紙の本
利根川氏がノーベル賞を獲得する経緯を分かりやすく解説
2006/01/11 21:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アラン - この投稿者のレビュー一覧を見る
一言感想を言うと、「無茶苦茶おもしろい本」である。
利根川氏が大学を卒業し、渡米(のちにスイスに渡る)し大学・研究所を渡り歩いて研究を進めつつ、ノーベル生理学医学賞を受賞することになる「抗体の多様性生成の遺伝学的原理の解明」を成し遂げ、その後脳にも関心を広げていく経緯が記されている。本書は立花氏が利根川氏にインタビューしたものをまとめたものであり、対談形式になっているが、読者のため随所に立花氏による解説が付されている。高校生物の知識があれば理解可能なレベルになっているとのことだが、実際高校生物レベルの私でも理解できた。ワトソン・クリックの二重らせんから利根川氏の発見、さらなる研究の内容について分かりやすく書かれている。また多くの学者は大発見をできずに終わること、当然だが競争が熾烈であること、有名研究所には最新情報が集まり、そこに属すると大変有利であること、日本の大学は研究に向かないことなども語られ、大変興味深い。一気に最後まで読み通してしまった。
本書は88年〜90年に文藝春秋で連載されていたのをまとめたものであり、日進月歩(秒進分歩か?)の科学の知識を得るには本来古すぎるのかもしれないが、科学研究の状況を臨場感もって伝えていると思われ、好著であると思う。
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利根川進サクセスストーリー
2003/08/23 05:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ころり - この投稿者のレビュー一覧を見る
書物の題名と中身のギャップは時折体験するものの、本書ほどそのナイアガラ瀑布の落差ほどの違いは御目にかかれるものではない。本書は日本でただ一人、ノーベル医学生理学賞を受賞した、MITと理研の架け橋、利根川進博士のサクセスストーリーである。間違ってもこの本に哲学的な思索の種をお探しにならないように。それは詮無きことと思います。本書からは生命科学研究の先端に立つ男を支える強烈な自負とそれを裏打ちする努力と行動力を学ぶことができると思います。利根川先生の勝者のご意見をありがたく拝聴して、立花さんの解説をあっさり読み飛ばすのが本書の楽しみ方である、と申し上げてしまいましょう。
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利根川進は誰かが実験してると勝手に装置を持っていって使い始めるらしい。注意すると「俺の実験のほうが重要だ!」と怒るらしい。
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あの利根川博士と立花隆氏との対談集。利根川博士が「抗体産生多様性の謎」を解明していく経緯について詳細に語られていた。偉大な研究成果を大変な努力で以ってなし得たのだということがよくわかった。また対談の中で、利根川博士の「科学研究者のあるべき姿」について語る場面が多々みられた。その中で特に、1)ホントにはじめが大切、2)ネイチャーはロジカルでない、3)世界的な研究の中心にわが身をおくこと、4)いかにして自分をコンヴィンスさせるか、は印象深く心に残っている。本書の要所に立花氏の詳細な解説があり、註・図表も豊富にあった。このため、自分のような分子生物学の初学者にとっても非常にわかりやすい内容になっていた。
一番興味深かったのは、最後に語られていた「自我はDNAの自己表現」の一節であった。「精神現象に物質レベルの基盤があるかどうか」を分子生物学がどこまで言及できるのか・・・
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俺がちゃんと読んだ始めての本。
生命科学ってもんもなんも知らん時期に読んだけど、なんとなく分かったよぁ。
立花さんを注目するきっかけになった本!!
でもって、タイトルがいい!!
