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過ぎる十七の春 (講談社X文庫 White heart)
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紙の本
あのひとが、迎えにくる――
2012/02/29 14:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜李 - この投稿者のレビュー一覧を見る
隆は17歳、直樹も17歳。
菅田家の長男にかけられた呪いは、17歳になるとやってくる・・・
隆と直樹は兄弟同然に育った従兄弟どうし。
草花が茂る静かな土地に建つ直樹の家。叔母も直樹も優しく、穏やか。そんな美しく居心地の良い場所へ、春と夏の二回、隆は妹の典子を連れて直樹の家へ泊まりに来る。
ただ、この夏は違った。叔母の表情は翳り、直樹の人柄は変わっていく。
これが菅田家にかけられた、17歳の呪い――
随分と古い作品ですが、小野氏の既刊を収集したくて購入。
ティーンズ文庫なので読み口は全体的に軽めではあるけれど、情景描写が美しく、心理描写も細かい。この辺は、後の作品"屍鬼"を彷彿とさせ、さすがだと感じます。
17歳になる彼らを襲った呪いは、切なく苦しい母の心。最後の落とし所も好きです。
展開が読みやすいのと、血液型についてはライトノベルですし、突っ込まずにおきましょう。
隆が飼っているネコの三代がいい具合に読者を誘導してくれます。三代が出てくると、出る?出る?とワクワクしてきます。
ホラー具合もライトです。ところどころ和製ホラーの背筋が寒くなるような場面もありますが、怖いの苦手でも読めそうな程度。
やっぱり小野先生、好きです。
紙の本
「やめてください、お願いします。この子はわたしの子です。おかあさん」いやあ、この声が耳につくって言うか…
2004/05/20 20:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《三月、この春、十七歳を迎える直樹と典子が久しぶりに訪れた従兄弟の家。再会を喜ぶ三人だが、隆の一言が直樹に不安を抱かせる》
私がジュニア小説から遠ざかったのは、ゲームを下敷きにした本が大量に出始めてから。だから、娘から小野不由美が昔、ジュニア小説でホラーを書いていたと聞かされて、驚いた。考えれば岩井志麻子も、津原泰水だって、いや夢枕獏も菊地秀行もそうだった。そんな娘に教わって手にした本がこれだけれど、かなり面白い。
この春、十七歳を迎える直樹と典子が久しぶりに訪れた従兄弟の隆の家で再会を喜ぶ三人だが、従兄弟の一言が直樹に不安を抱かせる。夜毎自分の部屋に現れるものがいる、そう訴えて隆が狂っていく。いや人格が変貌していく。始めは冗談と相手にしなかった直樹も、部屋に引きこもり、狂態を見せるようになった従兄弟の姿に、やっと原因追求に乗り出す。
しかし、伯母の美紀子は何故か口を閉ざし、息子の変化に見て見ぬ振りをする。隆の傍若無人な言動は、ついには母である伯母を脅かし始める。居たたまれなくなった直樹と典子は、予定を繰り上げて家に帰る決心をし、隆の様子を自分の母 由岐絵に伝えるが、その母も不自然なくらい煮え切らない。そうこうしているうちに美紀子は自殺。母親の死にも動じない隆に、直樹の怒りが爆発する。夜毎、従兄弟のもとを訪れるもの。口を閉ざしたまま自殺した伯母の美紀子。そして何も語ろうとしない母の由岐絵。
小野不由美は同時期に『悪霊の家』シリーズを書いているが、この本と無関係なようだ。各章の間に「やめてください、お願いします。この子はわたしの子です。おかあさん」というフレーズが増殖しながら入ってくる。この構成が、じつにいい。濃密さではその後に書かれた『屍鬼』に及ばないけれど、ぞくっとする点もふくめ、少年少女向けのホラーとしてはレベルが高い。コワイヨ。
紙の本
復讐劇を断ち切る、理解と共感。祝福されない春、豹変の春。
2003/10/28 14:42
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■ 狭い谷間がけぶるほどの花。田圃には一面の蓮華。蒲公英(たんぽぽ)。
■ 菜の花。遠くなるほど濃さを増す紅や黄色の絨毯の合間、浮島のように
■ 白く丸いのは桜、桜、桜。家々の軒先から花を開く、木蓮、
■ 海棠(かいどう)、桃、椿。水木、山吹、雪柳。生け垣の
■ 馬酔木(あせび)、三椏(みつまた)、連翹(れんぎょう)。白に、
■ 黄色に、薄紅に、薄紫に咲き乱れる花たち。
■(——P011)
春咲きの花がいっぺんに咲きそろう里。
街の喧噪から守られた静かな桃源郷。
200年に渡り、呪われ続けた一族がいた。
男子が17歳の誕生日を迎える日を恐れる母親たち。
■ 答えはとうに出ている。自分がこれからなにをすべきなのか。
■ 隆は17。直樹は17。
■ 願いはかなわなかった。祈りは届かなかった。
■ 奇蹟は起きなかった。
■ ——運命の春がやってきたのだ。
■ (——P095)
隆と直樹。兄弟のように育った二人は従兄弟。
特別な能力は無く、ヒーローも現れず、
それでも呪いを断ち切る二人。なけなしの武器は理解と共感。
1990年初版。1995年大加筆により再版。
大切に読み継がれた、「母達の思いと血の呪い」に触れた一冊。
紙の本
血液
2003/10/27 12:24
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かまいたち - この投稿者のレビュー一覧を見る
逆らうことのできない呪われた血。血液型で判断される性格占いでさえ信じない私が一瞬、恐怖にくらっとする。でも、大丈夫。小説の定石。読後の後味はさわやか。安心して読めるライトホラー。