紙の本
首に胸キュン
2010/09/30 23:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる桂子さんシリーズの一冊なのだけど、もう一族存亡の大サーガ的展開に諸作品はなってしまっていて、パーツをつなぎ合わせるとようやく全体像を俯瞰できるようになっている。今回は、桂子さんの事実上の夫で、20世紀末に首相を務め、その後あっさり引退して20年になるが、隠然たる影響力を保っている入江氏の面前で切腹したという少年の首が、孫娘にあたる舞のところに極秘裏に持ち込まれる。その介錯された首だけが、最先端医療の力でまだ生命を保っていたからだ。
この入江氏の閨族の関係、動向は、この本を読んでもしかと理解できないのだが、もっともそうした流れは本筋ではないのだろう。「よもつひらさか往還記」の主人公、ネットカリスマの慧くんも相変わらずの様子でちらっと登場する。政界の背景も、テロリストを生む土壌も、カリスマを待望する社会も、桂子さんや舞さんにはまるでオモチャのよう。世界のすべてが、彼女らとその愛する芸術たちの存在意義を確認し、高めるための背景の書き割りのようだ。もちろん政治家になったりカリスマになったりするのは、世界への貢献が目的にあるのに違いは無いだろうが、そういう意識は露とも現されないのがゆかしいところ。そして舞さんにとっても、首を預かることが、世界に繋がる接点としての初(?)体験ということになる。
首はちゃんと意識があって、最初は視線だけで意思表示ができるだけだが、舞さんは音楽を聴かせたり、読書をさせたり、いろいろ刺激したりして楽しむのだが、舌でキーボード入力できる「ワープロ」が開発されて持ち込まれ(本作は1987年の作品)、さらなる意思疎通が可能になる。舞さんは束の間、美少年の女教師役である。それから、首が生きているという噂も流れて、マスコミに嗅ぎ回られるなんて体験までしてしまう。三島由紀夫のことを調べて比較したりしてしまう。
首は舞さんの手中にあって、死から現世に復帰し、そして新しい環境への順応の道を進む。それは王侯貴族が道化師を召し抱えるよりも刺激の強い楽しみだ。婚約者の佐伯さんが首を舞さんのところによこしたのは、その純情さを喰らって舞さんが変容して行くことを目論んでいたのだろうか。少なくとも首の方は、舞さんに生死もコミュニケーションもすべて握られたままで、精神を貪られていく歓びと反発がないまぜになっていき、舞さんはそれに応じてとことん弄くり回す。それもこれも青春の濫費であり、少年が突入した楼閣のように、現代の王朝文学として聳え立っている。
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雑誌の紹介で読んだのですが読後怒涛のように倉橋さんのを読み漁った思い出が。ハードは旧仮名遣いで雰囲気が良かったのに文庫だと現代仮名遣いになってしまっているのが残念。
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読んだあと不思議な感覚。美しい文章と、リアルに想像するととても残酷なのにどこか惹かれるお話が好きです。
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裏庭に頭が落ちてました…ではじまる不思議譚。
倉橋さんのお話はなんだかふわふわとしていて
読んでいて気持ちいいので好きです。
ポポイは短くてあっという間に読み終わるので
興味ある方は試しにどうぞ。
桂子さんシリーズです。
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時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった…。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。
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全くもって理解不能なストーリー。。。
でも“ポポイ”って響きは何か好き☆彡
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20世紀最後の宰相の孫娘、栗栖舞が生首を預かった。
首はまだ生きていて大変な美少年である。
彼女はその首に、悲嘆をあらわすギリシア語の感嘆詞「ポポイ」と名付けた。
ひとときのおもちゃ代わりに時にペットを扱うように、時に女としてポポイと交流する。
著者らしく全体的にノーブル感が漂い、生首のグロテスクさは感じさせない。
『何事にもニュートラルで「非真面目」』な主人公は、静かな水の流れのようだ。
しかし、その淡々さがポポイの戒名「タナトス」と絡みあって徐々に不気味さに襲われる。
カバーがNO IMAGEなのが残念。
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倉橋由美子の「桂子さん」シリーズもの。三島由紀夫の自決を思わせる、非常に知的かつ幻想的な倉橋ワールドを堪能できる一冊です。生命体や思考といった複雑なテーマを扱いつつ、ラジオドラマとして書かれたということもあってか読みやすくお勧め。
