチのような、シングル・モルトではない混ざり合った複雑で芳醇な味わいをもたらしてくれる。
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レジナルド・ヒルの作品を読むのは初めて。ただし、パトリック・ルエル名義の「長く孤独な狙撃」「眠りネズミは死んだ」は刊行当時に読み、印象に残っている。さて、こちらはダルジール警視シリーズの第11作にあたる。たまたま自宅で目撃した隣家の銃撃シーン。事故なのか、それとも殺人なのか。一方で警視宛に自殺をほのめかす手紙がたびたび届く。二つの関連を探るダルジールら刑事たちだが・・・。とにかく長い。決して物語の流れが悪いわけではないが。これがイギリスの警察小説のテンポだと思って読むようにしましょう。ちなみに「このミス」93年度1位だそうです。
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英国流の洒落た言い回し多数。
一文一文理解するのに一苦労な上ページが厚いので、
読みおわるまで時間がかかった。
謎としては物足りなく感じたけれど、
登場人物は魅力的で、そのドラマは面白かった。
推理というよりは、刑事モノとして読んでしまった感じ。
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ダルジール警視シリーズ第9弾。
「このミステリーがすごい!」の1988年〜2008年の海外総合ランキング9位だったので読みたかったのです。
私はシリーズはできれば最初から読みたい派なのでここまで長かった・・・w
でも、全て読んだかいがありました!面白かった〜。
今回の事件の犯人は、何と事件現場をダルジールに目撃される・・・というところから始まります。
だから、ダルジールは「こいつが犯人だ!」と食って掛かる。
でも、ダルジールの猛追を犯人はのらりくらりとかわしていくのです。
あぁ、何てもどかしい・・・
そして、同時並行で自殺志願者からの手紙が届く。
何通も何通も一方的に送りつけてきて、
時には上記の事件のヒントまで書いて送ってくるのです。
送り主は誰なのか・・・?
ラストはせつないです。
私はあと一歩、考えが至らず。
目的の作品は読みましたが、続けて読みたいと思います。
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2013年1月10日読了。「このミステリーがすごい!」海外版1993年度の第1位、1988-2008年の総合でも9位の作品。ダルジール警視の隣家で拳銃で撃たれ女性が死亡する事件が発生、目撃者として容疑者の夫・スウェインを検挙しようと意気込むダルジールだが・・・。太っちょで常に下品な悪態をつきながらも自分の道を曲げない・というダルジール警視のキャラクターはデントン署のフロスト警部を思わせる、英国ではこういう警官が活躍するミステリが好まれる下地があるのかな?シリーズもののようであり、前半の捜査のグダグダ・登場人物の多さから読み進めるのに時間がかかるが、その辺が把握できた後半からは警視のジョークにも慣れ、容疑者との対決・二転三転する真相・謎の手紙の差出人(このサスペンスは正直よく分からなかったが)と盛り上がって読むことができた。劇中劇の「聖史劇」については全然分からなかった、英国人が読むとまた違った感想を持つのだろうな。
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英国ミステリのお手本ですね。
シリーズ最高に、ダルジールとパスコーの魅力が最大限発揮されている。
魅力的で書き留めておくべき台詞が満載。
犯人が愚かな小物と見せかけて、かなりの強敵。
苦境に立たされると、恐るべき対応力で解決してしまう。
翻弄され騙される我らが刑事たち。
そしてラストには大いなる勝利と思いがけない敗北…
しかし、翻訳もの、特に英国は疲れる。
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このミス海外編1993年版1位。ほとんどわかんねー。昔の海外ミステリーって日本ではイギリスのやつが中心だったのですかね。変わった刑事が主役で、小説的にはフロストをもっと難しくした感じ。1行1行面白味を詰め込んだ感じですがそれは読むほうもいちいち大変なわけで。んで、イギリスのやつって全編ユーモアにあふれてるんだけど、共通認識を待たない日本人にはいちいちめんどくさい感じがあるし、登場人物がやたら多いし、文章はいろんな意味で詰まってるし、ほとんど無理げー。もう1回読み直せば面白いかもとか思うけどしんどくて。もっと軽いの読みたい。
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途中までけっこうどうってことない事件を追いかけてる、みたいだったのに!なんだかいつの間にやら引き込まれて、、っていうやつ。
このスウェインさんの、なんだか思いのほかやるじゃねーか感が、当初の期待を裏切って、正直途中からついて行けなくなったりもしたけど、スゴイやつだ、と感心するのだった。
他のちょい役もいちいち細かに描かれてて妙に印象に残ってて、なんか作者すげーな。