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抗原抗体反応の理論解明でノーベル賞を受賞した科学者、利根川進氏と、ジャーナリストとして高名な立花隆氏の対談を収録したもの。文系の人でも読めます。秀逸。
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精神現象も含めて、あらゆる生命現象が根本的には物質的基盤の上に立っている、そして物質的生命現象というのは基本的にはDNAに記された設計図通り動いていくのだということになると、精神現象も決定論的現象だということになる。個々の人間の性格や知能、これらを基盤にした行動の大きなわくはその人が持って生まれた遺伝子群でかなり決まっている。それぞれが遭遇する環境が、その範囲内で影響を与えることはできる。本当に生きているといえるのはDNAなんであって、人間とか動物とか、生きている生命の主体と考えられているものは、実はDNAなんであって、人間とか動物とか、生きている生命の主体と考えられているものは、実はDNAがそのとき身を仮託しているものというか、身にまとっている衣みたいなものである。地球の歴史の上で、あるとき物質が化学進化を起こして、DNAというものができた。それがずっと自己複製しながら、進化をつづけてここまでやってきた。それが我々だ。我々の自我というものが、実はDNAのマニフェステーション(自己表現)にすぎないんだと考えることも出来る。脳科学は将来、人文学に大きな影響を与える。
これらの会話内容が人文学系の人間であった立花にサイエンスライターとしての活動をはじめさせたのかも。
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利根川氏のアメリカやスイスでの体験談は単純に面白く興味深いものだった。しかし,それ以外の部分は満足ではない。私見だけど,この御二人方とも,ちょっと「毒舌が過ぎる」気がいたします。生物学の専門知識のない人なら騙されちゃいそうな「怪しげな」ことまで言及しているのにはどうかと感じた
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面白い一方で、科学万能主義的なはしゃぎ方にややひっかかるものを感じる。
人間の精神活動も物質の化学反応の結果として解明できたとして、それが「人間にとって」どういう意味を持つのか、という発想がない。
人間の心を特別なものと考えないのはいいとして、筆者たちは自分の意思=心は特別視しているのだね。でも、自分は特別なのは他の人間とて同じこと。
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立花隆とノーベル生理学医学賞の利根川進との対談本。科学の実験では、失敗の連続にも拘わらず、それでも諦めずに続けるという精神力が必要との事。科学者という人種の持つエネルギーは図りしれないと感じる。2007/10/06
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iPS細胞ブームから買った本。
利根川進と立花隆の対談本。ノーベル賞を取った後、一般に分子生物の理解は深めたいけど全部取材を受けていたら研究ができないって事情から一度、とことんまで一般向けに話してそれで終わりにしようってことで立花さんに白羽の矢がたったみたい。NICEな人選だと思う。
対談と書いてあるけど会話を採録した情報量の薄い対談じゃなくて合間合間にかなり高度な専門知識の解説なんかがはさまっている。利根川さんがノーベル賞を取った研究内容をなんとなくじゃなくちゃんと理解しようっていう執念(?)が感じられる。
そのため、一般向け(しかも文庫)としてはかなり難解だけどすっごい面白い
本の中ではゲノムの解析はまだまだ時間がかかる(1993年発行)って書かれている。この世界はほんと日進月歩なんだなぁと思った。
難解だけど科学はどうして進んでいくかに興味がある人は読んでみるべし。
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2001年に、この本と出逢わなかったら、今の自分はない。それくらい大きな存在である。
書いてある内容そのものよりも、その背景にある信念が当時の自分にインパクトがあった。
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私がことさら自然科学分野に魅せられるのは、真実は一つしかない、ということです。この本は利根川博士がノーベル生理医学賞受賞のきっかけとなった抗体産生の多様性に関する謎解きが延々と立花氏との対談で繰り広げられるところが一番おもしろいです。下手な小説を読むよりスリリングであり、世紀の大発見には 運も必要だということ。何より、何気ない現象をするどく観察し、追求する科学者の姿が描かれていて読んでいて非常に興奮する書です。それと利根川さんの科学者としての真摯な態度。絶対に正しいんだ、と思えるまでデータを取るというところとか。なんにもましてびっくりしたのは高校時代は常識だったことが十数年後には、もはや常識ではない、ということ。私が生物を習った当時とは事情が大幅に異なり、この書を読むまで恥ずかしながら、利根川博士の受賞の理由がわからなかったのですが、ようやく納得しました。それからインタビュアーの立花氏はこういう難解な現象を一般人に理解しやすい形にまとめる名手ですね。
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分子生物学を学ぶ上で非常に役立つ情報が多かった。分子生物学の発展の歴史、研究者としての心構え、実験の原理なども一般向けに簡単に書かれていて良かった。何気なく僕が利用している技術が多くの人の知恵によりもたらされたものであるということには、ただ頭を下げるのみである。
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立花隆さんの本は
過去の著作でも
普遍的な内容を問うものが
多いので
時代に関係なく読めるのが
すばらしいと思う。
分子生物学とは云え
専門的な内容を問うよりも
ノーベル賞を取るような研究に行きつくまでの
ことが書かれているので
生物学の歴史や
免疫学との関わりのなかで
いまの分子生物学にたどり着く過程が
垣間見られて
とても面白かった。
でも一番面白かったのは
最後に差し掛かった時に
立花隆さんが利根川氏に
投げかけた質問だった。
それはまた「精神と物質」の
タイトルの意味を理解した瞬間だった。
最後は見事に物別れに終わってしまったのだけど
深く考えさせられる読後感だった。