「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:12,375円(112pt)
- 発送可能日:購入できません
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
収録作品一覧
犬神博士 | 7-350 | |
---|---|---|
超人鬚野博士 | 351-456 |
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
社会風刺と読むか、民俗学の資料として読むか、そんな固苦しいことは抜きにして楽しめる。
2007/09/22 11:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫化された夢野久作全集のひとつであるが、この中には「犬神博士」「超人鬚野博士」が収められている。
全集の中の一冊としてこの第5巻を読んでみたいと思ったのは、この「犬神博士」のなかに玄洋社の頭山満が筑豊で繰り広げた炭鉱の争奪戦の様子が出ているとのことからだった。
夢野久作の父は政界を牛耳っていた杉山茂丸であるが、その杉山茂丸と盟友関係にあったのが頭山満である。その頭山満を楢山到という名前に変えてはいるが、玄洋社という実在の団体名を作品の中に出しているので、誰もが楢山を頭山ということはわかる。
ところが、この「犬神博士」を読み始めると、どこにも玄洋社のことも、頭山満のことも出てこない。出てこないどころか、旅回りの親子の物語が展開するばかりだったが、これがおもしろく、おかしく、玄洋社も頭山満もすっかり忘れて読み進んでいった。
ようよう、最終章になって炭鉱の権益の争奪戦を繰り広げるところで千両役者の登場となるが、その登場の仕方がヌーボーとしていておかしい。
が、肝心要のこの作品の「落ち」の段落では火事が起きてお開きとなった。
巻末に夢野久作研究者の西原和海氏の解説が出ており、ここを読んで尻切れトンボの結末の裏事情が分ることになるが、願わくば「博多仁輪加」の如き決めがこの作品には欲しかった。
ともに収められている「超人鬚野博士」を読み始めると、「犬神博士」の続きを読んでいるかの如き錯覚に陥る。「犬神博士」の主人公であるチイが大きくなって、見世物一座の座員となったのではと。
両作品とも題名に「博士」という文字が付いているが、題名のみならず作品自体が兄弟作となっている。
ちなみに、犬神博士の本名である大神二瓶は幕末に倒幕軍を率いた「勇敢仁平」こと博多の侠客、大野仁平から借用したものだろう。
さらに、楢山到は大久保利通暗殺後に頭山満とともに土佐の板垣退助を訪れた奈良原到(至)から付けたのではないだろうか。夢野久作の作品『近世怪人伝』にも登場する奈良原到(至)翁と夢野久作は東京から博多まで三等列車の旅をともにしたことが綴られているが、その奇人ぶりは久作の興味を大いにくすぐったようである。
ともあれ、奇想天外なストーリーの展開を楽しめる作品であるのは間違いない。