「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
名画に隠された罠
2001/02/24 21:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちゃうちゃう - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術館学芸員クリス.ノーグレンの、名画ミステリー第三作目である。舞台はフランス。相変わらず、豪華な料理(しかも今回は山ほど沢山形容詞がつくフランス料理である)の緻密な描写には、読んでいてちょっと贅沢なディナーを過ごした気分になれる。
そして、今回の絵画は「レンブラント」と「フェルナン.レジェ」(私はレジェの名前をこの作品で初めて知ったが、20世紀初頭のキュービズム画家らしい。そのきびきびとした色彩は、要チェックである)。
ことの始まりは、フランスのある画商から、なんと未発見の「レンブラント」を寄贈したいと言ってきたことだ。しかし、それには条件があった。「真作」か「贋作」を見極めるのに一切、科学手法を使ってはいけない。しかも、「真作」と認めた場合は5年間、その美術館に展示しておかなければならないのだ。これこそ、まさに「見極める目」の勝負。もし、万一「贋作」を「真作」とみなしてしまった場合は、その「恥」を5年も人目にさらさなければならない。
「レンブラント」専門家代表のクリスと「レジェ」評論家の二人が下す判断は、一体どっちなのか?その画商がなにを企んでいるか、わからないまま話は進む。そして、起こった殺人事件。
果たしてX線チェックなしで、一体どういう方法で「真作」「贋作」を判断するのか、非常に興味深いが、今回のこの作品には、もうひとつ、読者が「あっ」と驚くしかけが隠してある。その「しかけ」とはなにか?重厚な「レンブラント」は本物なのか?読んでいるこちらの芸術感覚が、研ぎ澄まされてくるような錯覚さえしてくる贅沢なミステリー。是非読んでみて欲しい。
そうそう、このシリーズの中で、一番気に入っている作品ではあるが、同時に絵画の影に隠された人の内面の悲しさが、切なく感じられた作品であることは付け加えておこう。
紙の本
学芸員も楽じゃない!
2002/07/08 08:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの通り、絵画にまつわる殺人事件である。米国ワシントン州のシアトル美術館学芸員、お馴染みのクリス・ノーグレンが活躍するエルキンスのシリーズもの3つ目の作品である。シアトルやポートランドが舞台となる小説は最近増えているように感じるのだが、北西部が米国人の興味を引くのであろうか。あるいは、シアトル・マリナーズの日本人選手の影響なのだろうか。まあ、野球は関係ないかも知れないが、われわれ日本人にとって、今まであまり縁のなかった米国北西部が身近になったことは間違いない。
フランスの著名な画商が、何とレンブラントをシアトル美術館に寄贈するという話から始まる。絵画には素人の私からすれば、喜んですぐにでももらっておけばいいのにと思うのだが、この業界ではそうはいかないらしい。なぜならその画商は奇怪な条件を付けているからだ。絵画の鑑定には科学的な手法が取り入れられているが、それは全て禁止。さらに、5年間はレンブラントとして美術館に展示しておかなければならないという。誰がどう見ても怪しいと思うだろう。どんな罠が隠されているのか分からない。
このシリーズでは、物語を通して学芸員の仕事ぶりが描かれているが、学芸員といえども雇われの身であるし、人間関係も美術館という組織で働くからには一般の勤め人と変わるところがない。むしろ商売相手が一騎当千の画商であるところは、勤め人の枠を超えているのかも知れない。
物語の構成はあまり上等とはいえないが、バブル景気以来美術品に対する関心が高まっている昨今、楽しめる作品である。今回もかの画商が殺されるという事件が発生するのだが、知られざる有名画家の作品の発掘、その盗難、贋作画家など、ミステリーを盛り上げるモチーフはいくらでもあるので、無理に殺人事件と絡める必要はないのではないか。
ここ数年このノーグレンのシリーズの新作が発表されていないが、せっかく作り上げたキャラクターなので、ぜひ続けてもらいたいものである。