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頭部だけの青年(?)と少女(大学生?)のお話。
不思議とエロティックである。
倉橋さんの作品にしては、短く読みやすい部類だと思う。
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(1999.01.16読了)(1998.12.21購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
時は21世紀、なお権勢を誇る元首相の邸宅に一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった…。流麗な筆で描き出す、優雅で不気味な倉橋ワールド。
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母から薦められて読む。
おもしろかったです。美少年の首を飼うなんて幻想の極み。SFのにおいもさせつつあまりある幻想感が好きです。
ちょっと前に読んだんですがいいなぁ、またもう一度読み直したい。
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【あらすじ】時は21世紀、なお権勢を誇る元元首の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。
首だけで生きているテロリストの青年の首を預けられた舞が、生まれた時からハイソな暮らししかしてこなかった女子の自分の世界目線で周囲を見る、と言うのが裕福が故の大らかさで逆に偏見がある様でない、と言う、あくまでも自分の興味中心なとことか。高い教養とか当たり前に自分にあるモノで、それを鼻にかけてもいないが隠してもいないとこがいい。でもまあ、個人的には舞が男子であった方がもっと面白かったろうな、とは思う(笑)。ポポイの切腹を介錯してから自害した青年との関係がホモセクシャル的と噂されてる真相が出ると、実は…な気がしていたが、結局何故青年がテロ行為を行ったのかは明かされずに終わってしまったが、とても不思議な感触で読み終えた。
ポポイが何故元首相宅へ乗り込み、声明を述べてから切腹・介錯されたのか…美形なのに印象の残らない大人しい少年時代を送った裕福じゃない家で育った少年が、何故テロリストまがいの行動を起こしたのか、全く謎は解明されないんだけど、解明されない、と言う下りも文中にあるが、関連作はないのか…昨日、色々ぐぐってて首だけの犬を…と言う実験映像(真相はやぶの中だが)見ただけに、テロ行為をして自害して、切って落ちた首に装置を繋いだら頭だけで生きてたからやってみた、ではやっぱやるせない。舞の下した判断は慈悲や人間の非道な行いに対する憤怒などではなく、ポポイが老化し始め美しくなくなっていくからだろうしなぁ。
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もともとサロメとか、ユディットとか、女子による首取り物語?が好きなこともあり、大変好みで興奮。ポポイ可愛い!しかも元テロリストで切腹後、介錯された首なんて最高!舞さんが羨ましい。
三島の事件を想起するが、当然、小説内でもその事に触れている。
三島の小説を「文章のヴィルトゥオーゾ」だと絶賛する舞さんの友人であり、桂子さんの孫娘の名は聡子。春の雪のヒロインの名と同じなのもくすぐられる。
さて、こちらでの桂子さんは、桂子お祖母様と呼ばれ、元総理大臣の愛人という立場になっていた!
舞さんがポポイのために飾る絵はクラナッハの「ユディット」!悪趣味だな〜。
それから、二人?の接吻シーンにドキドキ。生きている生首って素晴らしい。だって、普通なら切り離されてしまった顔は目尻や口角がだら〜んと下がってしまうはず。
サロメはそういうの気にならなかったのかな
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桂子さんシリーズ.
多分,時代としては「シュンポシオン」の前,「交歓」のあと.
桂子さんのパートナー元首相の入江さんの孫娘,舞と青年テロリストの生ける生首の交流を描く.乾いた書き方でおどろおどろしさはない.首のポポイくんは舌で操作するワープロで舞と話す.ここの部分,首はカタカナで,舞は通常のひらがなの文で会話が進む.単行本出版当時は旧仮名だったらしいから,ここは谷崎の「鍵」のような効果を狙ったのだろう.
書かれた時点では近未来小説的なところもあったのだろうが,現代でもまったく違和感なく読めるし,十分楽しめる.
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桂子さんシリーズ。再読。
入江晃さんがテロリストに会い、何かを話した。テロリストは自決し、入江さんは脳梗塞に。で、そのテロリストの首を婚約者から預かったのが、孫の来栖舞さん。首は装置につながれて生きている。首にポポイという名をつける。
桂子さんは健在。聡子さんは明さんと結婚している。舞さんの恋人は従弟の翠くん。天才らしい。
あいかわらずの倉橋ワールド。桂子さんシリーズもっと書いてほしかったなぁ・